出張買取の依頼を受けて、お客様の自宅に査定スタッフが向かう。リビングで腕時計と指輪、ブランドのバッグを査定し、金額に納得してもらえた。ここで店頭と同じように身分証を見せてもらい、古物台帳に書く項目をその場でそろえられるかどうかが、出張買取の本人確認の分かれ目です。「出張料は無料、対応エリアは全国、最短で当日にお伺いします」という案内でサービスを広げる総合リサイクルショップや買取センターは増えていますが、店舗なら手元にある帳簿やコピー機が訪問先にはなく、本人が不在で家族が立ち会うこともあります。

古物営業法は、古物を買い受けるときに相手方の住所・氏名・職業・年齢を確かめる義務を古物商に課し、出張買取についてはさらに、古物を受け取れる場所と携帯するものを決めています。本記事では、古物営業法と施行規則、警察庁の解釈運用基準、特定商取引法の訪問購入の規定をもとに、訪問先で本人確認をどの方法と書類で行い、本人不在や書類不備のときにどう判断し、何を記録するかを整理します。店頭を含む確認方法の全体像と1万円未満の例外品目は、親記事の古物営業法の本人確認とはで解説しています。

結論:訪問先では「場所・書類・記録」を一度にそろえる

  • 出張買取は古物営業法の「行商」に当たり、古物商以外の人から古物を受け取れる場所は、営業所と取引の相手方の住所・居所に限られます(法第14条第1項)。訪問する担当者は許可証または行商従業者証を携帯し、求められたら提示します(法第11条)[e-Gov法令検索(古物営業法)]。
  • 本人確認の義務は店頭と同じ法第15条で、訪問先では運転免許証やマイナンバーカードなど「一を限り発行された」身分証明書等の提示を受ける方法が基本です(施行規則第15条第1項)。確認する相手方は現に取引の任に当たる自然人で、家族や法人の品物でも、その場で売る人本人を確かめます[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)][警察庁]。
  • 取引の年月日、品目と数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、とった確認の方法は、その場で古物台帳か買取伝票、または電磁的記録に残し、最終の記載から3年間保存します(法第16条・第18条)[e-Gov法令検索(古物営業法)]。
  • 訪問購入は特定商取引法の規制対象でもあり、不招請勧誘の禁止、書面の交付、8日間のクーリング・オフ、引渡しを拒めることの告知が本人確認と並ぶ現場の義務です[e-Gov法令検索(特定商取引法)]。貴金属等を現金200万円超で買い取るときは犯収法の取引時確認が重なり、2027年4月1日からは対面でICチップの読み取りが原則になります[警察庁][警察庁]。

出張買取でも本人確認が必要な理由

古物営業法の目的は、盗品等の売買の防止と速やかな発見です(第1条)。古物商は、古物を買い受け、交換し、または売却・交換の委託を受けようとするとき、相手方の真偽を確認するために、住所・氏名・職業・年齢の確認、署名のある文書の交付、電子署名付き記録の提供、施行規則で定める措置のいずれかをとらなければなりません(第15条第1項)[e-Gov法令検索(古物営業法)]。この義務は取引の場所を問わないため、店舗でも訪問先でも同じです。買い取った品物を店頭やオンラインで販売する商品にする以上、不正品の流通を止め、盗品が持ち込まれたときに誰から受け取ったかをたどれるようにすることが、古物営業法に基づく本人確認が必要な理由です。

対価の総額が1万円未満の取引と、自分が売却した物品をその相手方から買い戻す場合は、確認が免除されます(第15条第2項)。この1万円は消費税を含まない額で、一度に持ち込まれた物品の対価を足し合わせて判断します[警察庁]。出張買取では家具や家電、衣類をまとめて引き取ることが多く、1点ごとの金額は小さくても総額では1万円以上になるのが普通です。また、自動二輪車・原動機付自転車やゲームソフト、CD・DVDなど、一部の品目は金額にかかわらず確認が必要です(施行規則第16条第2項)[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)]。例外品目の一覧と判定の順序の詳細は、親記事の該当節にまとめています。

出張買取は「行商」:受け取れる場所と携帯するもの

出張買取で古物を受け取れる場所と携帯するもの。相手方の住所・居所、営業所以外で受け取れる場所、法第14条第1項。仮設店舗、営業日の3日前までに届出、催事場・車両の出店など。携帯するもの、許可証か行商従業者証、求められたら提示する
古物営業法第11条・第14条、施行規則第14条の2、警察庁の解釈運用基準(2026年5月)による。

