店頭で申込書を書いていると、「本人確認書類としてマイナンバーカードのコピーを取らせてください」と言われることがあります。勤務先から両面のコピーの提出を依頼されたり、オンラインの申込みでカードの画像のアップロードを求められたりする場面もあり、どこまで渡してよいのか迷う人は少なくありません。
受け取る事業者の側も、判断は単純ではありません。マイナンバーカードの裏面には12桁の個人番号が記載されていて、運転免許証と同じ感覚で両面を写して保管すると、番号法の収集・保管の制限に触れるおそれがあります。表面と裏面の違いと、渡す人・受け取る事業者それぞれの注意点を、個人情報保護委員会や総務省、デジタル庁などの一次情報に沿って見ていきます。
結論:表面は写せるが、裏面の個人番号は写さない
個人情報保護委員会のFAQは、マイナンバーカード(個人番号カード)の表面は身分証明書として広く利用することが想定されているため、身分証明書の写しとして使用する目的で表面をコピーすることは問題ないとしています。一方で、番号法で定められた場合以外に個人番号をコピーすることは特定個人情報の収集・保管制限に違反する可能性があり、カードの裏面の個人番号はコピーできないと明記しています(個人情報保護委員会)。
例外は、勤務先での税や社会保険の手続きのように、法令で個人番号の提供が必要とされている場面です。このときは番号の確認と本人確認のために、カードの提示やコピーの提出を求められることがあります。渡す側は何の手続きに使うのかを確かめ、不要な部分を隠してから渡すのが基本です。受け取る事業者は、そもそも写しを取らずにICチップで確認する方法も検討可能です。
マイナンバーカードの表面と裏面で何が違うか
総務省は、マイナンバーカードの表面に氏名、住所、生年月日、性別、顔写真のほか、電子証明書の有効期限の記載欄、セキュリティコード、サインパネル領域、臓器提供意思表示欄があり、個人番号は裏面に記載されると説明しています(総務省)。デジタル庁も、おもて面は顔写真付きの本人確認書類として使え、裏面のマイナンバー(12桁の番号)は法令または条例で定められた手続きでの番号の確認に使うものと案内しています(デジタル庁)。
| 面 | 記載されている主な事項 | 本人確認での写しの扱い |
|---|---|---|
| 表面 | 氏名・住所・生年月日・性別・顔写真、電子証明書の有効期限の記載欄、セキュリティコード、サインパネル領域、臓器提供意思表示欄 | 身分証明書の写しとしてコピーできる。業務に不要な箇所は提出先と相談して隠す |
| 裏面 | 個人番号(12桁) | 番号法で定められた事務以外では、コピー・書き取り・保管をしない |
| (参考)ICチップ | 4情報と顔写真の画像、個人番号など。用途ごとに暗証番号などで保護 | 4情報だけを読み取る使い方ができる。個人番号は番号法に基づく事務でのみ利用できる |
事業者が本人確認で写しを取るときのルール
店舗や窓口でマイナンバーカードを本人確認書類として受け付けるときのポイントは、「見ること」と「写すこと」を分けて考えることです。個人情報保護委員会のFAQは、提示を受けた際に裏面の個人番号を意図せずに見ただけでは特定個人情報の収集に当たらず、収集制限に違反しないとしています。ただし、個人番号の書き取りやコピーを行った場合は収集に該当し、収集・保管制限に違反する可能性があるとしています(個人情報保護委員会)。
総務省も、個人番号をコピー・保管できる事業者は行政機関や雇用主など法令に規定された者に限られ、規定されていない事業者の窓口では裏面をコピー・保管できないと説明しています(総務省)。犯罪収益移転防止法の特定事業者向けには、警察庁の概要資料が、マイナンバーカードの写しを取る際は裏面の写しを取らず、写しの送付を受ける場合は表面のみの写しを受け取るよう求めています(警察庁)。
現場で見直したいのは、複合機やスキャナーで両面をまとめて読み込む設定、受け付けた書類をすべてスマートフォンで撮影して保存する運用、「両面コピー添付」と書かれた申込書の様式です。受付マニュアルに「裏面は写さない・書き取らない」と明記し、誤って写したときの処理(その場での破棄と報告)も決めておくと、担当者ごとの判断のばらつきを減らせます。
個人番号の提供が必要になる手続き
総務省は、マイナンバーの利用範囲は法律で社会保障、税、災害対策の3つの行政分野に限られており、マイナンバーを利用する手続きでは原則として顔写真付きの本人確認書類などで本人確認を徹底することになっていると説明しています(総務省)。具体的な場面としては、就職、転職、出産育児、病気、年金受給、災害などで個人番号の提示が必要になり、マイナンバーカードがあれば1枚で番号確認と本人確認ができるとしています(総務省)。
デジタル庁のFAQも、法令または条例で定められた行政手続きに必要な場合を除き、民間事業者が従業員や顧客などにマイナンバーの提供を求めたり、収集・保管したりすることはできないとしています(デジタル庁)。勤務先が税や社会保険の手続きのために番号を集める場面と、店舗が会員登録でカードを見る場面とでは、裏面を扱えるかどうかが異なるわけです。
