来店型の保険ショップで、あるいは顧客の自宅を訪ねて、申込書と運転免許証を預かり、券面と顔を見比べて契約を進める。保険代理店が日常的に行ってきたこの本人確認が、2027年4月1日に変わります。犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法、以下「犯収法」)の施行規則の改正で、対面の取引時確認は、写真付きの本人確認書類を見せてもらうだけでなく、ICチップに記録された氏名・住居・生年月日・写真を装置で読み取って画面に表示し、券面と照らし合わせる方法が原則になるためです。
保険の取引時確認には、ほかの業種にない前提があります。マネー・ローンダリングやテロ資金供与の防止を目的とするこの法律で義務を負う特定事業者は保険会社等で、代理店や募集人はその委託を受けて確認の事務を担うこと、対象になる保険契約が商品の性質で分かれることです。本記事では、条文と警察庁の公式のQ&A、生命保険協会・日本損害保険協会がホームページで公開している案内をもとに、対象の保険契約、2027年4月1日からの対面の確認方法、来店型ショップと訪問募集の準備を整理します(2026年11月時点)。
結論:2027年4月1日から、代理店の対面の確認もICチップの読み取りが原則になる
- 犯収法の特定事業者は保険会社・外国保険会社等・少額短期保険業者です(法第2条第2項)。法第4条に基づき取引時確認を行う義務と、確認記録を7年間保存する義務は保険会社等が負い、代理店・募集人は保険業法上、保険会社の委託を受けて保険契約の締結の代理・媒介を行う立場で、確認の事務を担います[e-Gov法令検索][e-Gov法令検索]。
- 取引時確認の対象は、年金・満期保険金・満期返戻金・解約返戻金の定めがある貯蓄性の保険契約への加入(締結)、その支払い、契約者の変更、契約者貸付、現金等で200万円を超える受払いなどです。満期保険金等の定めがない掛け捨ての契約は、簡素な顧客管理が許容される取引として対象から外れます(施行令第7条第1項第1号、施行規則第4条)[e-Gov法令検索][e-Gov法令検索]。
- 2027年4月1日からは、対面で運転免許証・マイナンバーカード・在留カード・旅券(パスポート)など写真付き・ICチップ付きの本人確認書類を使う場合、提示を受けるとともにICチップの氏名・住居・生年月日・写真を読み取り装置で読み取って映像面に表示させる方法になります(新規則第6条第1項第1号イ)。読み取った情報は券面と照合する必要があります(警察庁Q&A No.12)[警察庁][警察庁]。
- 来店型ショップでは読み取り端末をカウンターに置き、訪問募集では担当者が端末を持参します。顧客が用意した端末は認めない扱いができ、装置の故障時は合理的な期間内に読み取れば確認を完了できます(No.14・15・18)。確認記録の記録事項は従来どおりで、読み取ったICチップのデータを送信・保存する義務はありません(No.39・41)。
保険で取引時確認が必要になる場面:どの保険契約が対象か
取引時確認とは、特定事業者が特定取引を行う際に、顧客の本人特定事項(個人は氏名・住居・生年月日、法人は名称と本店所在地)、取引を行う目的、職業(法人は事業の内容)、法人の実質的支配者を確認することです(法第4条第1項)[e-Gov法令検索]。取引時確認と本人確認の言葉の違いは取引時確認と本人確認の違いで解説しています。
保険会社等が行う特定取引は、施行令第7条第1項第1号に列挙されています。保険代理店の業務に関係する主な取引を、条文の号と場面で整理します。金額の基準があるのは現金等の受払いです[e-Gov法令検索]。
| 施行令第7条第1項第1号 | 代理店での場面 |
|---|---|
| ホ 保険業を行う者が保険者となる保険契約の締結 | 新規契約の申込み(貯蓄性のある契約) |
| ト 保険契約に基づく年金(生存を事由とするもの)・満期保険金・満期返戻金・解約返戻金の支払 | 満期・解約・年金の請求手続き |
