口座開設の申込書と運転免許証を受け取り、券面と顔を見比べて手続きを進める。銀行の窓口で長く続いてきたこの本人確認が、2027年4月1日に変わります。犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則の改正で、対面の取引時確認は、写真付きの本人確認書類を見せてもらうだけでなく、ICチップに記録された氏名・住居・生年月日・写真を装置で読み取って画面に表示し、券面と照らし合わせる方法が原則になるためです。

非対面の口座開設では大手行が免許証の画像による確認をすでにやめ、免許証しか持たないお客様には来店を案内しています。窓口に来る免許証のお客様が増える一方で、その窓口の確認方法が半年後に変わる。本記事では、施行令・施行規則の条文と警察庁のQ&Aをもとに、銀行の窓口と渉外先で何がどう変わるのか、どの取引と書類が対象になり、IC付きの書類を持たないお客様や既存のお客様をどう扱うのか、そして先行している銀行が何をしているのかを整理します。

結論:2027年4月1日から、窓口の本人確認はICチップの読み取りが原則になる

犯収法の特定事業者である銀行は、口座開設などの特定取引を行う際に、顧客の本人特定事項(氏名・住居・生年月日)を主務省令で定める方法で確認する義務があります(取引時確認)。その方法を定める施行規則第6条が改正され、2027年4月1日から、対面で写真付き・ICチップ付きの本人確認書類を使う場合は、書類の提示を受けるとともに、ICチップに記録された氏名・住居・生年月日・写真の情報を読み取り装置で読み取って映像面に表示させる方法になります(新規則第6条第1項第1号イ)[e-Gov法令検索]。

警察庁のQ&Aは、この読み取りの趣旨を「読み取ったICチップ情報と券面情報とを照らし合わせることで本人確認書類の偽変造等によるなりすましを防ぐ」ことだとし、読み取った情報と券面との照合を行う必要があるとしています(No.12)[警察庁]。つまり窓口の作業は、「券面と顔を見る」から「ICを読み、画面と券面と顔を照らす」に変わります。

ICチップのない写真付き書類や、写真のない書類で申し込むお客様には、提示に加えて取引関係文書(預金通帳など)を転送不要の書留郵便等で住居に送る方法が必要になります(同号ロ)。既に取引時確認を終えているお客様との取引は、確認記録を保存し、同一人であることを確かめていれば改めて確認する必要はありません(法第4条第3項)[e-Gov法令検索]。施行日を待たずにICチップの読み取りを始めることもできます(Q&A No.1)。

なぜ対面の本人確認方法が厳格化されるのか:背景と政府・金融庁の対策

警察庁は2025年12月4日、口座開設などを対面で行う際にICチップによる本人確認を求める施行規則の改正案を公表しました。時事通信によれば、警察庁は特殊詐欺の被害が過去最多で、本人確認書類を偽造・変造して開設された口座が悪用されていると説明しています。偽造免許証による金融口座の不正開設は2024年に67件検挙され、偽造の技術が上がったことで、対面でもなりすましを見抜くのが難しくなっていることが背景とされています(時事通信、2025年12月4日)[時事通信]。日本経済新聞も、政府の犯罪対策閣僚会議が本人確認をマイナンバーカードなどに一本化する方向を示していたと報じています[日本経済新聞]。

金融機関への要請も重ねられてきました。警察庁と金融庁は2025年9月12日、全国銀行協会など9団体に「法人口座及びインターネットバンキングの利用を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化について」を出し、各種の対策を講じていても犯罪の手口が巧妙化・多様化していることを踏まえ、口座開設時の不正利用の防止などを求めています[警察庁]。券面の偽造や改ざんを目で見抜く方法には限界があり、ICチップの情報と券面を照らし合わせる本人確認方法への見直しは、この流れの中にあります。偽造書類への窓口での備えは偽造の本人確認書類による不正な口座開設を窓口で防ぐには?で解説しています。

銀行の窓口で取引時確認が必要になる取引

銀行の窓口で取引時確認が必要になる主な取引。口座開設など、預金契約の締結、貸金庫・保護預りも。現金の受払い、200万円超の現金、現金振込は10万円超。融資・両替、金銭の貸付け契約、200万円超の両替
犯罪収益移転防止法施行令第7条第1項第1号と全国銀行協会のQ&Aによる。取引時確認済みの顧客との取引は、なりすましの疑いなどがなければ対象外。

