「2027年4月から窓口でICチップを読むなら、まず無料の公式アプリで足りないか」。対面の本人確認を見直している事業者から、最初に出てくる問いです。デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」をはじめ、本人確認書類のICチップを読み取る公的なアプリは無料で配布されており、犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正に関する警察庁のQ&Aでも、読み取り手段の例として挙げられています。

本記事では、公的な読取りアプリ3つの機能を公式の案内で確かめたうえで、2027年4月からの対面確認での位置づけと、店舗の業務で使うときに足りること・足りないことを整理します。公式アプリで十分な事業者もいるので、自社がどちらに当たるかを判断する材料として使ってください。

結論:公式アプリで足りる事業者もいる。差が出るのは従来の運転免許証と、複数店舗・記録・連携

不動産業における犯罪収益移転防止及び反社会的勢力による被害防止のための連絡協議会が2026年10月に全宅連のサイトで公表した資料は、対面で使える公的な読取りアプリとして、デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」、警察庁の「マイナ免許証読み取りアプリ」、出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」の3つを挙げています[連絡協議会]。犯収法の対面確認でも、省庁が提供するアプリに限らず民間のアプリを使ってよいとされています(Q&A No.20〜22)[警察庁]。マイナンバーカードで来店するお客様が中心で件数も多くない店舗なら、公式アプリを活用し、事業者が用意したスマートフォン1台で始められます。

一方で、マイナンバーカードと一体化していない従来の運転免許証のICチップを読む公的なアプリは、この資料の時点で「現状、ない」とされています[連絡協議会]。書類ごとにアプリが分かれ、記録はPDFや履歴を自社で管理する必要があり、予約や顧客管理のシステムへ読み取り結果を連携する機能も公式の案内にはありません。従来の運転免許証で来店するお客様が多い、複数の店舗で運用する、読み取り結果をシステムへ取り込みたい、という場合に、業務アプリや専用の読取り装置を検討する意味が出てきます。

本人確認に使える公的な読取りアプリは3つ

無料で使える公的な読取りアプリ3つ。対面確認アプリ、デジタル庁が提供、マイナンバーカード。マイナ免許証読み取り、警察庁が提供、マイナ免許証の免許情報。在留カード等読取、出入国在留管理庁が提供、在留カード・特別永住者
不動産業の連絡協議会の資料(2026年10月)と各省庁の公式案内による。

3つのアプリの主な違いを、公式の案内で確かめた範囲で以下の表に一覧にします[デジタル庁][警察庁][出入国在留管理庁]。

アプリ(提供元)読める書類読み取りに入力するもの使える端末
マイナンバーカード対面確認アプリ(デジタル庁)マイナンバーカード、スマートフォンのマイナンバーカード、特定在留カード・特定特別永住者証明書(iOS版とMac・iPadで対応を案内)券面の生年月日・有効期限の年・セキュリティコード(カメラで読み取るか手入力)。お客様の暗証番号は不要スマートフォン(iOS・Android)、ICカードリーダライタを接続したMac・iPad
マイナ免許証読み取りアプリ(警察庁)マイナ免許証・マイナ経歴証明書の免許情報(従来の運転免許証は対象外)お客様が設定したマイナ免許証用の暗証番号4桁。氏名・住所・生年月日も表示するときは券面の14桁を追加入力スマートフォン(iOS・Android)、パソコン
在留カード等読取アプリケーション(出入国在留管理庁)在留カード、特別永住者証明書(特定在留カードを含む)券面右上の在留カード等番号(カメラで自動読み取りも可能)Windows、Mac、Android、iOS(iPadは非対応)

3つとも無料でダウンロードできます[警察庁][出入国在留管理庁][App Store]。警察庁のFAQは、マイナ免許証読み取りアプリのダウンロードと利用は無料で、インターネットの通信料だけが利用者の負担になると案内しています[警察庁]。デジタル庁のアプリは、Windowsには対応しておらず2026年度中に公開する予定とされ、デジタル庁はこのアプリを装ったPC版アプリへの注意を呼びかけています[デジタル庁]。ストアでアプリ名を検索する際は名前の似たアプリを選ばないよう、各省庁の公式ページから正規のストアへ進むのが確実です。