| チ 保険契約の契約者の変更 | 契約者変更の手続き |
| カ 金銭の貸付けを内容とする契約の締結 | 契約者貸付 |
| ケ 現金・持参人払式小切手等による200万円を超える受払い | 保険料や保険金を現金等で200万円超やり取りするとき |
ただし、施行令第7条第1項の柱書は「簡素な顧客管理を行うことが許容される取引」を対象から除いており、その内容を定める施行規則第4条第1項第2号・第3号が保険契約を商品の性質で分けています。具体的には、年金・満期保険金・満期返戻金を支払う旨の定めがない契約(いわゆる掛け捨て)は対象から外れますが、期間の限定がなく死亡を事由に支払われる一時払いの契約(一時払い終身保険)は除外されません。満期保険金等の定めがあっても、払い込む保険料の総額の80%が満期保険金等の合計を超える契約(変額保険など一部を除く)、団体扱い保険、適格退職年金契約なども、簡素な顧客管理が許容される取引です。これらに当たるかどうかは、保障内容と保険料の設計で決まります[e-Gov法令検索]。
協会の案内も同じ区分です。生命保険協会は、生命保険契約の締結、契約者貸付、契約者変更、満期保険金・年金・解約返戻金の支払、現金等で200万円を超える取引、同種の取引と著しく異なる態様で行われる取引などで取引時確認を行うと説明し、対象外の取引・商品もあるとしています[生命保険協会]。日本損害保険協会は、積立保険の契約締結、満期返戻金・解約返戻金等の受取り、契約者の変更、現金・線引きのない小切手による200万円超の取引を挙げています[日本損害保険協会]。自動車保険や火災保険の多くは満期返戻金のない契約で対象に入りませんが、同じ代理店が扱う契約内容が積立型のものや契約者変更は対象です。死亡保険金や入院給付金など給付の支払いは施行令トに列挙されておらず、現金等で200万円を超える場合を除き、各社が自主的に行う確認として位置づけられています。
既に取引時確認を終え、確認記録を保存している顧客との取引は、保険証券や登録済みの口座の情報、顧客しか知り得ない事項の申告などで過去の記録と同一人であることを確かめていれば、再度の確認は不要です(法第4条第3項)。なりすましや虚偽申告の疑いがある取引、犯罪収益移転の危険性が高い国・地域に関わる取引、外国の重要な公的地位にある者との取引は厳格な方法での確認が必要で、一定額を超える財産の移転を伴う場合は資産と収入の状況も確認します(第4条第2項)。法人契約では、名称と本店所在地、事業の内容、実質的支配者に加えて、手続きに来た代表者等(取引担当者)の本人特定事項も確認します(第4条第4項)。代表権のない役員や担当者が手続きする場合も同様です。
保険代理店の位置づけ:取引時確認の主体は保険会社、代理店は委託を受けて確認を担う
保険の販売(募集)を行う代理店について、保険業法は、生命保険募集人を「生命保険会社の委託を受けた者(またはその再委託を受けた者)で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行うもの」、損害保険代理店を「損害保険会社の委託を受け、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者」と定義し、登録を受けた資格のある募集人以外は保険募集を行えません(第2条第19項・第21項、第275条)[e-Gov法令検索]。一方、犯収法の特定事業者として取引時確認の義務を負うのは保険会社等であり、代理店が独立の特定事業者として列挙されているわけではありません(法第2条第2項)。警察庁の概要資料の特定事業者一覧でも、保険会社・外国保険会社等・少額短期保険業者が載っており、所管の機関は金融庁です[警察庁]。