取引時確認では、本人特定事項のほか、取引を行う目的や職業(法人は事業の内容と実質的支配者)も確認します(法第4条第1項)[e-Gov法令検索]。対象になる取引は施行令第7条第1項第1号に列挙されています。銀行の窓口に関係するものを、全国銀行協会の平易な言い換えと合わせて示します[e-Gov法令検索][全国銀行協会]。

施行令第7条第1項第1号窓口での場面
イ 預金の受入れを内容とする契約の締結普通預金・定期預金などの口座開設
エ 貸金庫の貸与、サ 保護預り貸金庫・保護預りの契約
ケ 200万円を超える現金等の受払い(為替取引や自己宛小切手の振出しを伴う現金は10万円超)200万円超の現金入出金、10万円超の現金振込
コ 口座を開設せずに為替取引を継続的・反復的に行う契約送金サービスの契約
カ 金銭の貸付け・貸借の媒介を内容とする契約の締結住宅ローン・カードローンなどの融資
キ 200万円を超える両替、旅行小切手の販売・買取り外貨両替

このほか、取引時確認済みの顧客との取引でも、なりすましや本人特定事項を偽っている疑いがある取引、疑わしい取引、犯罪収益移転危険度調査書で厳格な顧客管理が必要とされた国・地域に関わる取引などは、改めて確認の対象になります。窓口の手順を見直すときは、まず自店で扱う取引のうちどれが対象で、どれが既存顧客の済み確認で足りるのかを、施行令と全銀協Q&Aの区分で棚卸しすることが出発点です。

窓口の確認方法はどう変わるか:改正前と2027年4月以降

2027年4月1日から変わる窓口の本人確認。IC付き・写真付き、提示+ICの読み取り、券面と照合して完了。IC無し・写真付き、提示を受ける、転送不要郵便を送る。IC付き・写真なし、ICを読み取る、転送不要郵便を送る
犯収法施行規則第6条第1項第1号イ・ロ(2027年4月1日から施行)と警察庁Q&A No.6・7による。旅券は氏名・生年月日・写真を読み、住居は補完書類で確認する。

改正の概要として、対面の方法を現行の施行規則と2027年4月1日施行の新規則で比べた一覧です[e-Gov法令検索][e-Gov法令検索]。

提示を受ける書類2027年3月31日まで2027年4月1日から
写真付き・ICチップ付き(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書、旅券など)提示を受ける(イ)提示を受け、ICチップの氏名・住居・生年月日・写真を装置で読み取り映像面に表示し、券面と照合する(新イ)
写真付き・ICチップなし(身体障害者手帳、運転経歴証明書、乗員手帳など)提示を受ける(イ)提示を受け、住居あてに取引関係文書を転送不要郵便等で送る(新ロ(1))
写真なし・ICチップ付き(16歳未満の在留カード、1歳未満のマイナンバーカードなど)提示+転送不要郵便等(ロ)ICチップの氏名・住居・生年月日を読み取り、転送不要郵便等で送る(新ロ(2))
住民票の写し・印鑑登録証明書など写真のない書類提示+転送不要郵便等(ロ)提示+転送不要郵便等(新ロ(1))

新規則で「特定半導体集積回路付き本人確認書類」と呼ばれる書類は、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券等です(Q&A No.5)。旅券はICチップに住居が記録されていないため、読み取るのは氏名・生年月日・写真で、住居は現在の住居が記載された他の本人確認書類か補完書類(発行から6か月以内の住民票の写しなど)の提示を受けて確認します(第6条第2項、Q&A No.9〜11)。2020年2月3日以前に発行された旅券で所持人記入欄に住居が書かれていれば、この追加確認は不要です(No.8)。

この改正の影響は銀行に限りません。施行規則第6条は特定事業者に共通する確認の方法を定めているため、宅地建物取引業者が扱う不動産の売買や、貴金属等の売買など、ほかの特定事業者の対面確認にも同じ方法が及びます。銀行グループの証券会社や保険会社、信託銀行の窓口でも、自社の手順を同じように見直す必要が出てくる可能性があります。