マイナンバーカード対面確認アプリでできること

デジタル庁のアプリは、事業者や自治体のスタッフが、顧客や住民の本人情報を確認するためのものです。公式ページは利用場面として、金融機関での取引、携帯電話の契約、不動産の契約、中古品の買取、飲食店での20歳以上の確認などを挙げています[デジタル庁]。

読み取りでは、カードの表面の生年月日、有効期限の年、セキュリティコードをカメラで読み取るか入力し、ICチップを読みます。お客様に暗証番号を入力してもらう必要はなく、暗証番号なしで読み取れます。主な表示内容は顔写真、氏名、住所、生年月日、性別、有効期限などで、特定在留カード等では在留資格や在留期間も確認できます。マイナンバーカードの読み取り方式の違いは、券面事項入力補助で事業者が読み取れる項目は?で解説しています。

記録の面では、確認した本人情報をPDFで出力でき、出力したPDFが改ざんされていないかをアプリで検証できます。PDFには顔写真、氏名、住所、生年月日、確認日時などの個人情報が入り、アプリには保存されないので、共有先や保存先で事業者が管理します。検証は出力した端末の履歴と照合して行うため、別の端末やアプリを入れ直した端末では照合できません。アプリ内の履歴には確認日時など一部の情報だけが残り、個人が特定できる情報は保存されないとされています。出力と検証の詳細は、デジタル庁の案内をご覧ください[デジタル庁]。

店舗のカウンターのように決まった場所で使うなら、MacまたはiPadにICカードリーダライタをつないで使う方法も案内されています[デジタル庁]。インターネットに接続できない通信環境でも、実物のマイナンバーカードは確認できます。運転免許証の読み取りには対応していません[デジタル庁]。

マイナ免許証読み取りアプリと在留カード等読取アプリケーション

警察庁のマイナ免許証読み取りアプリは、マイナ免許証のICチップに格納された免許情報を確認するアプリです。免許証の番号、免許の年月日と有効期間の末日、免許の種類、条件、モノクロの顔写真、色区分などを表示でき、レンタカー事業者などが顧客の免許情報を確認する場面も想定されています[警察庁]。読み取りには、お客様がマイナ免許証に一体化したときに設定した4桁の暗証番号が必要で、氏名・生年月日・住所も表示したい場合は券面の14桁を追加で入力します。スマートフォン版の動作環境はAndroid 13〜16とiOS 16〜26で、拡張APDUに対応していない一部のAndroid端末では使えません[警察庁]。オフラインでも読み取りなどの基本的な操作はできるとされています[警察庁]。事業者向けの使い方はマイナ免許証の確認方法【事業者向け】にまとめています。

注意したいのは、このアプリで読み取って保存した免許情報の扱いです。警察庁のFAQは、アプリやマイナポータルで確認・保存した免許情報は運転免許証の携帯義務を果たしたことにならず、口座開設などで使う犯収法上の本人確認書類にも当たらないとしています[警察庁]。お客様が自分のスマートフォンに保存した画面を見せてもらう運用は、本人確認の代わりになりません。

出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションは、偽変造在留カード対策のためのアプリです。券面の在留カード等番号を入力すると、ICチップの記載事項と顔写真が表示され、改ざんや発行元の検証結果、番号の失効情報の照会も確認できます[出入国在留管理庁]。2026年6月14日から交付が始まった新様式のカードでは、8月19日の改修版への更新が案内されています。在留カードのICチップについては在留カード等のICチップとは?で詳しく扱っています。

2027年4月の対面確認で、公式アプリはどう位置づけられるか

2027年4月の対面確認で押さえる3点。使えるアプリ、公的・民間どちらも可、Q&A No.20〜22。読み取る端末、事業者が用意する、顧客の装置は断れる。照合と記録、券面と職員が照合、記録の様式は従来どおり
犯収法施行規則第6条第1項第1号イ(2027年4月1日施行)と、警察庁の施行規則改正に係るQ&Aによる。端末はNo.14・15、記録はNo.39〜42。

犯収法の特定事業者が行う対面の本人確認は、2027年4月1日から、ICチップ付きの写真付き本人確認書類の提示を受け、ICチップに記録された氏名・住居・生年月日・写真の情報を読み取り装置で読み取って画面に表示する方法が原則になります(施行規則第6条第1項第1号イ)[e-Gov法令検索]。偽造された身分証で開設された口座や契約された携帯電話が特殊詐欺に悪用されてきたことが、ICチップの読み取りを原則にする背景です[日本経済新聞]。警察庁のQ&Aは、この読み取りに使うアプリについて次のように答えています[警察庁]。