番号を集める側の本人確認について、個人情報保護委員会は、講演料の支払先などから個人番号を取得する場面を例に、対面では本人確認書類の「提示」が原則で写しを求める必要はなく、郵送の場合は写しの「提出」を受ける必要があると整理しています(個人情報保護委員会)。コピーを求められたら、対面か郵送か、どの手続きに使うのかを確かめると、写しの必要性が見えてきます。
コピーを渡す側が確認したいこと
用途と提出先を確かめる
最初に確かめたいのは、コピーを使う目的です。会員登録や契約の本人確認だけなら、表面の写しで足ります(個人情報保護委員会)。税や社会保険などの手続きと関係がないのに裏面を求められたら、表面だけでよいかを提出先に尋ねてかまいません。総務省は、マイナンバーの提供が必要な手続きで、電話で番号を求められることはないとも案内しています(総務省)。運転免許証の写しについては「免許証のコピーを渡して大丈夫か」で整理しています。
不要な箇所をマスキングする
表面にも、臓器提供意思表示欄のように本人確認には使わない欄があります。提出先に必要な項目を確かめ、不要な箇所を紙で隠してコピーする、画像なら編集アプリで塗りつぶすといったマスキング方法で隠すと、相手の手元に残る個人情報を減らせます。隠してよい範囲や、マスキングした写しで受理されるかは提出先によって異なるケースがあるため、事前に確認しておきます。
送り方とアップロード
郵送や、オンラインの本人確認(eKYC)での画像のアップロードでは、提出先の公式サイトやアプリからの手続きかを確かめます。写しや画像による本人確認そのものも見直されており、携帯電話の契約では2027年4月以降、本人確認書類の写真のアップロードやコピーの郵送が原則として廃止され、ICチップの読み取りが原則必須になります(総務省)。
窓口でのコピーの扱いの例
日本郵便は、本人限定受取郵便を郵便局の窓口で受け取る際、承諾を得たうえで本人確認書類のコピーを取り、業務上不要となる部分はマスキング(目隠し)を行うと案内しています。承諾が得られない場合や配達で受け取る場合は、記号番号等(法令等により利用が制限されているものを除く)を記録するとしています(日本郵便)。承諾、マスキング、承諾がないときの代わりの記録という組み合わせは、自社の窓口の手順を考える参考になります。
また日本郵便は2026年9月14日、2027年4月1日から本人限定受取郵便の特定事項伝達型と基本型で使える本人確認書類を、ICチップ付き・写真付きの4種類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書)に限定すると公表しました(日本郵便)。公表資料は確認に使う機器や手順、コピーの扱いの変更までは示していないため、詳細は郵便局の窓口や差出人に確認してください。
写しを保管・廃棄するときに決めておくこと
表面だけの写しでも、氏名、住所、生年月日、顔写真がそろった個人情報です。個人情報保護委員会のFAQは、番号法上の本人確認で提示を受けた書類のコピーを保管する法令上の義務はないものの、本人確認の記録を残すために保管することはでき、その場合は安全管理措置を適切に講ずる必要があるとしています。個人番号の確認の際にコピーの提出を受けた場合は、必要な手続きを終えて不要となった段階で速やかに廃棄するよう求めています(個人情報保護委員会)。
犯罪収益移転防止法の特定事業者は、確認記録を特定取引等に係る契約が終了した日から7年間保存する必要があります(警察庁)。それ以外の企業や店舗も、写しを取るなら保管場所、アクセスできる人、廃棄の時期と方法を社内規程で決めておくと運用がぶれません。本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられており、保管する写しを減らすこと自体が重要な対策になります。再発防止の手順は「本人確認書類の漏洩から店舗を守る再発防止策」で解説しています。
写しを取らずに確認する方法
写しを取らない方法の一つが、ICチップの読み取りです。マイナンバーカードの券面事項入力補助用暗証番号は、カードを市区町村の窓口で受け取った際に本人が設定した4桁の数字で、氏名・住所・生年月日・性別の4情報を読み取るときに使い、3回連続で間違えるとロックされます(マイナポータル)。忘れた場合やロックされた場合は、住んでいる市区町村で再設定の手続きが必要です(マイナンバーカード総合サイト)。
この仕組みには個人番号も記録されていますが、デジタル庁はマイナンバーを番号法に基づく事務でのみ利用できると注記しています(デジタル庁)。本人確認には4情報だけを読み、個人番号を読まないツールを選ぶと、裏面を写さないのと同じ線引きを保てます。4情報に顔写真は含まれないため、顔は券面の写真と本人を見比べて確認します。読み取れる項目は「券面事項入力補助で事業者が読み取れる項目」で紹介しています。
