銀行で口座を開くとき、クレジットカードを申し込むとき、マンションの売買契約を結ぶとき、窓口の担当者は運転免許証やマイナンバーカードの原本を求め、取引の目的や職業も尋ねます。面倒に感じる手続きですが、これは各社が独自に決めたものではなく、犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律、犯収法)が一定の事業者に課している「取引時確認」の一部です。何を確認し、どの本人確認書類を使い、どの方法で確かめるかは、法律と施行規則で細かく定められています。
そのルールが2027年4月1日に大きく変わります。対面では、ICチップ付きの写真付き本人確認書類について、券面を見るだけでなくICチップを読み取って券面と照らし合わせることが原則になり、非対面では本人確認書類の画像を送ってもらう方法が廃止されます。金融機関、不動産、宝石・貴金属などの窓口担当者と、手続きで本人確認を求められた利用者の双方に向けて、警察庁の解説資料と改正に関するQ&Aをもとに、犯収法の本人確認の全体像を順に整理します。
結論:本人確認の中身は特定事業者が行う「取引時確認」
犯収法は、特定事業者に対し、特定取引を行う際の取引時確認、確認記録の作成・保存(7年間)、取引記録等の作成・保存(7年間)、疑わしい取引の届出などを義務づけています(警察庁)。取引時確認で確認するのは、本人特定事項(個人は氏名・住居・生年月日、法人は名称と本店または主たる事務所の所在地)、取引を行う目的、職業(法人は事業の内容)、法人の実質的支配者です。ハイリスク取引で200万円を超える財産の移転を伴う場合は、資産及び収入の状況も確認します。
本人確認書類の種類は施行規則で決められています。対面では原本の提示を受けるのが基本で、写しの提示では確認できません。非対面では、ICチップ情報の送信を受ける方法や、取引関係文書を転送不要郵便で送る方法など、定められた方法の中から特定事業者が選んで確認します。
2027年4月1日に施行される改正施行規則では、ICチップ付きの写真付き本人確認書類を対面で使う場合、ICチップの情報を読み取って画面に表示し、券面と照合することが原則になります(警察庁)。非対面では、本人確認書類の画像の送信を受ける方法と写しの送付を受ける方法が廃止され、ICチップ情報や公的個人認証を使う方法が中心になります(e-Gov)。
犯罪収益移転防止法の本人確認とは
犯収法は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長し、事業活動に使われて健全な経済活動に悪影響を与えることを防ぐため、犯罪による収益の移転の防止を図ることを目的に制定されました(警察庁)。マネー・ローンダリングとは、犯罪で得た資金を正当な取引で得た資金のように見せかけたり、口座を転々とさせたり、金融商品・不動産・宝石などに形を変えて出所を隠したりする行為を指します。
政府広報オンラインは、ここでいう「本人確認」を、犯収法第4条第1項第1号に規定する本人特定事項の確認と説明しています(政府広報オンライン)。他人の名をかたったり架空の人物の名義を使ったりしていないかを確かめ、お金の出所を明らかにして後から流れを追えるようにすることが狙いです。
制度の背景には国際的な取り組みがあります。マネー・ローンダリングやテロ資金供与の対策を求めるFATF(金融活動作業部会)の勧告を受けて、2003年1月に金融機関等本人確認法が施行され、2008年3月1日からは犯収法が全面施行されて、金融機関以外の事業者にも本人確認などの義務が広がりました(警察庁)。2013年4月1日に全面施行された改正で、本人特定事項に加えて取引を行う目的、職業・事業の内容、実質的支配者などが確認事項に新たに加わり、取引に際して行う確認全体を「取引時確認」、その記録を「確認記録」と呼ぶようになりました。これらの事項は、取引の態様が目的や職業などに照らして不自然でないかを吟味し、疑わしい取引の届出が必要かを判断する材料になります。
対象になる特定事業者と特定取引
犯収法の義務を負うのは「特定事業者」です。警察庁の「犯罪収益移転防止法の概要」では、金融機関等、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、カジノ事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者(いわゆる私設私書箱)、電話受付代行業者、電話転送サービス事業者の他、司法書士・行政書士・税理士・弁護士などの士業が挙げられています(警察庁)。弁護士の措置は日本弁護士連合会の会則で定めるところによります。