  • 使えるアプリ: 省庁が提供するものに限らず、民間企業のアプリやツールも使える。対面確認アプリのほか、地方公共団体情報システム機構の券面事項表示ソフトウェアや民間のアプリが考えられる(No.20〜22)。マイナンバーカードの公的個人認証サービス(署名用電子証明書)を使う方法も対面で使える(No.26)
  • 読み取る端末: なりすまし防止のため、事業者が準備したスマートフォンで読み取るなど適切な形で行う。顧客が用意した装置の利用を認めない取扱いも許される(No.14・15)
  • 照合: 読み取ったICチップの情報と券面を照らし合わせ、偽造された書類によるなりすましを防ぐ必要がある(No.12)
  • 記録: 確認記録の作り方と記録事項は従来どおりで、読み取りのログを残す義務はない。読み取り結果を印刷したものは本人確認書類の写しに当たらない。読み取ったデータをどこかへ送信する必要もない(No.39〜41)
  • 対面確認アプリの履歴: 履歴に表示される確認時刻を提示を受けた時刻として記録すれば、書類の写しは要らない。ただしセキュリティコードだけでは書類を特定できないため、書類の名称や記号番号も記録する(No.42)

つまり、公式アプリは2027年4月からの対面確認の読み取り手段として使えます。押さえておきたいのは、読み取る端末は事業者が用意すること、照合は職員が行うこと、確認記録は自社の様式で作ることの3点です。読み取りから照合、記録までの流れは対面本人確認でICチップを読み取る手順で解説しています。

店舗の業務で使うときに足りないこと

公式アプリで足りなくなる3つの場面。従来の免許証、公的なアプリがない、市販機器や民間アプリ。記録と連携、PDFは自社で管理、システム連携の案内なし。複数店舗、店舗ごとに端末を用意、更新と紛失を管理
連絡協議会の資料(2026年10月)、デジタル庁の対面確認アプリの案内、警察庁Q&A No.14による。

公式アプリは無料で、機能も確かです。業務で使う前に、各アプリの利用規約で事業者が使うときの条件も確かめておきます。そのうえで店舗の業務に組み込むと、次の点を自社で補う必要が出てきます。

1

従来の運転免許証: マイナンバーカードと一体化していない運転免許証のICチップを読む公的なアプリは、連絡協議会の資料の時点でありません[連絡協議会]。従来の免許証で来るお客様が多い業種では、市販の読取り機器や民間のアプリが別に要ります。

2

書類ごとのアプリの使い分け: マイナンバーカードはデジタル庁、マイナ免許証は警察庁、在留カードは出入国在留管理庁のアプリと、書類を見てアプリを選ぶ手順になります。それぞれの更新も端末ごとに管理します。

3

記録の管理: デジタル庁のアプリのPDFは本人情報を含み、保存先の管理は事業者の責任です。確認記録に残す書類の名称や記号番号は、別に転記する運用が必要です。

4

システムへの連携: 読み取った氏名や住所、免許の条件などを予約・顧客管理・基幹システムへ送る機能は、公式の案内にありません。手入力の転記が残ります。

5

端末の用意と台数: Q&Aの考え方に沿えば、職員の私物ではなく事業者が用意した端末で読み取ります。店舗や受付窓口が増えるほど、端末の台数、アプリの更新、紛失時の対応を管理する手間が増えます。

6

暗証番号の案内: マイナ免許証読み取りアプリはお客様の暗証番号が必要で、覚えていないと読み取れません。案内の方法は本人確認で暗証番号が分からないときの対応を参考にしてください。

公式アプリで足りる場合・業務アプリを検討する場合

自社がどちらに当たるかは、次の6つの観点で見当がつきます。

観点公式アプリで始めやすい業務アプリや専用装置を検討したい
来店時の書類マイナンバーカードが中心従来の運転免許証や在留カードも多い
件数1日に数件程度受付が集中し、1件の時間を短くしたい
店舗・窓口の数1〜2拠点複数店舗、訪問先や配達先でも読む
記録確認記録は紙の様式で十分読み取り結果を記録に自動で残したい
システム予約・顧客の管理は手入力でよい予約・顧客・基幹システムへ連携したい
端末スマートフォンやMacを用意できる決済端末や業務用端末に読み取りをまとめたい