したがって代理店の実務は、所属保険会社が定める取引時確認の方法と様式に従って、申込みの際に本人確認書類の提示を受け、本人特定事項・取引目的・職業を確認し、その結果を保険会社に報告する流れになります。保険会社の多くはマネー・ローンダリング等の防止に関する基本方針を公表しており、代理店はその方針とコンプライアンスの体制のもとで確認を行います。日本損害保険協会の案内でも、職業や取引目的は「代理店等が確認します」と書かれ、取り扱いが保険会社によって異なる場合は代理店等が窓口になるとされています[日本損害保険協会]。警察庁のQ&Aは、営業代理店の営業担当者が顧客を訪問して提示を受け、ICチップの情報を本社に送る運用について、提示を受ける者と確認する者が同一である必要はなく、合理的な期間内に確認して券面と照合すればよいと回答しています(No.19)[警察庁]。募集人が読み取り、保険会社が確認を完了する分業は、制度上も想定されています。
代理店が押さえておきたいのは、確認記録に「取引時確認を行った者の氏名その他の当該者を特定するに足りる事項」が記録される点です(施行規則第20条第1項第1号)[e-Gov法令検索]。募集人が行った確認は、個人名または募集人コードで保険会社の確認記録に残り、外部の委託先が行った確認であっても記録の責任は保険会社等にあります。顧客や代表者等が取引時確認に係る事項を偽ることは法第4条第6項で禁じられており、正しい申告をお願いする役割も現場にあります。乗合代理店では保険会社ごとに様式や読み取りの方法が違うことがあるため、各社の案内を一覧にして自店の手順書に落とし込む作業が必要です。
2027年4月1日から対面の取引時確認はこう変わる
犯収法施行規則は、2025年6月24日公布の改正(令和7年第3号)で非対面の確認方法を見直し、2026年3月6日公布の改正(令和8年第1号)で対面の確認方法を見直しました。施行はどちらも2027年4月1日です[警察庁]。改正後の第6条第1項第1号イは、自然人の顧客から「特定半導体集積回路付き本人確認書類」の提示を受けるとともに、組み込まれたICチップに記録された氏名・住居・生年月日・写真の情報を読み取り装置で読み取って映像面に表示させる方法を定めています。各種の本人確認書類のうち該当するのは、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券等のカード型・冊子型の公的な証明書です(Q&A No.5)[警察庁]。
警察庁は、ICチップ情報を読み取ることにした趣旨を「読み取ったICチップ情報と券面情報とを照らし合わせることで本人確認書類の偽変造等によるなりすましを防ぐ」ことだとし、読み取った情報と券面の照合を行う必要があると回答しています(No.12)。目視だけでは精巧な偽造書類を見抜けないリスクがあり、本人であることを証明する書類が本物かどうかの照合は、代理店の現場で行う偽造書類への対策として最も重要な手順です。
| 書類 | 読み取りに必要な入力 | 2027年4月以降に読み取る項目 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 運転免許証(従来型) | 暗証番号1と暗証番号2の2組 | 氏名・住居・生年月日・写真 | 写真まで読むには2組が必要(警察庁チラシ) |
| マイナンバーカード | 券面事項入力補助用の暗証番号4桁、または券面の14桁(生年月日・有効期限・セキュリティコード) | 氏名・住居・生年月日・写真 | 4桁では4情報、写真まで読むには14桁の方式 |
| 在留カード・特別永住者証明書 | 券面の12桁の番号 | 氏名・住居・生年月日・写真 | 氏名は画像として記録 |
| 旅券 | 券面の機械読取領域 | 氏名・生年月日・写真 | 住居は現在の住居が記載された他の本人確認書類か補完書類で確認(第6条第2項、No.9) |
| 写真付きでICチップのない書類(身体障害者手帳、運転経歴証明書など) | - | - | 提示に加えて、取引関係文書を転送不要郵便等で住居へ送付(ロ(1)、No.6) |