ただし、特定事業者が行うすべての業務・取引が対象ではありません。義務の対象となる業務は「特定業務」として決められていて、たとえば宅地建物取引業者は売買やその代理・媒介が対象で、賃貸の業務は対象外です。取引時確認が必要になるのは、特定業務のうち「特定取引等」に当たる取引に限られます。主な例は次のとおりです。
| 特定事業者 | 取引時確認が必要な主な取引 |
|---|---|
| 金融機関等 | 預貯金契約の締結、200万円を超える大口現金取引、10万円を超える現金送金など |
| ファイナンスリース事業者 | 1回の賃貸料が10万円を超えるファイナンスリース契約の締結 |
| クレジットカード事業者 | クレジットカード交付契約の締結 |
| 宅地建物取引業者 | 宅地建物の売買契約の締結、またはその代理・媒介 |
| 宝石・貴金属等取扱事業者 | 代金の支払が現金で200万円を超える宝石・貴金属等の売買契約の締結 |
| 郵便物受取サービス業者など | 役務提供契約の締結(電話受付代行業者などは一部の契約を除く) |
| 司法書士・行政書士・税理士など | 宅地建物の売買、会社の設立・合併、200万円を超える財産の管理・処分などの代理・代行を内容とする契約の締結 |
上記の表の取引は施行令に列挙された「対象取引」で、これにマネー・ローンダリングの疑いがある取引や、同種の取引と著しく異なる態様の取引(特別の注意を要する取引)を加えたものが「特定取引」です(警察庁)。金額の基準以下に分けた取引でも、一つの取引を分割したことが一見して明らかなら一つの取引とみなされます。反対に、金融機関の店頭で公共料金や入学金などを現金で振り込む場合は、10万円を超えても本人確認書類の提示は不要とされています(政府広報オンライン)。
レンタカーや配送のように一覧にない業種は、犯収法の取引時確認の義務の対象ではありません。こうした業種が同じ確認手順を取り入れる場合は、法令上の義務ではなく、自社の運用品質を上げるための選択として位置づけます。業種ごとの具体的な流れは、不動産取引の本人確認の記事でも紹介しています。
取引時確認で確認する事項
通常の特定取引で確認する事項と、主な確認方法は次のとおりです(警察庁)。
| 確認事項 | 個人 | 法人 | 主な確認方法 |
|---|---|---|---|
| 本人特定事項 | 氏名・住居・生年月日 | 名称・本店または主たる事務所の所在地 | 本人確認書類など |
| 取引を行う目的 | 確認する | 確認する | 申告(口頭、チェックリストなど) |
| 職業・事業の内容 | 職業 | 事業の内容 | 個人は申告、法人は登記事項証明書や定款など |
| 実質的支配者 | 対象外 | 本人特定事項と法人との関係 | 代表者等からの申告 |
| 資産及び収入の状況 | ハイリスク取引で200万円超の財産移転を伴うとき | 同左 | 源泉徴収票・確定申告書・預貯金通帳、損益計算書・貸借対照表など |
| 代表者等の本人特定事項 | 代理人が取引するとき | 来店した担当者など | 本人確認書類など |
取引を行う目的や職業の項目は法令で決められておらず、各特定事業者が取引の内容に応じて決めます。顧客が国、地方公共団体、上場企業等の場合は、取引の任に当たる代表者等の本人特定事項だけを確認し、人格のない社団・財団の場合は代表者等の本人特定事項、取引を行う目的、事業の内容を確認します。
法人の取引では、実際に来店した担当者などの「代表者等」についても本人特定事項を確認します。その前提として、委任状を持っていることや、電話で法人のために取引していることが確認できることなど、法人のために取引の任に当たっていると認められる事由が必要です。社員証を持っていることは、2016年10月1日以降この事由に当たりません。実質的支配者は、議決権その他の手段で法人を支配する自然人までさかのぼって確認します。たとえば議決権の50%超を単独で持つ代表者が自ら手続きするなら、その代表者だけが実質的支配者になります。
犯収法の本人確認書類一覧
本人確認書類は、個人か法人かなどの区分ごとに定められています。書類の要件として、有効期限のある書類は提示や送付を受ける日に有効なもの、有効期限のない書類は原則としてその日の前6か月以内に作成されたものに限られます(警察庁)。2027年4月以降の扱いは、警察庁Q&Aと改正命令で照合した範囲で添えています(警察庁)。
| 区分 | 主な書類 | 注意点(2027年4月以降を含む) |
|---|---|---|
| 顔写真付き・ICチップ付き | マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券など | 現行は提示だけで確認できる。2027年4月以降の対面は、提示に加えてICチップの読み取りと券面との照合が原則 |