IC付きの書類を持たないお客様への転送不要郵便は、口座開設なら通帳やキャッシュカードの郵送で対応できますが、その場で取引を完結できなくなります。マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI、署名用電子証明書)を使う方法(同号ヌ)は、非対面(オンライン)向けと思われがちですが対面でも使えます(Q&A No.26)。窓口での読み取りに加えて、公的個人認証を併用する銀行もあります。

本人確認書類ごとのICチップの読み方

ICチップの読み取りには、書類ごとに入力するものと読める項目が違います。窓口での案内と手順書に反映しておく必要があります。

書類入力するものICから読む項目(2027年4月以降に必要なもの)
運転免許証(従来型)暗証番号1(氏名・生年月日・住所など)と暗証番号2(本籍・写真)の2組氏名・住居・生年月日・写真
マイナンバーカード券面事項入力補助用の暗証番号(4桁)で氏名・住所・生年月日・性別。写真まで読むには券面の番号(生年月日・有効期限・セキュリティコードの14桁)を入力する方式氏名・住居・生年月日・写真
在留カード・特別永住者証明書券面の12桁の番号氏名・住居・生年月日・写真(券面画像として記録)
旅券券面の機械読取領域の情報氏名・生年月日・写真(住居は別の書類で確認)

運転免許証は、写真を読むために暗証番号を2組とも入力する必要があり、警察庁のチラシも「運転免許証は2つの暗証番号を入力」と案内しています[警察庁]。暗証番号を覚えていないお客様への対応は、本人確認で暗証番号が分からないときの対応で整理しています。書類ごとの方式の違いは本人確認書類4種類のICチップ読み取り方式の違いが詳しいので、手順書を作るときに参照してください。

読み取りに使う機器には、NFCを搭載したスマートフォンやタブレット、パソコンにつなぐICカードリーダー、決済端末など各種があり、各社が提供する製品によって読める書類や機能が違います。運転免許証の暗証番号2組の入力や、マイナンバーカードの券面の14桁の入力に対応しているかは、導入前に確かめておくことが重要です。

住所変更後に裏面へ新住所が記載され、ICチップは旧住所のままという運転免許証や在留カードがあります。この場合は、券面の新住所を確認するとともに、ICの旧住所と券面の旧住所が一致することを確かめるなどして住居を確認すればよく、第6条第2項の追加確認は要りません(Q&A No.13)。ICの一部が「●」などで判別できない例外的な場合も、券面とICが一致していることを合理的な範囲で確認できれば使えます(No.16)。

警察庁Q&Aで確かめる窓口と渉外の実務論点

警察庁のQ&Aには、銀行の窓口・渉外の手順を決めるうえで直接効く回答が並んでいます[警察庁]。

  • 表示する装置: 読み取ったICの情報は、読み取り装置とは別の端末の画面に表示しても構いません。ただし、照合ができる大きさ・形で表示する必要があります(No.14)。
  • 読み取り端末は銀行側が用意する: 不正なソフトウェアによるなりすましを防ぐため、顧客のスマートフォンではなく、事業者が準備した端末で読み取ります。顧客が持参した装置を認めない取扱いも許されます(No.14・15)。
  • 装置の不具合: 読み取り装置が故障したときは、合理的な期間内に読み取りを行えば取引時確認を完了できます(No.18)。窓口の予備機と、復旧後に読み取る手順を決めておきます。
  • 渉外先での読み取り: 営業担当者が訪問先で提示を受けてICを読み、本店の担当者が後から確認する運用でも、提示を受ける者と確認する者が同一である必要はありません。確認は合理的な期間内に、券面との照合を適切に行います(No.19)。
  • 代理人・法人の代表者: 委任代理人が来店した場合は、委任者と代理人の双方の本人確認書類のICを読み取るのが原則です(No.23)。法人取引の代表者等も同じで、IC無しの書類なら代表者等の住所への転送不要郵便が必要になります(No.35・36)。
  • ハイリスク取引: マイナンバーカードをICの読み取りで確認した顧客について追加の確認が必要になったときは、運転免許証の券面確認で足ります(No.37)。
  • 確認記録: 記録の作り方と記録事項は従来どおりで、ICの情報やログ、照合したことの記録は求められません。読み取りログを残すのは自主的な取組です(No.39)。読み取り結果の画面を印刷したものは本人確認書類の「写し」に当たらず、提示を受けた日時の記録、または日付の記録と写し(券面のコピー)の保管という従来の扱いが続きます(No.40)。読み取ったICの情報をホストなどへ送信する義務もありません(No.41)。デジタル庁の対面確認アプリを使う場合、アプリの履歴の時刻を提示の時刻として記録すればよく、セキュリティコードだけでなく書類の名称・記号番号も記録します(No.42)。

