配達先の玄関や訪問先、受付カウンターで、運転免許証ではなくマイナンバーカードを提示されることがあります。券面を目視で見るだけでなく、業務端末でマイナンバーカードのICチップを読み取り、結果を記録やシステムに反映できないかと検討する事業者もあるでしょう。

ただ、ICチップには個人番号を含む情報や公的個人認証の電子証明書(署名用と利用者証明用)など、性質の違う情報が同居しています。何を読み、4桁の暗証番号を誰が入力し、基幹システムに何を渡すのか。端末の選定より先に決めたい論点を、一次情報をもとに整理します。

結論:4情報だけを使い、個人番号は読まない

マイナンバーカードの券面事項入力補助は、4桁の暗証番号で個人番号と4情報(氏名・住所・生年月日・性別)を読み取るための機能です(マイナンバーカード総合サイト)。民間事業者が本人確認に使用するなら、個人番号は読み取らない・保存しない設計にし、4情報だけを使います。マイナンバーは法令や条例で定められた行政の手続き以外では利用できず、その手続きに必要な場合を除き、民間事業者が顧客に提供を求めたり収集・保管したりすることもできないとされています(デジタル庁)。

もう一つのポイントは、顔写真がこの機能では読めないことです。券面事項入力補助で取り出せるのは文字(テキスト)の情報で、顔写真の画像は「券面AP」という別の領域に記録されています(デジタル庁)。ICチップの写真まで確認が必要な手続きでは、別の方法や書類と組み合わせます。

マイナンバーカードのICチップで読めるもの

ICチップの主な3つの領域。券面事項入力補助、4桁の暗証番号で読む、個人番号と4情報。券面AP、顔写真の画像を記録、裏面は個人番号の画像。JPKI-AP、公的個人認証の証明書、利用できる事業者は限定
デジタル庁「マイナンバーカードとは」の搭載情報の説明をもとに整理。このほか、住民票コードを記録する住基APがあります。

デジタル庁はサイトで、ICチップに搭載されている情報を「JPKI-AP」「券面AP」「券面事項入力補助AP」「住基AP」に分けて解説しています(デジタル庁)。APはカード内のアプリケーション(アプリ)を指し、それぞれ入力するものと読める項目が違います。

機能入力するもの読める主な項目事業者が使うときの注意
券面事項入力補助AP4桁の暗証番号個人番号、4情報個人番号は取得せず4情報だけを使う
券面AP―(対面確認アプリは先に表面をカメラで読み取る)4情報と顔写真の画像、裏面の個人番号の画像顔写真はここにある。裏面の画像は扱わない
JPKI-AP(署名用電子証明書)6〜16桁の英数字のパスワード4情報を含む電子証明書使えるのはプラットフォーム事業者などに限られる
住基AP―住民票コード住基ネットの事務のための領域

券面事項入力補助用の暗証番号は、本人がカードを受け取ったときに設定した4桁の数字で、3回連続で間違えるとロックされます(マイナポータル)。

公的個人認証(JPKI)の電子証明書は別の仕組みです。署名用電子証明書はe-Taxの確定申告などさまざまな手続きの電子署名に使われ、民間事業者が使うには主務大臣認定を受けるか、プラットフォーム事業者に署名等確認業務を委託します。詳細は民間事業者向けのガイドラインで示されています(デジタル庁)。同じFAQは年齢確認の方法の比較で、券面事項入力補助APを使う方法の利用可能者を「誰でも可能」としています。

個人番号を扱わない読み取り設計

デジタル庁は、券面事項入力補助APは対面・非対面(オンライン)でマイナンバーや4情報を確認できるとしつつ、マイナンバーは番号法に基づく事務でのみ利用可能と注記しています(デジタル庁)。記録は「マイナンバー及び4情報」「マイナンバー」「4情報」の単位に分かれており、4情報だけを読み出す設計にできます。同じ暗証番号で個人番号も読めるため、読まないことをシステムの側で決めておく必要があります。

個人番号の取り扱いについて個人情報保護委員会は、提示を受けたカードの裏面の個人番号が見えただけでは収集に当たらない一方、書き取りやコピーをすれば収集・保管制限に違反する可能性があるとしています(個人情報保護委員会)。ICチップから個人番号を取り込んで保存する設計も、同じ観点から避けるのが無難です。仕様には具体的に以下の3点を明記しておきます。

  • 読み取りは4情報の単位だけを要求し、個人番号を画面・ログ・帳票に出さない
  • 4情報も個人情報なので、業務で使わない項目(性別など)は保存や連携の対象から外す
  • 暗証番号の値は端末にもサーバーにも残さない

4桁の暗証番号の扱いと誤入力への備え

券面事項入力補助用の暗証番号を忘れた場合や、3回間違えてロックされた場合は、お住まいの市区町村で再設定の手続きが必要です(マイナンバーカード総合サイト)。配達先や訪問先でロックさせると、その場では解決できません。