古物営業法でいう行商は、古物商が営業所以外の場所で行う古物の取引で、取引の相手方の住所や居所で行う売買、仮設店舗での売買などが含まれます(法第5条第1項第5号)[警察庁]。出張買取をするには、古物商の許可を受けるときの許可申請書に行商をする者である旨を記載しておく必要があり、記載していない古物商が出張買取を始めるときは変更届出書の提出が必要です[警察庁]。許可証に記載された行商の可否は、出張の対応エリアを広げる前に確かめておきます。

受け取れる場所には制限があります。古物商は、営業所または取引の相手方の住所若しくは居所以外の場所で、古物商以外の者から買い受けのために古物を受け取ってはなりません(法第14条第1項)。駅前の喫茶店やコインパーキングで待ち合わせて品物を受け取る、相手方の勤務先で受け取るといった方法は、仮設店舗の届出がない限り認められません。例外は仮設店舗で、営業する日の3日前までに日時と場所を管轄の公安委員会(所轄警察署経由)に届け出たときは、その場所で古物を受け取れます(法第14条第1項ただし書、施行規則第14条の2)。届け出る日時と場所は、警察署が立入りできる程度に具体的である必要があります[e-Gov法令検索(古物営業法)][e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)][警察庁]。

訪問する担当者が携帯するものも決まっています。古物商本人が行商をするときは許可証を、従業者に行商をさせるときは行商従業者証を携帯させ、取引の相手方から提示を求められたときは提示しなければなりません(法第11条)。営業所・相手方の住所・居所以外で受け取る法第14条第1項の違反は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第32条)、確認義務の第15条第1項や帳簿の保存の第18条第1項の違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第33条)、許可証・行商従業者証の携帯義務の違反は10万円以下の罰金(法第35条)の対象です[e-Gov法令検索(古物営業法)]。出張買取の手続きを決めるときは、受け取る場所、携帯するもの、本人確認、記録の4点を一度に点検しておくと、担当者ごとのばらつきを防げます。

訪問先で使える確認方法と書類

訪問先で提示を受ける書類と確認の要点。運転免許証など、住所・氏名・生年月日を読む、写真と本人を見比べる。マイナンバーカード、表面だけで確認する、個人番号は控えない。使えない書類、パスポート・住民票の写し、住所を証せない・複数発行
古物営業法施行規則第15条第1項の身分証明書等は、一を限り発行された書類に限られる。

訪問先は対面の取引なので、確認の方法は店頭と同じ法第15条第1項の各号から選びます。現実に使えるのは次の3つです。

1

身分証明書等の提示を受ける(第1号、施行規則第15条第1項)

2

住所・氏名・職業・年齢を書いて署名した文書の交付を受ける(第2号、施行規則第15条第2項)

3

タッチペンなどの器具で、担当者の面前で氏名を筆記してもらい、端末の画面に表示する(第4号、施行規則第15条第3項第10号)

身分証明書等とは、身分証明書、運転免許証、個人番号カードその他の、相手方の住所・氏名・年齢または生年月日を証する資料で、一を限り発行または発給されたものに限られます(施行規則第15条第1項)[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)]。署名した文書の方法は、担当者の面前で万年筆やボールペンで明瞭に書いてもらうことが条件で、記載が真正でない疑いがあるときは身分証明書等の提示を受けるなどして確かめます(同条第2項)。タッチペンの方法も面前で行い、指で書かせる方法やキーボードでの入力は認められません[警察庁]。職業は運転免許証にもマイナンバーカードにも載っていないため、どの方法でも本人からの申告が要ります。

書類訪問先での扱い確認のポイント
運転免許証・マイナ免許証身分証明書等に当たる住所・氏名・生年月日を読み、写真と本人を見比べる。有効期限内か
マイナンバーカード身分証明書等に当たる表面で確認する。裏面の個人番号は書き写さず、コピーも取らない
在留カード・特別永住者証明書身分証明書等に当たる在留期間の満了日を確かめる。偽造が多いため券面だけで判断しない
健康保険証・資格確認書など写真のない書類住所・氏名・生年月日があれば身分証明書等に当たり得る本人との照合ができないため、署名文書など別の方法を併用する
パスポート身分証明書等に含まれない所持人記入欄の住所は発行元の了承なく書けるため、住所を証する資料にならない
住民票の写し・印鑑登録証明書対面の提示には使えない複数発行される書類で、非対面の方法で送付を受ける書類

