企業の受付システムの要件定義書に「ICチップ読み取りに対応」と一行だけ書いて開発に入ると、結合テストのあたりで手が止まりがちです。運転免許証では暗証番号を2組求める画面が要り、マイナンバーカードでは暗証番号を使うか券面の番号を使うかで読める項目が変わり、在留カードでは暗証番号の代わりにカードに印字された番号を入力します。かざす動作は同じでも、入口の画面から例外の処理まで書類ごとにほぼ別物です。

2027年4月1日には犯罪収益移転防止法(犯収法)の施行規則の改正が施行される予定で[警察庁]、同じ日から本人限定受取郵便でも、受け取りに使える本人確認書類がICチップ付き・写真付きの4種類に絞られます[日本郵便]。この4種類について、何を入力すれば何が読めるのか、続けて間違えたら誰がどこで元に戻すのか、端末に何が要るのかを、公的機関の公表資料をもとに並べました。

結論:入力するもの・読める項目・ロック後の戻し方が書類ごとに違う

書類ごとに違う3つの点。入力するもの、暗証番号か券面の番号か、4桁2組・4桁・14桁。読める項目、4桁の4情報に写真なし、旅券は住居の記録なし。間違えたとき、免許証は3回でロック、マイナ免許証は10回
愛知県警察・警視庁の案内、警察庁のマイナ免許証読み取りアプリFAQ、マイナンバーカード総合サイト、警察庁の犯収法施行規則改正Q&Aに基づく(2026年10月時点)。

ICチップ付き・写真付きの4種類は、同じ「ICチップを読む」でも、チップを開くために入力するもの、読める項目、続けて間違えたときの扱いがそれぞれ違います。従来の運転免許証は4桁の暗証番号を2組使い、写真と本籍は2組目でしか開きません。マイナンバーカードは本人が設定した4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別の4情報を読めますが、その4情報に写真は含まれません。在留カードと特別永住者証明書は、本人が覚えている暗証番号ではなく、カードに記載された番号を入力して読みます。

続けて間違えたときの扱いも揃っていません。運転免許証の暗証番号は3回、マイナ免許証の暗証番号は10回で読めなくなり、解除は警察の免許窓口です。マイナンバーカードの券面事項入力補助用の暗証番号は3回でロックされ、再設定は市区町村です。書類を問わず同じ「もう一度お試しください」を出す画面では、回数の少ない書類から先にロックへ近づきます。以下では、書類ごとの読み方の概要を比較表とあわせて整理します。

受付システムと手順書は、最初に書類の種類を確定させ、入力画面、項目の対応づけ、例外時の分岐を書類ごとに持つ形で作るのが実務的です。以下、その根拠を書類別に解説します。

なぜ運転免許証・マイナンバーカード・在留カード・特別永住者証明書の4種類なのか

「4種類」という括り方のきっかけの一つが、2026年9月14日に公表された本人限定受取郵便のサービスの見直しです。2027年4月1日から、特定事項伝達型と基本型で提示できる本人確認書類を、ICチップが組み込まれた写真付きの運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書の4種類に限り、パスポートなどは対象外になります。特定事項伝達型では、ICチップに記録された情報が本人確認書類と一致することを確認したうえで本人かを確かめる方法に変わり、運転免許証のICチップを読む際は4桁の暗証番号2組の入力が必要と明記されています[日本郵便]。

特定事項伝達型には、お客さまのスマートフォンに搭載されたマイナンバーカードの情報の送信を受けて確認する方法も加わります(事前にアプリのインストールなどの設定が必要)。基本型では本人確認書類を2点提示する取扱いが終了します。なお、公表資料は確認に使う機器や手順までは示していません。

一方、犯罪収益移転防止法の側では、ICチップを読み取る方法で使う「特定半導体集積回路付き本人確認書類」について、警察庁のQ&A(No.5)がマイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券等を例に挙げています[警察庁]。法令上は旅券も含まれるので、4種類への限定は郵便サービスとしての整理と読むのが正確です。法令で定める本人確認書類のすべてに対応する必要はなく、どの確認方法を採るかは特定事業者に委ねられているという回答(No.4)もあります。書類ごとの一般的な使い分けは本人確認書類には何が使えるかで整理しています。