犯罪収益移転防止法の特定事業者は、2027年4月1日以降、ICチップ付きの写真付き本人確認書類で対面の確認を行う場合、ICチップの情報を読み取って券面と照合することになります。警察庁のQ&A(No.12・No.16)は、照合が必要なことと、読み取る項目が少なくとも氏名・住居・生年月日・写真であることを示しています(警察庁)。特定事業者でない店舗が同じ手順を導入するのは、義務ではなく運用品質の選択です。
確認記録の書き方
警察庁のQ&A(No.40)は、ICチップの読み取り結果を表示した画面を印刷したものは本人確認書類の写しに当たらず、提示を受けた日付と時刻の記録、または日付の記録と写しの保管が引き続き必要だとしています。No.42では、デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」に表示される確認時刻を確認記録に記載すれば写しは不要としつつ、セキュリティコードの記録だけでは足りず、書類の名称や記号番号なども記録する必要があるとしています(警察庁)。
マイナンバーカードの提示を受けたときに個人番号を書き写さないよう、警察庁の概要資料も注意を促しています(警察庁)。記録欄は「確認日時」「書類の種類」「照合結果」「確認者」のように個人番号を書かずに済む形にし、特定事業者が書類を特定する事項として何を記録するかは法務担当と確認してください。写しからICチップの読み取りへの切り替えは「免許証のコピー廃止とICチップ読み取りへの切り替え」も参考になります。
コピーを取らずにマイナンバーカードを確認するには
マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFCに対応したAndroid端末(業務用のハンディ端末やスマートフォン)で動く本人確認の業務アプリです。お客様がカードをかざし、暗証番号はお客様自身が入力します(stera端末はお客様側の画面のタッチパネル、Android端末は端末画面のテンキー)。スタッフは暗証番号を聞かず、控えません。マイナンバーカードは券面事項入力補助用の4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別の4情報を読み取り、個人番号は読み取りません。マイナ免許証は4桁の暗証番号で免許情報と顔写真を、従来のIC運転免許証は暗証番号1で本籍を除く記載事項を、暗証番号2も入力すると顔写真も読み取ります。免許証の顔写真は端末画面に表示され、担当者が本人の顔と見比べられます。マイナンバーカードの顔写真は、券面の14桁の番号を入力して読み取り、画面の写真を券面・本人と照合します。
このアプリは、暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像を基幹システムへ送らないデータ最小化を前提にし、合意した項目だけをHTTPS POSTで基幹システムへ連携できます(認証はmTLS・OAuth2・HMAC署名から選択)。読み取った情報を外部へ送信しなくても端末画面での照合で確認は完結でき、警察庁Q&A(No.41)の「読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はありません」という回答とも整合します。在留カード・特別永住者証明書は券面の12桁の番号を入力して読み取り、旅券には対応していません。マイナンバーカードは、4桁の暗証番号では氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号を入力すると顔写真も読み取れます。犯罪収益移転防止法の取引時確認に使う場合、読み取る項目(氏名・住居・生年月日・写真)と券面との照合を自社の確認手順に組み込めるかは、法務担当・顧問弁護士に確認してください。
本人確認でマイナンバーカードの写しを取っている手続きと、写しに含まれている項目(裏面・個人番号の有無)を整理する。
読み取りたい項目と、確認記録への反映方法を決める。
使う端末(stera端末、またはNFCに対応したAndroid端末)と既存システムの連携可否を確認する。
マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。
まとめ:渡す前と受け取る前に確かめること
マイナンバーカードのコピーで迷ったら、まず「本人確認のためか、個人番号が必要な手続きのためか」を分けて考えます。一般的な本人確認なら表面の写しで足り、裏面の個人番号は、社会保障・税・災害対策の分野で法令に定められた手続き以外では写しません。渡す側は提出先と用途を確かめて不要な箇所を隠し、受け取る事業者は裏面を写さない受付手順、写しの保管と廃棄のルール、写しを取らない確認方法を整えておくと安心です。
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