| 写真のないICチップ付きの書類(1歳未満のマイナンバーカードなど) | 書類ごとの方法 | 氏名・住居・生年月日 | 読み取りに加えて転送不要郵便等の送付(ロ(2)、No.7) |
運転免許証の読み取りには2つの暗証番号の入力が必要で、警察庁のチラシも「設定した暗証番号を覚えておきましょう」と利用者に呼びかけています[警察庁]。有効期限内の書類であることの確認は、改正前と変わらず行われます。暗証番号を忘れた顧客への案内は本人確認で暗証番号が分からないときの対応、書類ごとの方式の違いは本人確認書類4種類のICチップ読み取り方式の違いを参照してください。
住所変更でICチップが旧住所のままの運転免許証や在留カードは、券面の新住所を確認し、ICの旧住所と券面の旧住所が一致することを確かめれば足ります(No.13)。旅券のように住居の記載がない書類では、住民票の写しや印鑑登録証明書など現在の住居が記載された他の本人確認書類、または公共料金の領収証書などの補完書類の提示か送付を受けて住居を確認します(第6条第2項、No.9)。写真のない資格確認書や年金手帳は、単独ではこの読み取りの方法に使えません(No.34)。署名用電子証明書の確認までは不要です(No.11)。写真と本人の顔を見比べる照合については対面の本人確認に顔認証・容貌の撮影は必要かで解説しています。
施行前の先行実施も可能で、改正前にICチップの読み取りで確認して記録を残していれば、施行後は済み確認として扱えます(No.1)。チラシも先行実施があり得ると案内しており、先行して始めれば施行日に手順を切り替える負担を分散できるメリットがあります[警察庁]。どの本人確認書類に対応するかは特定事業者に委ねられているため(No.4)、所属保険会社がどの書類と方式を採用するかが代理店の手順書の起点です。改正は保険に限らず、銀行など金融の他の業態にも同じ程度の影響が及びます。改正の背景と特定事業者共通の準備は犯収法改正で2027年4月から対面の本人確認はどう変わる?にまとめています。
来店型ショップでの準備:端末・手順・読めないときの代替
来店型ショップは、顧客が本人確認書類を持って来店するため、カウンターに読み取り端末を置く運用が基本です。警察庁は、不正なソフトウェアを使ったなりすましを防ぐため、特定事業者が準備した端末(専用の読み取り装置やスマートフォン)で読み取るよう求め、顧客が用意した装置を認めない取扱いも許容しています(No.14・15)。読み取りに使用するアプリは官公庁の提供するものに限られず、照合という趣旨に照らして必要な要素を満たす民間のアプリも使えます(No.20〜22)[警察庁]。
ショップのカウンターでの本人確認業務は、次のように組みます。
予約や電話での連絡の際に、対象の手続きとICチップ付きの本人確認書類、運転免許証なら2つの暗証番号が必要なことを伝える
書類の提示を受け、顧客自身に暗証番号や券面の番号を入力してもらう(募集人は暗証番号を聞き取らず、控えない)
画面に表示された氏名・住居・生年月日・写真を券面と照合し、写真を本人の顔と見比べる
取引目的・職業(法人は事業の内容・実質的支配者)の申告を受け、保険会社の様式に記録する
読み取れない場合の分岐(暗証番号の失念、ICチップの破損、装置の故障)を案内する
装置の故障でその場で読み取れないときは、合理的な期間内に読み取れば取引時確認を完了できます(No.18)。暗証番号を失念した顧客には、警察署等で確認できることを案内し、再来店か別の方法(転送不要郵便等を使う方法、公的個人認証)を所属保険会社の手順に沿って選びます。ICチップ付きの書類を持たない顧客は、提示に加えて取引関係文書を転送不要郵便等で送る方法(ロ(1))になり、その場で手続きが完了しないことを先に伝えます。いずれの場合も、顧客の理解と協力を得られるよう、注意点は申込みの前に説明します。