| 顔写真付き・ICチップなし | 運転経歴証明書、身体障害者手帳、乗員手帳など | 2027年4月以降の対面は、提示に加えて取引関係文書を転送不要郵便などで送る |
| ICチップ付き・顔写真なし | 16歳未満の在留カード・特別永住者証明書、1歳未満のマイナンバーカードなど | 2027年4月以降の対面は、提示とICチップの読み取りに加えて取引関係文書を送る |
| 顔写真なし・ICチップなし | 健康保険などの資格確認書、国民年金手帳、母子健康手帳など | 現行は別の書類や取引関係文書の送付と組み合わせる。2027年4月以降の対面の方法(新規則第6条第1項第1号イ・ロ)には含まれない |
| 住民票の写しなど | 印鑑登録証明書、戸籍の附票の写し、住民票の写し、住民票の記載事項証明書 | 対面では提示に加えて取引関係文書を送る。作成から6か月以内のもの |
| 法人 | 登記事項証明書、印鑑登録証明書、官公庁が発行した書類で名称と所在地の記載があるもの | 来店した代表者等の本人確認も別に必要 |
顔写真なし・ICチップなしの書類について、警察庁Q&A(No.34)は、一定の取引に限って写しの送付を受ける方法(新規則第6条第1項第1号ヘ)や、現在の住居を確認する書類(同条第2項)として使えることを示しています。本人確認書類の住居が現在のものと違う場合や住居の記載がない場合は、別の本人確認書類か補完書類(納税証明書、社会保険料領収証書、公共料金領収証書など)で現在の住居を確認します。マイナンバーの通知カードは補完書類に含まれません。
旅券は、2020年2月4日以降に発行されたものには住居の記載がなく、ICチップにも住居の情報がありません。ICチップを読み取る方法で旅券を使う場合も、現在の住居は別の本人確認書類か補完書類で確認する必要があります(警察庁)。また、特定事業者は法令上の本人確認書類のすべてに対応する必要はなく、どの確認方法を採るかは事業者に委ねられています(Q&A No.4)。
マイナンバーカードを受け付けるときは、個人番号を書き写さず、写しを取る場合も裏面は取りません(警察庁)。個人情報保護委員会も、表面のコピーは問題ないが、裏面の個人番号をコピーすることはできないとしています(個人情報保護委員会)。確認記録には、書類を特定する事項としてマイナンバー以外(発行者や有効期間など)を記載します。
対面・非対面・郵送の確認方法
対面(窓口・店頭)
現行の規則では、個人の顧客から写真付き本人確認書類の提示を受ければ、その1点で本人特定事項を確認可能です(警察庁)。顔写真のない書類の場合は、提示に加えて、書類に記載された住居宛てに取引関係文書を書留郵便等の転送不要郵便物として送るか、別の本人確認書類や補完書類の提示または送付を受けます。住民票の写しなどは、提示に加えて取引関係文書を送ります。取引関係文書を送る代わりに、事業者の役職員が顧客の住居に赴いて手渡す方法も認められています。
法人の場合は、来店した代表者等から登記事項証明書などの提示を受ける方法のほか、名称と所在地の申告を受けて、登記情報提供サービスの登記情報や国税庁の法人番号公表サイトを活用して確認する方法があります。
非対面(インターネット・郵送)
非対面では、特定事業者が提供するソフトウェアで撮影した容貌の画像と写真付き本人確認書類の画像の送信を受ける方法、容貌の画像とICチップ情報の送信を受ける方法、本人確認書類の送付やICチップ情報の送信を受けて取引関係文書を転送不要郵便で送る方法、本人確認書類の写しの送付を受けて取引関係文書を送る方法など、複数の方法が規定されています(警察庁)。スマートフォンに搭載したマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)の情報の送信を受ける方法や、公的個人認証サービス(JPKI)の電子証明書と電子署名を用いる方法もあります。こうしたオンラインで完結する本人確認は、一般にeKYCと呼ばれています。
このうち画像の送信や写しの送付を使う方法は、2027年4月1日に廃止されます。詳しくは改正の節で触れます。
本人限定受取郵便を使う方法
郵送で手続きを完結させる方法として、名あて人本人などに限って交付する郵便で取引関係文書を送る方法もあります。郵便の取扱いの中で特定事業者に代わって住居を確認し、写真付き本人確認書類の提示を受け、確認した者の氏名、提示を受けた日時、書類の名称や記号番号などを特定事業者に伝える措置がとられているものに限られます(警察庁)。日本郵便は、本人限定受取郵便の「特定事項伝達型」を犯収法などの関係法令に対応するサービスと案内しています(日本郵便)。