2026年11月時点の古物営業法施行規則と警察庁の解釈運用基準による[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)][警察庁]。

提示は原本で受けます。スマートフォンで撮影した画像や、あらかじめ用意されたコピーの提示では、身分証明書等の提示を受けたことになりません。マイナンバーの通知カードは2020年5月に新規発行と記載の変更が終わっており、住所や氏名が最新とは限らないため、本人確認書類として扱わない運用にしておきます。電気・ガス・水道などの公共料金の領収書は、非対面の方法で住所を補う補完書類(発行から6ヶ月以内のもの)として定められているもので、対面で提示を受ける身分証明書等には当たりません(施行規則第15条第3項第5号)[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)]。写真付きのタイプの書類を必須にするか、写真のない書類は署名文書と併用して確認を可能にするかは、店のルールとして決めておきます。

身分証の住所と訪問先が違うときは注意が必要です。法第14条が受け取りを認める場所は相手方の住所か居所なので、引っ越し後に住所変更をしていない運転免許証を示されたら、訪問先が現住所(住民票の住所)か居所(現に生活している場所)であることを確かめ、申告された住所を帳簿に書きます。現住所を証明できる書類がその場にない場合、身分証明書等の提示を受ける方法では、相手方以外の者で身元を確かめるに足りる者に問い合わせる方法も認められています(施行規則第15条第1項)[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)]。

対面の確認では、書類のコピーの保存は条件になっていません。非対面の宅配買取で写しの送付を受ける方法に保存の条件が付いているのとは違います。コピーを取る運用にする場合は、マイナンバーカードの裏面を含めないこと、保存期間と廃棄の方法を決めておくことが個人情報保護の面で重要です。

本人不在・家族の立会い・書類がないときの判断

出張買取では、本人が高齢で施設に入っている、遠方に住む子が実家の整理を頼んでくる、法人が備品を処分するといったケースがあります。古物営業法で確認する相手方は、現に取引の任に当たっている自然人です。売買契約の当事者が法人でも、本人確認はその場で取引に当たる担当者に対して行います[警察庁]。家族が品物を持ち込んで売るときも同じで、その場で売る人の住所・氏名・職業・年齢を確かめ、帳簿にはその人を相手方として記載します。

状況相手方として確認する人現場での判断
本人が在宅し、本人が売る本人身分証明書等の提示を受け、訪問先が住所・居所と一致するかを見る
本人は存命だが不在で、同居の家族が売る立ち会う家族家族の身分証明書等で確認する。品物の処分について本人の了解があるかを聞き取る
遠方に住む子が実家で親の品物を売る立ち会う子受け取る場所は相手方の住所・居所に限られるため、実家が子の居所といえるかを確かめ、迷うときは所轄警察署に相談する
遺品を相続人が売る立ち会う相続人相続人であることの確認は古物営業法の要件ではないが、不正品の疑いがないかの判断材料として聞き取る
法人の備品を担当者が売る取引に当たる担当者担当者の身分証明書等で確認する。法人の名称と担当者の関係を申込書に残す

本人確認書類を持っていない、有効期限切れの運転免許証しかないといった場合、身分証明書等の提示を受ける方法は使えません。署名した文書の交付を受ける方法に切り替えることはできますが、記載が真正でない疑いがあれば確認し直す必要があり、写真のない書類では本人との照合もできません。査定だけ済ませて後日、書類がそろってから受け取る、あるいは買取不可と決めるルールを事前に決めておくと、担当者がその場で迷いません。多くの買取店が利用者向けの案内に「本人確認書類がない場合は買取できません」と書いているのは、この判断を訪問前に済ませるためです。古物営業法は年齢による制限を定めていませんが、未成年者との契約が取り消される可能性があることから、18歳未満や高校生からの買取を各店の規約で断っている店が多いのも同じ理由です。

受付の段階で「当日は本人確認書類の原本をご用意いただき、ご本人様に立ち会っていただくようお願いします」と伝え、立ち会っていただけない場合の扱いも案内しておけば、お客様も気軽に質問でき、安心して当日を迎えられます。訪問中に書類をご提示いただいた時点で、お住まいが住所・居所に当たるかを確かめる流れにすると、受け取る場所の確認も同時に済みます。

