「2027年4月からICチップ読み取りが対面本人確認で原則必要になる」というニュースを見て、自社のようなレンタカー会社も対象になるのか、何をいつまでに準備すべきかを判断したい、という担当者の方も多いはずです。結論を先に示すと、犯罪収益移転防止法の改正によって対面でのICチップ読み取りが義務化されるのは「特定事業者」であり、レンタカー事業者はこの特定事業者には該当しません。携帯電話不正利用防止法の改正も携帯電話事業者を対象としており、レンタカー・カーシェア・建機レンタルに直接の義務が発生するわけではありません。
ただし「義務ではないから従来どおりで良い」とは言い切れません。2025年3月24日からマイナ免許証の運用が始まり、券面に免許の種類や有効期限が記載されない運用へと変わりました。本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられており、業界への点検要請も出ています。本記事はレンタカー・カーシェア・建機レンタルの店舗責任者、業務企画、情報システム、コンプライアンス担当に向けて、2027年4月の改正の全体像、レンタカー事業者が取るべき実務上の対応、そして店頭でICチップ読み取りを導入する際の設計ポイントまでを整理します。
要点の早わかり:2027年4月のICチップ読み取り義務化は誰が対象か
まず全体像です。2027年4月1日から、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)に基づく本人確認方法が変更され、対面取引では、ICチップ付き・顔写真付き本人確認書類について、券面の目視確認だけでなく、ICチップ情報の読み取りと画面表示が原則として必要になります。 [サイバートラスト]この改正は金融機関などの特定事業者を対象としています。
非対面側も厳格化されます。本人確認書類の画像を送る方法は廃止され、ICチップ情報の送信を受ける方法など、なりすましのリスクが低い方法が残ります [TRUSTDOCK]。非対面の本人確認は、公的個人認証(JPKI)やICチップ読み取り型のeKYCへ寄せる構造になっています。
レンタカー事業者は犯罪収益移転防止法の特定事業者には該当しません。したがって、2027年4月1日の施行をもって「ICチップ読み取りの義務」が直接発生するわけではありません。特定事業者の店頭が2027年4月までに準備すべきことは犯収法改正で2027年4月から対面の本人確認はどう変わるかで整理しています。ただし、顧客との取引で免許情報を確認する以上、本人確認の運用品質そのものが問われます。義務の有無とは別軸で、業界の標準的な運用がどこへ動いているかを把握しておく必要があります。
犯罪収益移転防止法と携帯電話不正利用防止法の改正点
犯収法の改正は、対面と非対面の双方に手を入れる改正です。対面側では、顔写真付き本人確認書類の提示だけで完了していた従来の運用から、ICチップの読み取りと画面表示までを含めた確認手順へ変わります。警察庁は、銀行などの対面での本人確認方法を見直し、2027年4月からはマイナンバーカードなどのICチップを読み取る方式に限定する方針を発表しています。 [Impress Watch]
非対面側では、本人確認書類の券面を撮影して送り、容貌の自撮りと照合する方法が廃止されます。残るのは、ICチップ情報の送信と容貌の送信を組み合わせる方法や、公的個人認証(JPKI。スマートフォンに搭載したマイナンバーカードを含む)による方法が中心です [プリマジェスト]。非対面の本人確認はJPKI中心へ、対面はICチップ読み取り中心へ、という流れが明確になっています。
携帯電話不正利用防止法の施行規則改正(非対面は2026年4月に施行済み、対面は2027年4月施行)も同じ流れにありますが、こちらは携帯電話事業者を対象としたものです。レンタカー・カーシェア・自動車販売・整備といった業種にそのまま適用されるものではないため、「同じ日に施行されるから自社も義務化だ」と早合点しないよう注意が必要です(2026-10-08時点)。
レンタカー事業者は対象外でも「券面確認だけ」で良いのか
犯罪収益移転防止法の直接の対象ではないレンタカー事業者でも、店頭受付をICチップ読み取り方式に切り替える合理的な理由はあります。