対面本人確認の現場では、暗証番号はお客様自身が端末に入力し、スタッフは聞き取らない・メモしないことを原則にします。入力前に「受け取り時に設定した4桁の数字です」と伝え、2回続けて誤った場合は3回目を急がせず別の本人確認方法に切り替える判断を手順書に入れておくと、お客様も安心して入力できます。

運転免許証も扱う窓口では、書類ごとの暗証番号の違いを画面で示しておきます。従来のIC運転免許証は暗証番号を3回続けて間違えるとICチップが読めなくなり、解除は本人が免許証を持参して運転免許試験場や警察署などで行います(警視庁)。マイナ免許証の扱いはマイナ免許証は本人確認書類になるかで整理しています。

業務端末で読み取るための条件

業務端末で読むときの確認点。PC、対応リーダーを接続、ドライバは最新版に。スマホ・端末、NFCで読み取る、かざす位置は機種ごと。読み取り中、5秒以上かかる場合も、カードを当て続ける
公的個人認証サービス ポータルサイト(地方公共団体情報システム機構)とデジタル庁の案内をもとに整理。金属の机の上では読み取れない場合があるとされています。

PCとICカードリーダーで読む場合

PCで読み取る際は、専用のICカードリーダー(ICカードリーダライタ)を接続します。公的個人認証サービス ポータルサイトは、同サービスに対応した機器を用意すること、ドライバは最新のものをインストールすること、点字表記のあるカードは接触型の機器で読み込めない場合があることを案内しています(地方公共団体情報システム機構)。

スマホや業務用ハンディ端末で読む場合

スマホやハンディ端末ではNFC機能を使います。デジタル庁はスマートフォンでの読み取りについて、機種によってかざす位置が異なること、読み取りに5秒以上かかる場合があること、完了までカードをピッタリ当て続けること、金属の机の上では読み取れない場合があることを案内しています(デジタル庁)。導入をはじめる前に、実際のカードでかざす位置と読み取り時間を確かめると安心です。

自社のアプリに組み込む場合

自社開発で活用できる公的な仕組みとして、デジタル庁は「マイナンバーカードかざし利用クライアントソフト」を自治体と民間事業者等に提供しています。Windows端末やiOS・Androidのモバイル端末に対応し、券面事項入力補助APの4桁の暗証番号を照合して基本4情報を応答するインターフェース(API)を含みます。開発に必要な仕様書は、申請から提供まで約3週間かかるとされています(デジタル庁)。

デジタル庁の対面確認アプリとの違い

デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」は、事業者や自治体のスタッフが本人情報の確認を確実に行うためのアプリで、金融機関や携帯電話の契約などが利用シーンに挙がっています(デジタル庁)。手順は、カード表面をカメラで読み取ってからNFCでICチップを読む流れで、顔写真・氏名・住所・生年月日・性別・有効期限が表示される画面例が示されています。履歴に残るのは確認日時、有効期限の年、セキュリティコード、取得元のカード種類です(デジタル庁)。

警察庁のQ&Aは、法人顧客の代表者の本人確認で、営業担当者が社用スマートフォンに入れたこのアプリにより客先訪問時にマイナンバーカードを読み取る例について、履歴の確認時刻を確認記録に記載すればよい一方、セキュリティコードだけでは書類を特定するに足りず、名称や記号番号なども記録する必要があるとしています(No.42、警察庁)。公的アプリはその場で確かめるツールで、自社システムへ連携する機能の案内は見当たりません(2026年10月時点)。業務端末に組み込めば、読み取りから記録、基幹システムへの反映までを一続きの作業として実現でき、転記も減らせます。

犯収法の確認で必要な項目と4情報

犯収法の読み取り項目と4情報。氏名・住居、4情報で読める、券面と照合する。生年月日、4情報で読める、券面と照合する。写真、4情報に含まれない、別の方法と組み合わせ
警察庁Q&A(No.11・No.16)をもとに整理。2027年4月1日施行。義務の対象は犯収法の特定事業者で、それ以外の事業者には運用品質の選択です。

犯罪収益移転防止法施行規則の改正により、2027年4月1日以降、特定事業者がICチップ付きの写真付き本人確認書類で対面の確認を行う場合は、提示を受けるとともにICチップの情報を読み取り、券面と照合します(警察庁)。照合は、書類の偽造や変造によるなりすましを防ぐ趣旨です(No.12)。マイナンバーカードはこの書類に当たり(No.5)、読み取る項目は少なくとも氏名・住居・生年月日・写真です(No.16)。

4情報で読めるのは氏名・住所・生年月日までで、写真は含まれません。この方式でマイナンバーカードを使うなら、顔写真まで読める方法か、運転免許証など他の書類にします。Q&Aは、ICチップ読み取りの手段として対面確認アプリ、地方公共団体情報システム機構の券面事項表示ソフトウェア、民間企業のアプリを挙げ(No.22)、公的個人認証による確認方法は対面でも使えるとしています(No.26)。

この義務は特定事業者の取引時確認に対するもので、配送、レンタカー、一般の小売などが同じ手順を採用する場合は、義務ではなく運用品質の選択になります。全体の手順は店頭でICチップを読み取る基本の手順、書類ごとの違いは本人確認書類には何が使えるかで整理しています。