偽造書類・なりすまし・不正品への備え

訪問先は店舗より明るさや時間の制約があり、券面を見比べる目視の確認には限界があります。偽造された運転免許証やマイナンバーカード、在留カードは精巧になっており、券面の確認だけでは見抜けないことがあります。券面の見分け方は偽造免許証とは?とマイナンバーカードの偽造の見分け方、在留カード等のICチップとは?で解説しています。

ICチップの読み取りは、券面の目視を強化する偽造書類への備えとして有効です。運転免許証・マイナンバーカード・在留カードのICチップには券面の情報と顔写真が記録されており、読み取った情報と券面の記載が合わなければ、書類が偽変造されている可能性があります[警察庁]。古物営業法の確認方法はあくまで身分証明書等の提示を受けることで、ICチップの読み取りは法律上の義務ではありません。ただ、提示を受けたうえで読み取りを加えることは、相手方の真偽を確認するという法の趣旨に沿った運用です。

盗品の疑いがある品物への対応も決めておきます。古物商は、買い受けようとする古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに警察官に申告しなければなりません(法第15条第3項)。不正品は、犯罪に当たる行為によって得られた物で、盗品等より広い概念です[e-Gov法令検索(古物営業法)][警察庁]。訪問先で品物の出所が説明できない、本人以外の名前が刻印されている、正当な理由なく数回に分けて売ることを希望する、といった事情があれば、その場で買い取らず、店舗に持ち帰って管理者が判断する流れにします。

その場で残す記録:古物台帳と買取申込書

訪問先でその場に残す記録。古物台帳、年月日・品目・特徴、相手方の4項目と確認方法。保存、最終の記載から3年間、営業所に備え付ける。買取申込書、職業・年齢の申告、署名は担当者の面前で
古物営業法第16条・第18条。取引伝票は帳簿に準ずる書類として取引の順にとじ合わせる。

古物を受け取ったときは、その都度、取引の年月日、古物の品目と数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、とった確認の方法の区分(身分証明書等による確認などではその区分と方法)を帳簿等に記載するか、電磁的方法で記録します(法第16条)。「その都度」は受け取りのたびごとの意味で、訪問から帰ってから1週間分をまとめて書くことは認められません[e-Gov法令検索(古物営業法)][警察庁]。

訪問先で使いやすいのは、取引伝票のように取引ごとに記載できる書類です。帳簿に準ずる書類として認められており、営業所に戻ってから取引の順にとじ合わせます(施行規則第17条第2項・第3項)。タブレットや買取システムに入力する電磁的記録も、5つの事項を網羅していれば帳簿に当たります。帳簿等は最終の記載をした日から3年間、営業所に備え付けて保存し、紛失や破損があれば直ちに所轄警察署長に届け出ます(法第18条)[e-Gov法令検索(古物営業法施行規則)][e-Gov法令検索(古物営業法)]。

買取申込書は、職業と年齢の申告、品物の所有者と処分の了解、本人以外が売るときの立場を1枚で残せる書式にしておくと、確認の記録と特定商取引法の書面の両方に使えます。確認した書類の種類と記号番号を書く欄、担当者の氏名、訪問した場所の欄を加えておけば、後から「どの書類でどこで確認したか」をたどれます。

訪問購入のルールも同時に守る(特定商取引法)

営業所等以外の場所で物品の売買契約の申込みを受け、または契約を結んで行う購入は、特定商取引法の「訪問購入」に当たります(第58条の4)。自動車(二輪を除く)、携行が容易でない家庭用電気機械器具、家具、書籍、有価証券、CD・DVDなどの記録媒体は対象外ですが(施行令第34条)、貴金属や時計、ブランド品、衣類の出張買取は対象です[e-Gov法令検索(特定商取引法)][e-Gov法令検索(特定商取引法施行令)]。本人確認と並んで、現場で守る義務は次のとおりです。