ハイリスク取引と追加の確認
ハイリスク取引は、次のいずれかに当たる取引です(警察庁)。
- 過去の契約の際に取引時確認をした顧客や代表者等になりすましている疑いがある取引、または確認事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引
- 特定国等(2026年8月時点の資料ではイランと北朝鮮)に居住・所在する顧客等との取引
- 外国の元首や外国で重要な公的地位にある者(外国PEPs)、過去にその地位にあった者、その家族、これらが実質的支配者である法人との取引
ハイリスク取引では、通常の確認方法に加えて、追加の本人確認書類か補完書類の提示または送付を受けます。預金の払戻しなど継続的な契約に基づく取引でなりすましや偽りの疑いがある場合は、契約の締結時に確認した書類以外の書類を少なくとも1つ使う必要があります。200万円を超える財産の移転を伴う場合は資産及び収入の状況を確認し、法人の実質的支配者は株主名簿や登記事項証明書などを確認したうえで申告を受けます。
2027年4月以降の追加の確認について、警察庁Q&A(No.37)は、関連する取引時確認をマイナンバーカードで新規則第6条第1項第1号イの方法により行った場合、追加の確認は運転免許証の券面情報の確認で足りるとしています(警察庁)。リスクの高い取引を行う際は統括管理者の承認を得ることや、情報の収集・分析の結果を書面にして確認記録などと一緒に保存することも、努力義務として求められています(警察庁)。
確認記録と取引記録の作成・保存
特定事業者は、取引時確認を行ったら直ちに確認記録を作成し、特定取引等に係る契約が終了した日から7年間保存します(警察庁)。様式は定められていませんが、主に次の事項を記録します。
- 本人特定事項、取引を行う目的、職業・事業の内容、実質的支配者
- 代表者等による取引のときは、代表者等の本人特定事項と、法人のために取引していると認めた理由
- 本人特定事項の確認を行った方法と、本人確認書類の名称・記号番号など書類を特定する事項
- 本人確認書類の提示を受けた日付と時刻、送付を受けた日付、取引関係文書を送付した日付
- 取引時確認を行った者と確認記録の作成者の氏名、取引の種類
送付を受けた本人確認書類やその写し、ICチップ情報の送信を受けた場合のその情報なども、確認記録に添付します。提示を受けた本人確認書類の写しを添付して保存するときは、写しに書かれた事項や提示の時刻の記載を省略できます。記録した内容に変更があると知ったときは付記し、すでに書いた内容は消去しません。
取引記録等は、特定業務に係る取引を行ったときに作成し、取引の日から7年間保存します。財産の移転を伴わない取引や1万円以下の財産の移転に係る取引などは除かれます。すでに取引時確認をして確認記録を保存している顧客であれば、記録と同一の顧客であることを確かめて所定の事項を記録すれば、改めて取引時確認をする必要はありません(ハイリスク取引などを除く)。
2027年4月以降も、確認記録の作成方法や記録事項は変わりません。警察庁Q&Aは、ICチップ情報や読み取り時のログ、券面とICチップ情報が一致したことを記録する必要はないとし(No.39)、ICチップ情報を表示した画面を印刷したものは本人確認書類の写しに当たらず、提示を受けた日付と時刻の記録などが引き続き必要としています(No.40)(警察庁)。
2027年4月の改正で変わること
対面はICチップの読み取りと券面照合が原則に
対面の見直しは、2026年3月6日に公布された施行規則の改正命令(令和8年共同命令第1号)によるもので、施行は2027年4月1日です(警察庁)。新規則第6条第1項第1号イでは、氏名・住居・生年月日・写真の情報が記録されたICチップ付きの写真付き本人確認書類(特定半導体集積回路付き本人確認書類)の提示を受けるとともに、読み取り装置でICチップの情報を読み取り、映像面に表示させる方法が定められました。
警察庁Q&Aによると、該当する書類はマイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券などです(No.5)。読み取る項目は少なくとも氏名・住居・生年月日・写真で、旅券は氏名・生年月日・写真です(No.11、No.16)。署名用電子証明書の確認までは不要です。読み取った情報を表示するだけでは足りず、券面の情報と照合する必要があります(No.12)。ICチップ情報と券面を照らし合わせて、偽変造された本人確認書類によるなりすましを防ぐことが改正の趣旨だからです(警察庁)。券面の目視だけで済んでいた対面の確認は、この点で厳格化されます。