携帯電話の契約でも、令和9年4月以降は本人確認でマイナンバーカードや運転免許証などのICチップの読み取りが原則必須になり、オンラインで契約する非対面の場合は令和8年4月1日からすでに原則必須になっていると総務省が案内しています[総務省]。窓口、店頭、配達先の多くの場面で、この4種類を前提に読み取りの仕組みを導入する機会の増加が見込まれます。

書類別のICチップの読み方

書類別・チップを開く入力。運転免許証、暗証番号1で券面の情報、暗証番号2で本籍と写真。マイナンバーカード、4桁で個人番号と4情報、券面の情報で写真も表示。在留カード等、券面の番号を入力、改ざん・発行元を検証
愛知県警察、マイナンバーカード総合サイト、デジタル庁の対面確認アプリの案内、出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションのマニュアルに基づく。

運転免許証(従来型のIC運転免許証)

従来型のIC運転免許証では、4桁の暗証番号を2組あらかじめ決めておき、1組目で本籍と写真以外の券面の情報を、2組目で本籍と写真を確認できます[愛知県警察]。券面に記載されている内容はICチップに記録され、暗証番号を入力しないと見ることができません。本籍はプライバシー保護のため券面の表面から削除されています[警視庁]。チップに記録された項目の詳細は運転免許証のICチップに記録された情報も参考になります。

暗証番号を3回続けて間違えると、それ以降はICチップの記録内容を読み取れなくなります。解除は本人が運転免許証を持参して運転免許試験場や警察署などに申し出る必要があり、忘れた暗証番号の電話照会には応じていません。暗証番号は次回の免許証交付時まで変更できません[警視庁]。代理による手続きも認められていません[愛知県警察]。ロックしたらその場では回復できず、本人が後日、警察の窓口へ出向くことになります。

マイナ免許証

マイナ免許証は、運転免許の情報を記録したマイナンバーカードで、2025年3月24日に運用が始まりました。マイナンバーカードの券面には運転免許に関する事項が記載されず、免許の種類や有効期限はICチップに記録されます。読み取るには運転免許センター等で設定した4桁の暗証番号が必要です[デジタル庁]。

警察庁のマイナ免許証読み取りアプリのFAQによると、このマイナ免許証用暗証番号(数字4桁)は10回続けて誤るとロックされ、解除は運転免許センターなどのマイナ免許証受付窓口で行います。アプリではマイナ免許証の写真がモノクロで表示されます。氏名・住所・生年月日を免許情報とあわせて表示したい場合は、生年月日・有効期限・セキュリティコードを組み合わせた14桁の番号の入力が別に必要で、こちらも10回続けて誤るとロックされ、解除は住民票のある市区町村の窓口です。同アプリは従来の運転免許証には対応していません[警察庁 マイナ免許証読み取りアプリ]。

つまりマイナ免許証では「免許情報を開く4桁」と「氏名等を開く14桁」が別々で、ロックしたときの窓口も警察と市区町村に分かれます。免許の確認だけで足りる業務と、氏名や住所まで機械的に確認したい業務とでは、お客様に求める入力が変わります。

マイナンバーカード

マイナンバーカードのICチップには、公的個人認証サービス(JPKI)で使う署名用・利用者証明用の電子証明書のほか、「券面AP」「券面事項入力補助AP」「住基AP」が格納されています[デジタル庁 民間事業者向けFAQ]。受付で本人に入力してもらうのは券面事項入力補助用の暗証番号で、交付時に本人が設定した数字4桁です。個人番号と4情報(氏名・住所・生年月日・性別)を読み取るためのものです。3回間違えるとロックされ、再設定はお住まいの市区町村で行います[マイナンバーカード総合サイト]。

押さえておきたいのは、この4桁で読める4情報には写真が含まれないことと、同じ領域から個人番号も読めてしまうことです。民間事業者は、法令や条例で定められた手続き以外で個人番号の提供を求めたり、収集・保管したりできません[デジタル庁 民間事業者向けFAQ]。読み取りの段階で個人番号を受け取らないか、すぐに破棄する設計が前提です。

もう一つの読み方が、券面に印字された情報を使う方法です。デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」は、カードの表面をカメラで撮影して文字を読み取り(読み取れないときは生年月日、有効期限の年、セキュリティコードを手入力)、続けてスマートフォンのNFCでICチップを読む流れを案内しており、結果画面の例には顔写真、氏名、住所、生年月日、性別、有効期限が表示されています[デジタル庁 マイナンバーカード対面確認アプリ]。お客様が暗証番号を入力する工程がなく、ICチップの写真まで表示できる点が、4桁の暗証番号による読み取りとの違いです。