  • 勧誘に先立って、業者の氏名または名称、勧誘の目的、物品の種類を明らかにする(第58条の5)
  • 勧誘の要請をしていない人の自宅で勧誘したり、勧誘を受ける意思を確かめたりしない(不招請勧誘の禁止、第58条の6第1項)。依頼を受けて訪問した場合も、勧誘の前に勧誘を受ける意思を確認し、断られたら再勧誘しない(同条第2項・第3項)
  • 申込みを受けたとき・契約を結んだときは、物品の種類、購入価格、代金の支払時期と方法、引渡時期と方法、クーリング・オフと引渡し拒絶に関する事項などを書いた書面を交付する(第58条の7・第58条の8)
  • 相手方から直接物品の引渡しを受けるときは、クーリング・オフ期間中は引渡しを拒めることを告げる(第58条の9)
  • 相手方は書面を受け取った日から8日以内であれば、書面または電磁的記録で申込みの撤回・契約の解除(クーリング・オフによるキャンセル)ができ、その間は物品の引渡しを拒める(第58条の14・第58条の15)。すでに代金の支払いを受けていれば、返還の費用と利息は業者の負担になる
  • 勧誘や引渡しの際に、実際より高く買い取るかのように購入価格について事実と違うことを告げる、威迫して困惑させるといった行為は禁止(第58条の10)
  • 期間中に第三者へ物品を引き渡したときは、遅滞なく相手方に通知し、第三者にもクーリング・オフの可能性を通知する(第58条の11・第58条の11の2)

消費者庁のガイドでは、査定の依頼を受けて訪問した際に、依頼された範囲を超えて別の品物の勧誘をすることも不招請勧誘に当たるとされています[消費者庁]。違反には業務改善の指示や業務停止命令があります(第58条の12・第58条の13)。相手方が営業のために結ぶ契約など適用除外もありますが(第58条の17)、個人宅で買取を行った取引は原則として規制の対象と考えて手順を組みます。

貴金属等で代金が200万円を超えるとき:犯収法と2027年4月1日からのICチップ読み取り

金やプラチナ、宝石などの売買を業として行う古物商や質屋は、犯罪収益移転防止法(犯収法)の特定事業者「宝石・貴金属等取扱事業者」に当たり、代金の支払が現金で200万円を超える売買契約を結ぶときに取引時確認が必要です[警察庁]。出張買取で金地金やジュエリーをまとめて買い取り、現金で支払う場合がこれに当たります。確認する事項は本人特定事項(氏名・住居・生年月日)、取引を行う目的、職業で、確認記録と取引記録を7年間保存します。

2026年3月6日に公布された犯収法施行規則の改正命令により、2027年4月1日からは、対面でICチップ付きの写真付き本人確認書類の提示を受けたときは、ICチップの情報を読み取って画面に表示する方法が原則になります[警察庁]。警察庁のQ&Aでは、少なくとも氏名・住居・生年月日・写真を読み取り(No.16)、券面と照合する必要があるとされ(No.12)、施行前に読み取りを始めても差し支えありません(No.1)[警察庁]。訪問先で200万円を超える貴金属等の買取を行う店は、施行日までに持ち運べる読み取り端末と手順を用意しておく必要があります。対象取引の判定、古物台帳と確認記録の関係、疑わしい取引の届出は貴金属の買取で200万円を超えるときの本人確認は?で解説しています。

訪問先で持ち運べる端末でICチップを読み取るには

株式会社amsのマイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、Androidのスマホ・業務用ハンディ端末で動く本人確認の業務アプリです。店舗ではstera端末で、出張買取では担当者が持ち歩くAndroid端末で、お客様がカードを端末の背面にかざし、暗証番号はお客様自身が画面のテンキーで入力します。担当者は暗証番号を聞かず、控えも一切取りません。対応機種はNFCでICチップを読み取れる機種に限られ、機種は導入時に相談できます。

読み取れるのは、マイナ免許証(4桁の暗証番号で免許情報と顔写真)、従来の運転免許証(暗証番号1で本籍を除く記載事項、暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別、券面の14桁の番号で顔写真も。個人番号は読み取りません)、在留カード・特別永住者証明書(券面右上の12桁の番号で在留資格・在留期間などの記載事項と顔写真。氏名は文字で表示しません)です。旅券には対応していません。読み取った情報と顔写真は端末の画面に表示され、担当者がその場で券面と本人に見比べられます。読み取り結果のうち合意した項目だけを買取システムや古物台帳のシステムへ連携でき、暗証番号の値や顔写真の画像は送りません。

身分証明書等の提示を受けたうえでICチップを読み取る運用を、古物営業法の確認方法としてどう位置づけるか、犯収法の取引時確認の手順にどう組み込むかは、法務担当や顧問弁護士に確認してください。導入にあたっては、次の順で進めると出張買取の現場に合います。