ひとつ目はマイナ免許証の運用開始です。マイナンバーカードの券面には、免許情報(免許種別、有効期間など)が表記されないため、マイナ免許証に記録された免許情報を読み取る場合には、マイナポータルにログインするか、マイナ免許証読み取りアプリを利用する必要があります。 [警視庁]つまり、お客様がマイナ免許証のみを持参した場合、券面を見るだけでは免許の種類や有効期限を店頭スタッフは確認できません。
ふたつ目は、業界横断の運用の標準化です。金融機関や携帯電話ショップの店頭でICチップ読み取りが前提になれば、利用者側は「カードを置いて暗証番号を入れる」操作に慣れていきます。レンタカー店頭でも同じ操作で受付が進む方が、むしろ説明コストは下がります。
三つ目は、本人確認書類の画像管理の見直しです。本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられています。券面の撮影画像やコピーだけに依存していた運用は、流出時の影響範囲も大きくなりがちです。偽造や使い回しは、券面の目視や撮影画像だけでは見抜きにくいのが実情で、ICチップの読み取りと暗証番号の照合を伴う確認は、券面のコピーだけの運用より耐性が高いと整理できます。
マイナ免許証の券面と記録情報の違い
マイナ免許証は、マイナンバーカードのICチップに免許情報を記録する仕組みです。マイナ免許証に記録される情報は、マイナ免許証の番号、免許の年月日およびマイナ免許証の有効期間の末日、免許の種類、免許の条件に係る事項、顔写真などで、マイナ免許証のICチップに記録されます(マイナンバーカードの券面に免許に関する事項は記載されません)。 [警察庁]
ここで混同されやすいのが、マイナ保険証や一般的なマイナンバーカード活用サービスとの違いです。マイナ保険証は健康保険証利用に関する別の制度で、マイナ免許証とは目的も読み取り経路も異なります。マイナ免許証の店頭確認では、12桁のマイナンバーそのものを読み取る必要はなく、免許情報だけを対象にすれば用が足ります。この切り分けは、プライバシー影響評価や社内の個人情報保護規程の整備を進めるうえでも押さえておきたい点です。
従来の運転免許証も引き続き利用されます。保有の形は、従来の運転免許証のみ、マイナ免許証のみ、両方の2枚持ち、の3通りです。店頭ではどの形で来店されても対応できる受付設計が求められます。
店頭で起きる具体的な困りごと
マイナ免許証の普及に伴い、店頭で起きがちな事象を具体的に挙げます。
- お客様がマイナ免許証のみを持参されたとき、券面に免許の種類が書かれていないため、スタッフが口頭で「普通一種で間違いないですか」と確認するしかない。
- 従来の運転免許証のコピーに頼った受付では、券面の撮影画像から有効期限切れや条件違反を見逃しやすい。
- 利用者のスマホ(NFC対応のスマートフォン)で警察庁の「マイナ免許証読み取りアプリ」を操作してもらう運用は、お客様の端末状況や通信環境、OSバージョンの違いに左右され、繁忙時の受付手続きが詰まりやすい。
- 受付で得た免許情報を予約・基幹システムへ手入力すると、転記ミスや二重入力が発生する。
- 貸渡約款や保険・補償の条件は免許の種類や条件を前提にしているのに、受付で何を確認したかの記録が残らない。
警察庁のマイナ免許証読み取りアプリは、スマートフォンでマイナ免許証の免許情報を確認するためのアプリです。従来の運転免許証とマイナ免許証を同じ受付動線で扱い、確認結果を予約・基幹システムへ記録するには、店頭側の仕組みを別に設計する必要があります。
対面と非対面での本人確認方式の違い
改正後の方向を整理すると、非対面の本人確認では本人確認書類の画像を送る方法が廃止の方向で、JPKIやICチップ情報の送信を伴う方式へ寄せられていきます。対面の本人確認では、券面の目視だけでなくICチップ情報を読み取り画面表示する手順が標準になります。
事業者側の設計で押さえておきたいのは、対面と非対面を同じ「本人確認」として一括りにしないことです。レンタカー予約時のオンライン事前登録を非対面と位置づけるか、店頭受付時の対面確認で完結させるか、両方併用するかで、必要な機器・アプリ・ログ設計が変わります。対面運用では、ICチップ搭載の本人確認書類と暗証番号の組み合わせで確認するのが、改正後の標準的な方式に近い整理になります。
マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)は非対面側の中核ですが、対面でもJPKIを使う設計は可能です。ただし店頭受付のスループットを優先するなら、免許情報の読み取りに最適化した対面運用を基本線に置くほうが現実的でしょう。
偽造・コピー対策としてのICチップ読み取り
券面の撮影画像やコピーは、偽造を見抜きにくい性質があります。精巧な偽造券面や、流出した本人確認書類の画像が悪用されるケースでは、券面写真の目視では判別が難しい場面も出てきます。ICチップに記録された情報を直接読み取り、同時に本人しか知らない暗証番号で認証する手順は、券面だけの確認より一段高い確からしさを持ちます。
ただし、ICチップ読み取りを導入すれば偽造や犯罪が「絶対に」防げるという整理は適切ではありません。暗証番号の漏えいや、カードそのものの不正取得などの経路は別途対策が必要です。あくまで店頭での本人確認の確からしさを引き上げる手段のひとつと位置づけるのが妥当です。偽造対策の全体像は「レンタカー受付で偽造免許証を見抜く手順」、免許証ICチップの記録内容は「運転免許証のICチップに記録された情報」で整理しています。
店頭でICチップ読み取りを始めるには
ここまでを踏まえ、レンタカー店頭でICチップ読み取りを無理なく始めるための選択肢をひとつ紹介します。stera terminal(決済端末)上で動く業務アプリとして、マイナドライブIDがあります。三井住友カードの決済端末stera端末(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)に対応したマイナ免許証読み取りアプリで、stera marketで提供されています [マイナドライブID]。
このアプリの基本的な機能は次の流れです。お客様が自分でカード本体をstera terminalに置き、カスタマーディスプレイのタッチパネル上で4桁の暗証番号(PIN)を入力します。スタッフは暗証番号を聞き取ったり代わりに入力したりしません。読み取る項目は、氏名、住所、生年月日、顔写真、免許証番号、有効期限、免許の種類、免許の条件、免許情報記録番号などで、顔写真は端末画面に表示して受付スタッフが対面で本人と見比べられるようになっています。マイナンバー12桁や本籍地は読み取り対象から外れています。
データ最小化の設計もポイントです。マイナンバー12桁、PIN値そのもの、14桁の補助入力値、APDUの生データ、未加工のカードバイナリ、顔写真の画像データは、既定では基幹システムへ送信しません。合意した業務項目(テナント、端末、オペレーター、確認ステータス、人物項目、免許項目など)だけをHTTPS POSTで予約・基幹システムへ連携できます。連携APIの認証はmTLS、OAuth2、HMAC署名から選択でき、冪等性やログ保持ポリシーは個別に協議して設計します。
従来の運転免許証も、暗証番号1でICチップから記載事項を読み取れる設計です。マイナ免許証、従来免許証、両方の2枚持ち、のいずれにも1台で対応できるため、受付動線を分岐させずに運用できます。なお、貸渡可否の最終的な法的判断はこのアプリでは行いません。PIN値を事業者側に保存することもなく、すべての受付例外を自動解決するものでもありません。既存の受付ルール・貸渡拒否基準との組み合わせが前提になります。
導入相談までの手順
実際に検討を進める場合の整理順です。
自社の本人確認業務とコピー・画像の保管状況を棚卸しする。どの書類をいつ・何のために・どこに保管しているかを一覧化します。
読み取りたい項目を決める。氏名、住所、免許の種類、有効期限、免許の条件など、業務上必要な項目だけに絞り込みます。
stera端末の設置環境と既存の基幹システム・予約システムを確認する。既存APIの有無、連携方式、ネットワーク構成を把握します。
マイナドライブIDのデモまたは連携相談を申し込み、受付フローと連携仕様をすり合わせます。
デモや連携相談は、こちらの申し込みフォームから受け付けています。
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