在留カード・特別永住者証明書

在留カードのICチップ読み取りによる本人確認は、暗証番号の扱いが他の書類と大きく違います。出入国在留管理庁は、民間企業等が偽変造を確認しやすいよう、ICチップの読み出し仕様を公開しています。券面に記載されていない個人情報はICチップに記録されず、不正読み取りへのセキュリティ対策としてIC旅券のBACと同程度の、券面情報をキーに通信を暗号化する技術が採られ、偽造や改ざんを防ぐ電子署名も施されています。記録される事項は、在留カードでは氏名・生年月日・性別・国籍・地域、住居地、在留資格・在留期間、就労制限の有無、写真など、特別永住者証明書では氏名・生年月日・性別・国籍・地域、住居地、写真などです[moj.go.jp]。

同庁が配布している「在留カード等読取アプリケーション」のマニュアルでは、カードをリーダーに置き、カードに記載された在留カード等番号を入力してから読み取りを開始します。結果画面には、ICチップ内のデータの改ざんの有無を示す「改ざん検証結果」と、同庁が発行した正規のカードかを示す「発行元検証結果」が表示され、番号を誤ると「在留カード等番号が間違っています」と表示されて正しい番号の入力を求められます[moj.go.jp]。暗証番号ではなく券面の番号を使うので、本人が番号を忘れて読めない事態は起きにくいと考えられます。

近年も様式の変更は続いており、2026年6月14日からは新様式の在留カード等と、マイナンバーカードの機能を持つ特定在留カード等の交付が始まりました。新様式では券面に「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」が記載されなくなり、これらを読取アプリで確認するには更新後の版が必要です。特定在留カードは、デジタル庁の対面確認アプリでも在留期間等の情報を読み取ることが可能とされています[moj.go.jp]。

参考:旅券

旅券(パスポート)は本人限定受取郵便の4種類には入りませんが、犯罪収益移転防止法では特定半導体集積回路付き本人確認書類の例に含まれます。ICチップ情報を読み取る方法で旅券を使う場合は、氏名・生年月日・写真を読み取ることとされています(No.11)。令和2年2月4日以降に発行された旅券には住居の情報が記録されていないため、住居は現在の住居が記載された他の本人確認書類や補完書類で確認する必要があります(No.9)[警察庁]。チップを開くための入力について、前述の仕様公開ページはBACを「券面情報をキーとして伝送データを暗号化する」国際標準の仕組みと説明しています[moj.go.jp]。実際にどの項目を入力させるかは、採用するソフトウェアの仕様で確認してください。

4種類と旅券の比較表

ここまでの内容を、入力するもの、読める項目、間違えたときの扱いの3点に絞って並べます(2026年10月時点の最新の公表資料に基づく)。

書類入力するものICから読める主な項目続けて間違えたとき・再設定先
運転免許証(従来型)本人が設定した4桁の暗証番号2組1組目:本籍と写真以外の券面の情報/2組目:本籍と写真3回でロック。本人が免許証を持参し、試験場や警察署などで解除・照会
マイナ免許証マイナ免許証用暗証番号(4桁)。氏名等も表示するなら14桁の番号免許の種類・有効期限などの免許情報と写真。氏名・住所・生年月日は14桁で4桁は10回でロックし免許センター等で解除。14桁は10回でロックし市区町村で解除
マイナンバーカード券面事項入力補助用暗証番号(4桁)、または券面の生年月日・有効期限・セキュリティコード4桁:個人番号と4情報(写真なし)/券面の情報を使う方式:顔写真と4情報など4桁は3回でロックし、市区町村で再設定
在留カード券面に記載された在留カード等番号氏名・生年月日・性別・国籍・地域、住居地、在留資格・在留期間、写真など番号の誤りが表示され、正しい番号で入力し直す
特別永住者証明書券面に記載された番号氏名・生年月日・性別・国籍・地域、住居地、写真など在留カードと同じ
旅券(参考)券面情報を鍵にする方式(具体的な入力は仕様で確認)犯罪収益移転防止法で読む項目は氏名・生年月日・写真本記事で確認できた一次情報の範囲外