1

出張買取の件数、持ち込まれる品目、現金で200万円を超える貴金属等の買取の有無を整理し、訪問前の準備を見直す

2

訪問先で読み取る書類と、古物台帳・買取申込書に残す項目を決める

3

担当者に持たせるAndroid端末と、既存の買取システムとの連携可否を確認する

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む

現場でよくある質問

お客様から受付や訪問中に受ける質問のうち、担当者が答えに迷いやすいものをまとめます。

本人確認書類のコピーは必ず取らなければなりませんか。 対面で身分証明書等の提示を受ける方法では、コピーの保存は条件ではありません。帳簿に住所・氏名・職業・年齢と確認の方法を書けば足ります。コピーを取るなら、マイナンバーカードの裏面は含めず、保存と廃棄のルールを決めておきます。

宅配買取と出張買取で確認方法は違いますか。 宅配買取は非対面なので、身分証明書等の写しの送付と転送しない郵便の到達確認など、施行規則第15条第3項の方法を使います。出張買取は対面なので、提示を受ける方法か面前の署名が基本で、写しの送付による方法は使いません。同じサービスを利用するお客様でも、申し込みの方法によって用意していただく書類が変わるため、受付の案内を分けておきます。

査定だけで買い取らなかったときも記録は必要ですか。 古物営業法の確認と帳簿への記載は、古物を買い受けるなどの取引をしようとするときの義務です。査定だけで受け取らなければ古物営業法上の記載義務はありませんが、特定商取引法の不招請勧誘の禁止と意思確認は訪問の時点で守る必要があります。

出張買取の担当者が許可証を持っていないと言われました。 従業者が行商をするときは行商従業者証を携帯し、求められたら提示する義務があります(法第11条)。お客様から求められたときに示せるよう、訪問前に携帯を確かめる手順を入れておきます。

まとめ:出張買取の本人確認は「場所・書類・記録」の順に

出張買取は古物営業法の行商で、古物を受け取れる場所は営業所と相手方の住所・居所に限られ、担当者は許可証か行商従業者証を携帯します。訪問先の本人確認は、一を限り発行された身分証明書等の提示を受ける方法を基本に、現に取引に当たる人を確認し、住所・氏名・職業・年齢と確認の方法をその場で古物台帳に残して3年間保存します。訪問購入の書面交付とクーリング・オフ、貴金属等の現金200万円超の取引時確認が重なる点も手順に入れておくと、2027年4月1日からの対面のICチップ読み取りにも無理なく移行できます。

FAQ

よくある質問

Q. 出張買取で古物を受け取れる場所はどこですか。
古物営業法第14条第1項により、営業所と取引の相手方の住所・居所に限られます。喫茶店や駐車場での受け取りは、仮設店舗として営業日の3日前までに日時と場所を公安委員会へ届け出た場合を除いて認められません。
Q. 出張買取の本人確認はどの方法で行いますか。
店頭と同じ古物営業法第15条の方法で、訪問先では運転免許証やマイナンバーカードなど一を限り発行された身分証明書等の提示を受ける方法が基本です。担当者の面前で住所・氏名・職業・年齢を書いて署名してもらう方法や、タッチペンで氏名を筆記してもらう方法もあります。職業は本人からの申告で確認します。
Q. 本人が不在で家族が立ち会う場合は誰を確認しますか。
確認する相手方は現に取引の任に当たっている自然人なので、その場で売る家族を確認し、帳簿にもその人を相手方として記載します。受け取る場所が相手方の住所・居所といえるかを確かめ、迷うときは所轄の警察署に相談します。
Q. 出張買取ではクーリング・オフの説明も必要ですか。
個人宅での貴金属・時計・ブランド品などの買取は特定商取引法の訪問購入に当たり、書面の交付、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフ、その間は物品の引渡しを拒めることの告知が必要です。自動車や家具、書籍、CD・DVDなどは対象外です。
Q. 出張買取でICチップの読み取りは義務ですか。
古物営業法の確認方法は身分証明書等の提示を受けることで、ICチップの読み取りは義務ではありません。ただし、金やプラチナなどの貴金属等を現金200万円超で買い取るときは犯収法の取引時確認が必要で、2027年4月1日からは対面でICチップの読み取りと券面の照合が原則になります。