端末は、運転免許証の2組の暗証番号とマイナンバーカードの14桁の入力に対応しているか、在留カード等を読めるか、通信環境に左右されないかを比べ、顧客対応のスピード、台数とコストを来店数に合わせて見積もります。導入を検討する際の端末の比較は本人確認のICチップ読み取り端末を比較を参照してください。
訪問募集での準備:持ち運べる端末と訪問先での照合
顧客の自宅や法人の事務所を訪問して契約を進める募集人にも、同じ方法が求められます。訪問先での確認も対面の取引時確認であり、Q&A No.19の「営業代理店の営業担当者が顧客等を訪問」する場面は、保険の訪問募集にそのまま当てはまります。持ち出せる端末の種類、顧客への事前案内、当日の手順、読めないときの対応の一般論は訪問先の本人確認とICチップ読み取りの方法にまとめているので、ここでは保険代理店に固有のポイントだけを押さえます。
- 読み取りと確認の分業: 募集人が訪問先で読み取り、保険会社が後から確認する分業は、合理的な期間内に照合を適切に行う前提で認められています(No.19)。
- 法人契約の代表者等: 経営者向けの保険など企業(法人)との契約では、手続きに当たる代表者等の本人特定事項についてもICチップの読み取りによる確認が必要です(No.35)。代表者等がICチップのない書類しか持たない場合は、住所への転送不要郵便か、役職員が本店等へ赴いて取引関係文書を交付する方法です(No.36)。
- 委任代理人: 家族などが代理で手続きする場合は、委任者と代理人の双方の本人確認書類のICチップを読み取るのが原則です(No.23)。
- 読み取った情報の扱い: 読み取った情報をどこかへ送信する義務はなく(No.41)、画面での照合で確認は完結します。端末に残す場合は、個人情報として保存期間と閲覧者を決め、安全に管理します。
訪問募集では、顧客が暗証番号を覚えていない、通信環境がない、端末を持ち出せる人数が限られる、といった課題が重なります。どの範囲の募集人に端末を配るのか、訪問先での読み取りを一部の担当者に集約するのか、ICチップ付きの書類がない顧客はどの方法で確認するのかを、所属保険会社の方針と合わせて計画します。
確認記録と保険会社への報告:代理店が残すもの
確認記録は、取引時確認を行った特定事業者、つまり保険会社等が法令に基づいて作成し、契約が終了した日などから7年間保存します(法第6条)[e-Gov法令検索]。記録事項は施行規則第20条に定められ、取引時確認を行った者、記録の作成者、本人確認書類の提示を受けた日付と時刻(写しを添付して保存する場合は日付のみ)、顧客の本人特定事項、取引目的、職業などです[e-Gov法令検索]。ICチップの情報や読み取り時のログ、券面と一致したことを記録する必要はなく、記録の作成方法と記録事項は改正前と変わりません(No.39)。読み取り結果の画面の印刷は本人確認書類の「写し」には当たらず、提示を受けた日時の記録か、日付の記録と券面の写しの保管が必要です(No.40)。デジタル庁の対面確認アプリを使う場合の時刻と書類の記録の扱いもQ&Aにあります(No.42)。
代理店が保険会社に報告する項目は、各社の様式で決まります。改正で増えるのは「読み取って照合する」手順そのもので記録事項は増えないため、様式の変更は小さく済む可能性が高いといえます。読み取りログを証跡として残すことは自主的な取組みとして認められており(No.39)、乗合代理店なら募集人・日時・書類の種類・結果を自店のシステムに残しておくと、各社の照会に答えやすくなります。読み取った情報と券面が一致しない場合は偽変造が疑われ、第三者になりすましている疑いがあれば警察等への通報が求められています(No.25)。通常は契約手続きの途中で不一致に気づくため、その場で取引を進めずに保険会社へ連絡する手順を決めておきます。疑わしい取引の届出は保険会社等の義務です(法第8条)。
非対面(eKYC・公的個人認証)との使い分け