これらを踏まえると、窓口の確認記録のフォーマットは大きく変えずに済み、変わるのは「読む・照らす」の作業と、その手順書です。なお、ICチップから取得した氏名・住所・顔写真は個人情報なので、ログや画像を自主的に残す場合は、個人情報保護法に沿って利用目的を示し、保存期間と閲覧できる担当者を決めておきます。読み取りから照合、記録までの流れは対面本人確認でICチップを読み取る手順にまとめています。

既存のお客様、施行前の前倒し、窓口以外の拠点

銀行にとって最も多い場面は、既に口座を持つお客様の来店です。なぜ既存のお客様までICを読み直さなくてよいかというと、取引時確認済みの顧客との取引は、確認記録を保存し、通帳やキャッシュカードと暗証番号、本人しか知り得ない事項などで同一人であることを確かめていれば、2027年4月以降も改めてICを読む必要はありません(法第4条第3項)。施行前にIC付きの写真付き書類の提示を受けて本人確認を行い、記録を残している場合も、施行後は済み確認で足ります(Q&A No.1)。施行日をまたぐ取引で、書類の提示は施行前、取引関係文書の送付が施行後になる場合も、送付だけを施行後に行えば完了します(No.2)。

警察庁のチラシは「金融機関等の判断で先行実施している場合があります」と利用者に案内しており、施行日前の読み取りは制度上も想定されています[警察庁]。前倒しで始める銀行は、お客様への周知文に「法令の施行は2027年4月1日、当行は先行して実施」と書き分けておくと、窓口での説明がぶれません。

窓口以外にも対面の確認は起きます。渉外担当者が顧客の自宅や法人の事務所で口座開設や融資の手続きをする場合、出張所やローンプラザ、休日営業の相談拠点、グループの保険代理店などです。これらはいずれも「対面」で、2027年4月以降は同じ読み取りが必要になります。読み取り端末を営業店の専用装置に限ると、こうした拠点が窓口へ誘導するしかなくなるので、持ち運べる端末の手当ても一緒に検討します。訪問先での手順は訪問先の本人確認とICチップ読み取りの方法、端末の選び方は本人確認のICチップ読み取り端末を比較を参照してください。

先行している銀行の動き

2026年10月時点で公表されている金融機関の動きを、時系列で整理します。

時期動き出典
2025年12月5日〜2026年1月3日警察庁が対面のIC読み取りを原則とする施行規則改正案の意見公募警察庁Q&A
2026年3月16日千葉興業銀行が一部拠点で店頭のIC読み取りによる本人確認を開始、5月から全店へ。公的個人認証も併用IT Leaders 2026-04-02
2026年4月25日千葉銀行が営業店の対面取引で、ICチップの読み取りと容貌の撮影を組み合わせた本人確認を開始。店頭タブレットとICカードリーダーを使い、TSUBASA・じゅうだん会の7行にも順次導入予定IT Leaders 2026-04-27
2026年5月三菱UFJ銀行が非対面の本人確認をIC読み取りへ移行時事通信 2026-10-21
2026年10月1日第四北越銀行が「2027年4月1日から原則ICチップの読み取りに変更、変更日より前に先行実施予定」と告知第四北越銀行
2026年10月9日金融庁が非対面の本人確認について、施行日を待たずにIC読み取りへ移行するよう注意喚起金融庁
2026年10月19日・23日みずほ銀行、三井住友銀行が非対面の口座開設で免許証の撮影による確認を廃止。三井住友銀行は免許証を使う場合は店舗への来店を案内時事通信、共同通信