運用面では、次の整理が示されています。
- 表示する画面は読み取り装置と別の端末でもよいが、照合できる形で表示する。読み取りは不正なソフトウェアによるなりすましを防ぐ形で行い、例として事業者が準備したスマートフォンで読み取る方法が挙げられている。顧客が用意した装置を認めない扱いも許容される(No.14、No.15)
- 省庁が提供するものに限らず民間企業のアプリも利用できる。デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」のほか、地方公共団体情報システム機構の「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」などが例示されている(No.20〜22)
- 住所変更でICチップが旧住所のままなら、券面の新住居を確認し、ICチップの旧住居と券面の旧住居の一致を確かめる(No.13)
- 装置の不具合で読めないときは、合理的な期間内に読み取れば取引時確認を完了できる(No.18)
- 委任代理人が持参した委任者と代理人の本人確認書類、法人の代表者等の本人確認書類もICチップの読み取りが原則(No.23、No.35)
- 券面とICチップ情報が一致せず、なりすましの疑いがあるときは警察等へ通報する(No.25)
- 施行前に済ませた取引時確認は有効で、施行後に確認し直す必要はない(No.1)
公的個人認証(JPKI)による確認方法(新規則第6条第1項第1号ヌ)は、対面でも使えるとされています(No.26)。2027年4月以降の対面の変化と準備のスケジュールは、犯収法改正で2027年4月から対面の本人確認はどう変わるかで詳しく解説しています。
非対面は画像の送信と写しの送付が廃止
非対面の見直しは、2025年6月24日に公布された別の改正命令によるもので、施行日は同じ2027年4月1日です(e-Gov)。容貌と本人確認書類の画像の送信を受ける方法(現行規則第6条第1項第1号ホ)は、書類の画像を使う点で偽変造によるなりすましのリスクが高いとして廃止されます。本人確認書類の写しの送付を受ける方法(同号リ)も廃止されます。一方、ICチップ付きの本人確認書類を持たない人が非対面で取引できるよう、住民票の写しなどの原本の送付を受ける方法は残り、住居の確認のために送付を受ける補完書類も原則として原本に限られます。
金融庁は2026年10月9日、施行日から本人確認書類の画像送信を受ける方法が廃止され、ICチップ情報の読取に原則一本化されることを踏まえ、施行日を待たず可及的速やかに対応するよう金融機関等に求めました(fsa.go.jp)。移行までの間は、本人確認書類や容貌の画像に不自然な点がないかの確認を徹底するよう求めています。
本人限定受取郵便を使う方法(新規則第6条第1項第1号チ)も、特定事業者に代わってICチップ付きの写真付き書類の提示を受けてICチップの情報を読み取る措置か、スマートフォンに搭載したマイナンバーカードの情報の送信を受ける措置がとられた郵便に限られます(警察庁)。日本郵便は、2027年4月1日から特定事項伝達型と基本型の本人確認書類をICチップ付きの写真付き4種類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書)に限り、特定事項伝達型ではICチップの情報が本人確認書類と一致することを確認したうえで本人確認を行うと公表しています(日本郵便)。運転免許証を読み取る際は4桁の暗証番号2組の入力が必要になり、特例型は2027年3月31日で終了します。公表資料は確認に使う機器や手順までは示していません。
窓口で必要になる準備のポイント
施行までに特定事業者が整えておきたいのは、手順・装置・説明・記録の4点です。まず、自社のどの取引が特定取引に当たり、現在どの本人確認方法と本人確認書類を使っているかを棚卸しします。受け付ける書類を絞る判断も事業者に委ねられているため、ICチップを読み取る書類の範囲と、事業者側で導入する読み取り装置を検討します。手順の組み方は店頭でICチップを読み取る基本の手順、書類ごとの読み取りの違いは本人確認書類4種類のICチップ読み取り方式の違いが参考になります。