保険会社の多くはインターネットでの申込みにeKYCを導入し、スマートフォンでマイナンバーカードのICチップを読み取る方法や、公的個人認証(署名用電子証明書)を使うサービスを提供しています。非対面の確認方法も2027年4月1日に見直され、本人確認書類の画像を送る方法は、国内に住居のある顧客については使えなくなり、ICチップ情報の送信(ハ・ニ)や公的個人認証(ヌ)など認証の強度が高い方法に整理されます(令和7年第3号)。金融庁は2026年10月9日、画像送信による本人確認の廃止とICチップ情報の読取への一本化について、施行日を待たずに速やかに対応するよう金融機関等に要請しました[fsa.go.jp]。
代理店の現場で迷うのは、来店・訪問した顧客にその場でeKYCをしてもらうか、対面の方法で確認するかです。公的個人認証による確認は対面でも使えますが(No.26)、署名用電子証明書の6〜16桁のパスワードが必要で、15歳未満には原則発行されません。新たな契約でも契約者変更でも、本人確認書類を提示できる顧客には対面のICチップ読み取りで完了させ、来店が難しい顧客や郵送が前提の手続きにはeKYCや本人限定受取郵便(新規則チ)を使う分け方が現実的です。代理店は所属保険会社が用意した方法の中から、顧客の状況に応じて合うものを案内します。非対面の方法の詳細は犯罪収益移転防止法の本人確認とはで解説しています。
保険代理店の店頭・訪問先でICチップを読み取るには
ショップのカウンターと募集人の訪問先の両方で同じ読み取りと照合を行う手段として、株式会社amsはマイナドライブIDを提供しています。三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、Androidのスマートフォン・業務用ハンディ端末で動く本人確認の業務アプリで、カードをかざすのも暗証番号を入力するのも顧客本人です。画面には、運転免許証なら暗証番号2まで入力したときの顔写真を含む記載事項、マイナ免許証の免許情報、マイナンバーカードなら4桁の暗証番号で4情報・券面の14桁の番号で顔写真まで、在留カード・特別永住者証明書なら券面右上の12桁の番号で記載事項と顔写真が表示され、募集人はそれを券面と本人の顔に照らします。暗証番号の値やICチップの生データ、標準運用での顔写真画像を基幹システムへ送ることはありません。
来店型ショップではカウンターのstera端末で、訪問募集では募集人が持ち出すAndroid端末で、同じ画面で読み取りと照合を行う使い分けを想定しています。在留カード等の氏名は文字で表示せず、旅券には対応していません。読み取った項目と券面の照合を所属保険会社の確認手順や確認記録にどう位置づけるかは、保険会社と法務担当にご確認ください。導入までの進め方は次の4つです。
自店で扱う保険契約のうち取引時確認の対象になる手続きと、来店・訪問それぞれの年間件数を整理する
所属保険会社が2027年4月に向けて案内する本人確認書類と確認方法、報告の様式を確認し、自店の手順と調整する
カウンターのstera端末と、訪問用のAndroid端末の台数・配布先を決める
マイナドライブIDのデモ・導入相談をこちらの申し込みフォームから申し込む
まとめ:2027年3月までに代理店が決めておくこと
保険代理店の取引時確認は、保険会社等の義務を代理店が現場で担う構造です。対象は貯蓄性のある保険契約の締結・支払い・契約者変更と契約者貸付、現金等200万円超の受払いで、掛け捨ての契約は簡素な顧客管理が許容される取引として外れます。2027年4月1日からは、対面でICチップ付きの写真付き書類を使う確認は、読み取りと券面・本人との照合が原則になり、運転免許証は2つの暗証番号が必要です。社会全体でマネー・ローンダリング対策が強まる中、施行までの間は5か月を切っています。所属保険会社の方針を確かめたうえで、来店型ショップのカウンターと訪問募集の端末、読めないときの代替手順、募集人への研修、顧客への事前案内を決めておくと、施行日に慌てずに済みます。
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