お客様自身が暗証番号を入力するのは、運転免許証、マイナ免許証、4桁で読むマイナンバーカードの3つです。在留カード・特別永住者証明書と、券面の情報を使うマイナンバーカードの方式では、券面の番号を入力するか撮影して読み取ります。前者には本人だけが操作する入力画面が、後者には券面の文字を確実に転記できる入力画面が要ります。

犯罪収益移転防止法で読む項目との対応

改正後の規則で、ICチップ付き写真付き本人確認書類の提示を受けてICチップ情報を読み取る方法(新規則第6条第1項第1号イ)を使う場合、少なくとも氏名・住居・生年月日・写真の情報を読み取る必要があります(No.16)。読み取った情報は券面と照らし合わせる必要があり、ICチップが読めたかどうかだけでは足りません(No.12)。券面の目視確認では見抜きにくい偽変造によるなりすましを照合で防ぐ趣旨です。署名用電子証明書の確認までは求められていません(No.11)[警察庁]。改正の全体像は犯収法改正で2027年4月から対面の本人確認はどう変わるかにまとめています。

4項目を書類ごとに当てはめると次のとおりです。

書類氏名・住居・生年月日写真設計上の注意
運転免許証(従来型)1組目の暗証番号で読む2組目の暗証番号で読む写真まで読むには2組とも入力してもらう
マイナンバーカード4桁の暗証番号、または券面の情報を使う方式で読む4桁で読む4情報には含まれない写真をICから読むなら券面の情報を使う方式を選ぶ
在留カード・特別永住者証明書在留カード等番号で読む(住居は住居地)同じ読み取りで顔画像を表示新様式は在留期間等が券面にない
旅券氏名・生年月日のみ読む住居は別の書類で確認(No.9)

住所変更で裏面に新住所が書かれ、ICチップには旧住所が残っている場合は、券面の新住所に加え、ICチップの旧住所と券面に記載された旧住所の一致を確認するなどして住居を確認します(No.13)。ICチップ情報の一部が「●」などで表示される例外的な場合も、券面とICチップの情報の一致が合理的な範囲で確認できれば使えます(No.16)。書類の中には、16歳未満の在留カード・特別永住者証明書や1歳未満のマイナンバーカードのように、ICチップはあっても写真が貼られていないものも存在し、別の方法(新規則第6条第1項第1号ロ(2))の対象になります(No.7)[警察庁]。

なお、この読み取りの義務は、犯罪収益移転防止法の特定事業者が実施する取引時確認に対するものです。銀行など金融機関の口座開設のような取引では手順への組み込みが必要ですが、特定事業者でない事業者が同じ手順を採り入れる場合は、義務ではなく運用品質の選択という位置づけです。

端末とソフトウェアに必要なもの

読み取り装置の側では、まず非接触の通信方式を合わせます。在留カード等の仕様はType Bで、住民基本台帳カードやICカード化運転免許証も同じType Bを採用していると説明されています[moj.go.jp]。在留カード等読取アプリケーションは、パソコンでは拡張APDUに対応した非接触型ICカードリーダライタ、スマートフォンではNFC Type B対応の端末を要件にしています[moj.go.jp]。マイナ免許証読み取りアプリも、スマートフォンはNFCに対応し、かつ拡張Lc/Leに対応している必要があるとしています[警察庁 マイナ免許証読み取りアプリ]。使用するのが専用のリーダーでもスマートフォンでも、NFCの有無だけでなく拡張APDUへの対応を確認します。

マイナンバーカードについては、公的個人認証サービスのポータルサイトが、対応するICカードリーダライタやスマートフォンの一覧を公表しています[公的個人認証サービス ポータルサイト]。スマートフォンで読む場合、機種によってかざす位置が異なり、読み取りの完了まで5秒以上かかる場合があり、金属の机の上では読み取れない場合があるとデジタル庁は案内しています[デジタル庁]。受付の動線や設置環境は、この時間を見込んで決めておきます。

ソフトウェアは、省庁が提供するものに限らず民間のツールやアプリも活用でき(No.20)、地方公共団体情報システム機構の「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」も例に挙がっています(No.22)。読み取った情報は装置とは別の端末の画面に表示してもよい一方、券面との照合ができる形で表示する必要があり、お客様のスマートフォンで読み取る場合も、特定事業者が準備したスマートフォンで読み取るなど、なりすまし防止のための適切な形で行う必要があるとされています(No.14)。事業者が用意した装置に限る取扱いも許容されています(No.15)[警察庁]。