利用者への案内では、暗証番号が窓口の課題になりやすい点を押さえます。従来のIC運転免許証は、暗証番号を3回続けて間違えるとICチップが読めなくなります。解除や照会は、本人が免許証を持参して運転免許試験場や警察署などで行います(警視庁)。マイナ免許証の暗証番号は10回続けて間違えると読めなくなります(police.pref.chiba.jp)。マイナンバーカードの券面事項入力補助用暗証番号は、氏名・住所・生年月日・性別を読み取るための4桁の数字で、3回間違えるとロックされ、再設定は住所地の市区町村で行います(マイナンバーカード総合サイト)。デジタル庁は、券面の生年月日・有効期限・セキュリティコードを使って、4桁の暗証番号を入力せずにICチップを使った確認ができる対面確認アプリを案内しています(デジタル庁)。どの方式でも、暗証番号は本人に入力してもらい、担当者が聞き取ったり控えたりしない運用にしておくと安心です。
読み取れない、券面と一致しないといった例外への備えも欠かせません。装置の不具合なら合理的な期間内に読み直し、書類の不一致なら取引を止めて責任者に引き継ぐなど、判断の流れを規程として整備しておきます。犯収法は、使用人への教育訓練や取引時確認等の措置の実施に関する規程の作成なども努力義務として求めているため、手順書と研修を併せて見直すと効率的です。
利用者の側は、原本を持参すること、有効期限が切れていないこと、住所変更の記載の有無を事前に確かめておくと手続きを進めやすくなります。事業者は取引時確認に応じない顧客に対して、応じるまで取引に係る義務の履行を拒むことができ、確認事項を偽ることは禁じられています(警察庁)。
対面の取引時確認でICチップを読み取るには
マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFCに対応したAndroid端末(業務用のハンディ端末やスマートフォン)で動く本人確認の業務アプリです。お客様がカードをかざし、暗証番号はお客様自身が入力します(stera端末はお客様側の画面のタッチパネル、Android端末は端末画面のテンキー)ので、スタッフが暗証番号を聞いたり控えたりする必要はありません。読み取れるのは、マイナ免許証(4桁の暗証番号で免許情報と顔写真)、従来のIC運転免許証(暗証番号1で本籍を除く記載事項、暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号で顔写真も。個人番号は読み取りません)です。運転免許証とマイナ免許証では、ICチップの氏名・住所・生年月日・顔写真を読み取って端末画面に表示し、担当者が券面と本人の顔に照らし合わせられます。
このアプリはデータ最小化を前提にしており、暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送りません。合意した項目だけをHTTPS POSTで基幹システムへ連携でき、認証はmTLS・OAuth2・HMAC署名から選べます。読み取ったICチップの情報を外部へ送信しなくても端末画面での照合で確認は完結でき、警察庁Q&A(No.41)の「読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はありません」という整理とも合います。在留カード・特別永住者証明書は券面の12桁の番号を入力して読み取り、旅券には対応していません。マイナンバーカードは、4桁の暗証番号では氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号を入力すると顔写真も読み取れます。犯罪収益移転防止法の取引時確認に使う場合、読み取る項目(氏名・住居・生年月日・写真)と券面との照合を自社の確認手順に組み込めるかは、法務担当・顧問弁護士に確認してください。
自社で取引時確認が必要な取引と、現在使っている確認方法・本人確認書類を整理する。
ICチップから読み取りたい項目と、確認記録への反映方法を決める。
使う端末(stera端末、またはNFCに対応したAndroid端末)と既存システムの連携可否を確認する。
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まとめ
犯罪収益移転防止法の本人確認は、特定事業者が特定取引の際に行う取引時確認として、確認する事項、本人確認書類、確認方法、記録の残し方まで一体で決められています。個人は氏名・住居・生年月日に加えて取引の目的と職業、法人は名称・所在地に加えて事業の内容と実質的支配者を確認し、確認記録と取引記録を7年間保存します。
施行日の2027年4月1日からは、対面ではICチップ付きの写真付き本人確認書類のICチップを読み取って券面と照合することが原則になり、非対面では画像の送信や写しの送付を使う方法がなくなります。自社の取引と確認方法を棚卸しし、読み取りの手段、暗証番号の案内、例外時の判断、確認記録の様式を、施行までに現場と法務の双方で確かめておくことが移行を落ち着いて進める近道です。
FAQ