左の列に多く当てはまるなら、まず公式アプリで運用を始め、手順と記録の様式を固めるのが現実的です。右の列が多いなら、読める書類の範囲、端末、記録と連携の方法を比べて選びます。関連する記事として、読み取り端末の選び方は本人確認のICチップ読み取り端末を比較、免許証の読み取り手段は免許証リーダーのおすすめで比較しています。

1つのアプリで書類4種類を読み取りたい事業者の方へ

マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFC対応のAndroidスマートフォン・業務用ハンディ端末で使える本人確認の業務アプリです。従来の運転免許証(暗証番号1で記載事項、暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナ免許証、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別、券面の14桁の番号で顔写真も)、在留カード・特別永住者証明書(券面の12桁の番号で記載事項と顔写真)を1つのアプリで読み取り、画面で券面・ご本人と見比べられます。暗証番号はお客様が自分で入力します。

暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送らず、合意した項目だけを予約・顧客システムへ連携できます。マイナンバー(12桁)は読み取らず、在留カード等の氏名は文字で表示せず、旅券には対応していません。公式アプリで足りる業務は公式アプリで十分で、従来の運転免許証が多い店舗、決済端末に読み取りをまとめたい店舗、複数店舗で記録や連携をそろえたい事業者に向いています。確認記録への残し方は、貴社の法務担当とご確認ください。導入相談の手順は次の4つです。

1

来店時に使われる書類の割合と、1日の件数・店舗数を整理する

2

読み取る項目と、記録・システム連携の要否を決める

3

使うstera端末・Android端末と、既存システムとの連携範囲を確認する

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む

まとめ:書類と件数を数え、公式アプリで足りない部分だけを補う

無料の公式アプリは、2027年4月からの対面確認の読み取り手段として使えます。マイナンバーカード中心で件数が少ない店舗なら、事業者が用意した端末と公式アプリで十分に始められます。足りなくなるのは、従来の運転免許証、書類ごとのアプリの使い分け、記録の管理、システムへの連携、複数店舗の端末管理です。まず来店時の書類と件数、店舗数を数え、公式アプリで足りない部分だけを業務アプリや専用装置で補う形で選ぶのが無駄のない進め方です。

FAQ

よくある質問

Q. マイナンバーカード対面確認アプリは事業者が業務で使えますか。
使えます。デジタル庁が事業者や自治体のスタッフ向けに無料で提供しているアプリで、金融機関での取引、携帯電話や不動産の契約、中古品の買取などの本人確認を利用場面に挙げています。お客様の暗証番号は不要で、券面の情報を読み取ってからICチップを確認します。
Q. 2027年4月からの犯収法の対面確認に、無料の公式アプリを使えますか。
使えます。警察庁のQ&Aは、省庁が提供するアプリに限らず民間のアプリも使えるとしています。読み取りは事業者が用意した端末で行い、読み取った情報を券面と照合し、確認記録は従来どおりの記録事項で作成します。
Q. 従来の運転免許証を読み取れる無料の公式アプリはありますか。
2026年10月時点ではありません。デジタル庁の対面確認アプリは運転免許証に対応しておらず、警察庁のマイナ免許証読み取りアプリはマイナ免許証が対象です。従来の運転免許証のICチップを読むには、市販の読取り機器や民間のアプリが必要です。
Q. 公式アプリで確認した記録は残せますか。
デジタル庁の対面確認アプリは確認結果をPDFで出力でき、改ざんの有無をアプリで検証できます。PDFは本人情報を含み、アプリには保存されないため、保存先で事業者が管理します。警察庁のQ&Aでは、アプリの履歴の確認時刻を記録すれば写しは不要で、書類の名称や記号番号も記録するとしています。
Q. お客様のスマートフォンで読み取ってもらってもよいですか。
犯収法の対面確認では避けるのが無難です。警察庁のQ&Aは、不正なソフトウェアによるなりすましを防ぐため、事業者が準備したスマートフォンで読み取るなど適切な形で行うよう求めています。マイナ免許証読み取りアプリで保存した免許情報も、犯収法上の本人確認書類には当たりません。