千葉銀行の例では、対象書類をマイナンバーカード・運転免許証・在留カード・特別永住者証明書とし、ICの読み取りと券面のOCRによる自動入力、ICの顔画像と来店者の容貌の照合を組み合わせ、店頭タブレットで受付を支援して結果を勘定系へ連携する構成です[IT Leaders]。千葉興業銀行はICカードリーダーを営業店に置き、公的個人認証(署名用電子証明書)での確認も併用しています[IT Leaders]。第四北越銀行のお知らせは、対象書類と暗証番号の入力が必要なこと、暗証番号を忘れた場合やICが読めない場合は別途の手続きになることを、お客様向けに先に伝えています[第四北越銀行]。

一方、大手行の前倒しはまず非対面で進んでいます。時事通信(2026年10月21日)と共同通信(2026年10月23日)によれば、みずほ銀行は10月19日から、三井住友銀行は10月23日から、スマートフォンでの口座開設で免許証の撮影による確認をやめ、三菱UFJ銀行は5月に移行済みです[時事通信][Yahoo!ニュース(共同通信)]。免許証のお客様を店舗へ案内する以上、窓口側の読み取り体制が次の論点になります。金融庁の10月9日の注意喚起も対象は非対面で、対面には触れていません[fsa.go.jp]。日本経済新聞は2025年12月3日に、警察庁が銀行窓口の口座開設などの対面取引についてもIC読み取りを原則とする方針を報じています[日本経済新聞]。

2027年4月までに窓口と渉外で準備すること

2027年4月までに窓口と渉外で整えること。取引と書類、対象取引の棚卸し、受け付ける書類を決める。端末と手順、窓口・渉外の端末、読めない時の分岐。記録と案内、記録様式は従来どおり、暗証番号の事前案内
警察庁Q&A No.1・4・14・18・19・39〜42と、警察庁チラシ(2026年6月23日)による。施行日前の先行実施は制度上も想定されている。

条文とQ&Aから逆算すると、銀行が2026年度中に決めておくことは次の6つです。

1

対象取引の棚卸し: 施行令第7条の取引のうち自店で扱うものと、済み確認で足りる既存顧客の取引を分ける

2

受け付ける書類の方針: IC付きの5種類を基本にするか、IC無しの書類も転送不要郵便で受けるか。どの書類に対応するかは事業者の判断に委ねられている(Q&A No.4)

3

読み取り端末と置き場所: 窓口の専用装置、タブレット、スマートフォンのどれを、窓口・渉外・出張所のどこに置くか。予備機と故障時の手順も決める(No.18)

4

手順書と研修: 書類別の暗証番号の案内、ICと券面の照合の見方、旧住所・●表示・読めない場合の分岐(No.13・16)、代理人・法人代表者の扱い(No.23・35)

5

確認記録とシステム: 記録事項は従来どおり(No.39)。読み取りログを残すか、勘定系・顧客管理システムへ何を連携するかを決める

6

お客様への事前周知: 予約時や店頭掲示で、使える書類と暗証番号を知らせる。先行実施する場合はその旨を明記する

施行までのスケジュールの目安は、次のとおりです。

  • 2026年度の前半: 自社の方針、受け付ける書類、使う機器を決める
  • 2026年度の後半: 一部の店舗と渉外で試行し、待ち時間や読み取れないケースなどの問題点を洗い出す
  • 2027年3月まで: 全店へ広げ、手順書・研修・お客様向けの案内を更新する
  • 2027年4月1日: 改正後の施行規則が施行される

機器を選ぶときは、通信環境のない渉外先でも使えるか、端末やアプリの更新を本部でまとめて管理できるか、勘定系や顧客管理システムの関連する項目と結びつけられるか、を比べます。法人(企業)取引の多い店舗では、代理人および法人の代表者等の確認も同じ機器を使って行えるかを確かめます。窓口業務のデジタル化を進めている銀行なら、既存のタブレットや端末を活用できるかも検討の対象です。

先行行の導入事例を見ると、専用装置やタブレットを全営業店に置く投資に加えて、渉外や小規模拠点の端末をどうするかが分かれ目になります。全店同時でなく、まず一部の店舗と渉外チームで読み取りと照合の手順を試し、滞留時間と暗証番号の失念率を測ってから広げる進め方が現実的です。マネー・ローンダリング対策は国際的にも求められており、今後も確認方法の見直しが続く可能性があります。最新の命令やQ&Aは警察庁の公表で確かめるようにします。