配達の場面では、日本郵便が2027年4月1日から本人限定受取郵便の特定事項伝達型と基本型で、本人確認書類をICチップ付き・写真付きの4種類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書)に限定するサービスの見直しを公表しています(日本郵便)。公表資料は、確認に使う機器や手順までは示していません。

基幹システムへ渡す項目の決め方

警察庁のQ&Aは、対面で読み取ったICチップ情報をどこかへ送信する必要はなく(No.41)、ICチップ情報や読み取り時のログを確認記録に残すことも不要としています(No.39、警察庁)。読み取った後に送るかどうかは業務の必要で決めます。連携するなら、次のチェックリストで項目を絞ると、データの管理範囲が狭まり、セキュリティの面でも扱いやすくなります。

  • 予約や契約との照合に使う項目だけを送っているか
  • 照合結果、確認日時、担当者、書類の種類を記録できるか
  • 暗証番号の値、個人番号、ICチップの生データを送っていないか
  • 読み取れない、ロックされたといった失敗を区別できるか

再送やエラー処理の考え方はstera terminalとマイナ免許証の基幹システム連携も参考になります。

業務端末でマイナンバーカードの4情報を読み取るには

マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFCに対応したAndroid端末(業務用のハンディ端末やスマートフォン)で動く本人確認の業務アプリです。お客様がカードをかざし、暗証番号はお客様自身が入力します(stera端末はお客様側の画面のタッチパネル、Android端末は端末画面のテンキー)。スタッフは暗証番号を聞かず、控えません。マイナンバーカードは券面事項入力補助用の4桁の暗証番号で4情報(氏名・住所・生年月日・性別)を読み取り、個人番号は読み取りません。マイナ免許証は4桁の暗証番号で免許情報と顔写真を、従来のIC運転免許証は暗証番号1で本籍を除く記載事項を読み取り、暗証番号2も入力すると顔写真まで読み取れます。顔写真は端末画面に表示され、担当者が本人の顔と見比べられます。

このアプリは、暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像を基幹システムへ送りません。合意した項目だけをHTTPS POSTで基幹システムへ連携でき、認証はmTLS・OAuth2・HMAC署名から選べます。読み取った情報を外部へ送信しなくても端末画面での照合で確認は完結でき、警察庁Q&A No.41の「読み取ったIC情報をどこかへ送信する必要はない」という整理と整合します。在留カード・特別永住者証明書は券面の12桁の番号を入力して読み取り、旅券には対応していません。マイナンバーカードは、4桁の暗証番号では氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号を入力すると顔写真も読み取れます。犯罪収益移転防止法の取引時確認に使う場合は、読み取る項目(氏名・住居・生年月日・写真)と券面との照合を自社の確認手順に組み込めるかは、法務担当・顧問弁護士に確認してください。

1

マイナンバーカードを本人確認に使う場面と、読み取った4情報をどこに反映するかを整理する。

2

読み取りたい項目と、確認記録や基幹システムへの反映方法を決める。

3

使う端末(stera端末、またはNFCに対応したAndroid端末)と既存システムの連携可否を確認する。

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。

まとめ:読む項目と残さない項目を先に決める

使うのは4情報だけ、暗証番号はお客様が入力して残さない、顔写真が必要な手続きでは別の方法と組み合わせる、基幹へは必要な項目だけを渡す。この4点を先に決めてから端末の選定に進めば、店頭でも配達先でも運用の見直しを減らせます。

FAQ

よくある質問

Q. 券面事項入力補助の暗証番号とは何ですか。
マイナンバーカードを受け取ったときに本人が設定した4桁の数字で、個人番号と4情報(氏名・住所・生年月日・性別)を読み取るために使います。3回連続で間違えるとロックされ、再設定はお住まいの市区町村で行います。
Q. 券面事項入力補助で顔写真は読み取れますか。
読み取れません。顔写真の画像はICチップ内の券面APという別の領域に記録されています。ICチップの写真まで確認が必要な手続きでは、写真を読める方法や運転免許証など別の書類と組み合わせます。
Q. 民間事業者がICチップから個人番号を読み取ってもよいですか。
マイナンバーは法令や条例で定められた行政手続き以外では利用できず、その手続きに必要な場合を除き、民間事業者は収集・保管できないとされています。本人確認に使う場合は、個人番号を読み取らない・保存しない設計にし、4情報だけを使います。
Q. デジタル庁の対面確認アプリと業務端末への組み込みは何が違いますか。
対面確認アプリは、スタッフのスマートフォンでICチップを読み取り、顔写真などを表示してその場で確認するためのアプリです。業務端末に読み取りを組み込むと、照合結果の記録や基幹システムへの反映まで一続きの作業にできます。
Q. 犯収法の取引時確認は券面事項入力補助の4情報だけで足りますか。
2027年4月1日以降の対面の確認では、ICチップから少なくとも氏名・住居・生年月日・写真を読み取る必要があり、4情報には写真が含まれません。顔写真まで読める方法か別の書類を使い、自社の確認手順は法務担当に確認してください。