受付システムを作るときに揃えること

受付システムで揃える3点。入力画面、書類の種類を最初に選ぶ、暗証番号は本人が入力。項目の対応、共通4項目と固有項目、個人番号は保存しない。例外の分岐、ロック回数の手前で止める、不一致は取引を止める
警察庁の犯収法施行規則改正Q&A(No.18、No.25、No.39、No.41)とデジタル庁の民間事業者向けFAQをもとにした整理。

入力画面は「書類の種類」を最初に選ぶ

入力するものが書類ごとに違う以上、受付システムを構築するときは、フローを書類の選択から始めます。運転免許証なら2組の暗証番号、マイナ免許証なら4桁と必要に応じて14桁、マイナンバーカードなら4桁か券面の情報、在留カード・特別永住者証明書なら券面の番号と、次の画面が分岐します。暗証番号はお客様自身が画面で入力し、スタッフが聞き取ったり控えたりしない手順にしておきます。照会や再設定の窓口も書類によって異なるので、各種の案内文も書類別に用意します。

項目の対応づけは「共通4項目」と「書類固有の項目」に分ける

ICチップから取得した項目は、書類によって呼び名や中身が揃っていません。マイナンバーカードの「住所」と在留カードの「住居地」、運転免許証の「本籍」、在留カードの「在留資格」「在留期間」、マイナ免許証の「免許の種類」などです。システム側では、氏名・住居・生年月日・写真の共通4項目と書類固有の項目を分けて登録しておくと、書類が増えても画面と帳票を崩さずに済み、運用の改善もしやすくなります。マイナンバーカードの4桁で開く領域には個人番号も含まれるので、保存しない項目として明示的に除外します。

記録については、ICチップ情報や読み取り時のログ、券面とICチップ情報の一致を確認したことを確認記録に残す必要はなく、ログの保存は事業者の自主的な取組とされています(No.39)。読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要もないとされています(No.41)[警察庁]。ICチップのデータを読み取って蓄積する場合は利用目的等の通知か公表が必要とされているので[moj.go.jp]、保存と送信は業務に必要な項目に絞るのが基本です。

例外時の分岐は書類別に持つ

例外の分岐は、少なくとも次の4つを書類ごとに用意しておくと、実際の運用で迷いが減ります。

  • 暗証番号のロック:運転免許証は3回、マイナ免許証は10回、マイナンバーカードの4桁は3回で読めなくなる。回数の手前で入力を止め、別の書類か別の方法へ案内する。
  • 装置の不具合:合理的な期間内にICチップ情報を読み取れば、取引時確認を完了できるとされる(No.18)。
  • 券面とICの不一致:偽変造が考えられ、なりすましの疑いがある場合は警察等への通報が呼びかけられている(No.25)。取引を止めて責任者へ引き継ぐ。
  • 写真や住居が読めない書類:写真のない書類(No.7)や住居の記録がない旅券(No.9)は、別の方法や追加の書類へ回す。

読み取りと照合の基本的な進め方は店頭でICチップを読み取る基本の手順で詳しく扱っています。

対面と非対面で変わる書類の扱い

非対面の本人確認、いわゆるeKYCでも、本人確認書類を撮影した画像を送る手法は見直されつつあります。携帯電話の契約では、本人確認書類の写真のアップロードやコピーの郵送といった方法が原則として廃止され、ICチップの読み取りへ移行すると総務省が案内しています[総務省]。マイナンバーカードの電子証明書を使う公的個人認証(JPKI)による確認方法は対面で用いることも可能とされていますが(No.26)[警察庁]、対面本人確認の中心になるのは、ここまで見てきた券面とICチップ情報の照合です。

同じ顧客がオンラインの審査と店頭の受付の両方を使う事業では、どちらの経路で取得した本人特定事項かを記録の上で区別しておくと、後から確認するときに問題になりにくく、確認の状況も追いやすくなります。券面の目視に頼らず、書類の真正性をどの方法で確かめたのかを説明できることが、偽造のリスクへの対策としてどちらの経路でも重要です。