窓口以外の拠点でICチップを読み取る準備を始める銀行の方へ

マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、Androidのスマートフォン・業務用ハンディ端末で使える本人確認の業務アプリです。お客様自身がカードをかざして暗証番号を入力し、運転免許証(暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナ免許証、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で4情報、券面の14桁の番号で読むと顔写真も)、在留カード・特別永住者証明書(券面の12桁の番号で記載事項と顔写真)のICチップの情報を画面に表示し、券面・ご本人と見比べられます。暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送りません。

営業店の専用装置とは別に、渉外担当者が持ち出すAndroid端末、出張所・ローンプラザ・グループ会社の店頭にあるstera端末で読み取る、という使い分けを想定しています。在留カード等の氏名は文字で表示せず、旅券には対応していません。確認記録への残し方や勘定系・顧客管理システムとの連携は、貴行の事務企画・法務部門と個別にご相談ください。導入相談の手順は次の4つです。

1

窓口以外で対面の取引時確認が起きる拠点と、年間の件数を整理する

2

受け付ける書類と、読み取り後に記録へ残す項目を決める

3

使うAndroid端末・stera端末と、既存システムへの連携範囲を確認する

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む

まとめ:読む・照らす・残すの手順を、窓口と渉外の両方で2026年度中に固める

銀行の窓口で写真付き・IC付きの本人確認書類を使う取引時確認は、2027年4月1日からICチップの読み取りと券面との照合が原則になります。対象は口座開設・融資・200万円超の現金・貸金庫などの特定取引で、既存のお客様の済み確認は従来どおりです。IC無しの書類は転送不要郵便、旅券は補完書類での住居確認が加わります。確認記録の様式は変わらないので、整えるべきは読み取り端末と手順書、そして渉外先や小規模拠点を含めた読み取り体制です。本記事で紹介した先行する銀行の動きを参考に、まず一部の店舗と渉外で試し、施行日前に全店へ広げておくことが大切です。

FAQ

よくある質問

Q. 2027年4月から銀行窓口の本人確認は何が変わりますか。
写真付き・ICチップ付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書、旅券など)を使う対面の取引時確認は、書類の提示に加えて、ICチップの氏名・住居・生年月日・写真を装置で読み取って画面に表示し、券面と照合する方法が原則になります(施行規則第6条第1項第1号イ、2027年4月1日施行)。
Q. 既に口座を持っているお客様も、2027年4月以降は窓口でICチップを読み取る必要がありますか。
取引時確認を終えていて確認記録を保存している顧客との取引は、通帳やキャッシュカードと暗証番号などで同一人であることを確かめれば、改めて確認する必要はありません(法第4条第3項)。なりすましの疑いがある取引やハイリスク取引は別です。
Q. 運転免許証の暗証番号を忘れたお客様はどう扱いますか。
2027年4月以降、運転免許証はICチップを読み取る方法でしか本人確認に使えません。写真まで読むには暗証番号を2組入力する必要があるため、マイナンバーカードなど別の書類に切り替えるか、都道府県警察の窓口で暗証番号を再設定できることを案内します。装置の不具合で読めない場合は、合理的な期間内に読み取れば取引時確認を完了できます(警察庁Q&A No.18)。
Q. 旅券しか持っていないお客様は窓口で確認できますか。
できます。旅券はICチップから氏名・生年月日・写真を読み取る対象で、ICに住居が記録されていないため、現在の住居が記載された他の本人確認書類か補完書類(発行から6か月以内の住民票の写しなど)の提示を受けて住居を確認します。2020年2月3日以前に発行された旅券で所持人記入欄に住居が記載されていれば、追加の確認は不要です(警察庁Q&A No.8〜11)。
Q. 渉外担当者が訪問先で読み取った情報は本店へ送る必要がありますか。
読み取ったICチップの情報をどこかへ送信する義務はありません(警察庁Q&A No.41)。提示を受ける担当者とICの情報を確認する担当者が別でもよく、確認は合理的な期間内に券面との照合を含めて行います(No.19)。確認記録の記録事項は従来どおりです(No.39)。