運転免許証とマイナンバーカードのICチップ読み取りを始めるには

マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFCに対応したAndroid端末(業務用のハンディ端末やスマートフォン)で動く本人確認の業務アプリです。お客様がカードをかざし、暗証番号はお客様自身が入力します(stera端末はお客様側の画面のタッチパネル、Android端末は端末画面のテンキー)。スタッフが暗証番号を聞いたり控えたりする必要はありません。読み取れるのは、マイナ免許証(4桁の暗証番号で免許情報と顔写真)、従来のIC運転免許証(暗証番号1で本籍を除く記載事項、暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号で顔写真も。個人番号は読み取りません)です。顔写真は端末画面に表示され、担当者が目の前の本人の顔と見比べられます。

このアプリはデータ最小化を前提にしており、暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送りません。合意した項目だけをHTTPS POSTで基幹システムへ連携でき、連携時の認証はmTLS・OAuth2・HMAC署名から選べます。読み取ったICチップの情報を外部へ送信しなくても端末画面での照合で確認は完結でき、警察庁Q&A No.41の「読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はない」という回答とも整合します。在留カード・特別永住者証明書は券面の12桁の番号を入力して読み取り、旅券には対応していません。マイナンバーカードは、4桁の暗証番号では氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号を入力すると顔写真も読み取れます。犯罪収益移転防止法の取引時確認に使う場合、読み取る項目(氏名・住居・生年月日・写真)と券面との照合を自社の確認手順に組み込めるかは、法務担当・顧問弁護士に確認してください。

1

自社の受付でどの書類をどれだけ受け付けているかと、外国籍の方の書類の割合を整理する。

2

読み取りたい項目と、確認記録や顧客台帳への反映方法を決める。

3

使う端末(stera端末、またはNFCに対応したAndroid端末)と既存システムの連携可否を確認する。

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。

まとめ:書類の違いを前提に、施行までに手順を固める

4種類はどれもICチップ付き・写真付きの本人確認書類ですが、チップを開く鍵は、従来の運転免許証が2組の暗証番号、マイナ免許証が4桁と14桁、マイナンバーカードが4桁か券面の情報、在留カード・特別永住者証明書が券面の番号とばらばらです。写真まで読めるか、保存してはいけない個人番号が含まれるか、ロックしたらどこで戻すかも書類によって変わります。

施行日の2027年4月1日までに、今後自社の受付に来る書類の内訳と現場の課題を確かめ、書類ごとの入力画面、項目の対応づけ、例外時の分岐を手順書とシステムの両方に書き込んでおくと、現場で迷わない受付に近づきます。

FAQ

よくある質問

Q. ICチップ付き本人確認書類の4種類とは何ですか。
運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書の4つです。日本郵便は2027年4月1日から、本人限定受取郵便の特定事項伝達型と基本型で提示できる書類をこの4種類に限ると公表しています。犯罪収益移転防止法の警察庁Q&Aでは、旅券なども対象の例に挙げられています。
Q. 在留カードのICチップを読み取るには何を入力しますか。
出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションでは、カードに記載された在留カード等番号を入力してから読み取ります。運転免許証やマイナンバーカードのように本人が設定した暗証番号は使いません。結果画面には改ざん検証と発行元検証の結果も表示されます。
Q. マイナンバーカードの4桁の暗証番号で顔写真は読めますか。
券面事項入力補助用の4桁の暗証番号で読めるのは個人番号と4情報(氏名・住所・生年月日・性別)で、写真は含まれません。デジタル庁の対面確認アプリは、券面の生年月日・有効期限・セキュリティコードを使ってICチップを読み、顔写真などを表示する流れを案内しています。
Q. 暗証番号を続けて間違えるとどうなりますか。
従来の運転免許証は3回、マイナ免許証の暗証番号は10回続けて誤ると読み取れなくなり、解除は本人がカードを持参して警察の免許窓口などで行います。マイナンバーカードの券面事項入力補助用暗証番号は3回でロックされ、再設定はお住まいの市区町村で行います。
Q. 犯罪収益移転防止法ではICチップから何を読む必要がありますか。
ICチップ付き写真付き本人確認書類の提示を受けてICチップ情報を読み取る方法では、少なくとも氏名・住居・生年月日・写真を読み取り、券面と照合する必要があるとされています。旅券の場合は氏名・生年月日・写真です。この義務は特定事業者の取引時確認に対するもので、それ以外の事業者が採り入れる場合は運用品質の選択になります。