近年、本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられています。流出した運転免許証の画像やコピーは、口座開設やクレジットカードの申込み、携帯電話の契約、会員登録、各種レンタルの申込みなどでのなりすましに悪用されるおそれが指摘されています。レンタカーやカーシェア、中古車販売、買取店、レンタル事業、会員制サービスなど、店頭受付や会員登録を抱える事業者にとって、「免許証の画像を使ったなりすましをどう止めるか」は喫緊のテーマです。

結論から言えば、券面の目視や画像・コピーの提出だけで本人確認を終える受付では、流出した画像を使ったなりすましを見抜くのは難しくなっています。来店時にICチップの読み取り、来店者本人による暗証番号の入力、顔写真と来店者の照合を組み合わせれば、画像やコピーだけでは受付を通らない仕組みにできます。本記事は、店舗責任者、情報システム、不正対策・コンプライアンス担当の方に向けて、受付の見直し手順と、stera端末(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)を使ったマイナ免許証対応の実務ポイントを整理します。

流出した免許証画像はどのように悪用されるか

流出画像が悪用される場面。申込み、口座・ローン・カード、他人名義での申込み。会員登録、アカウントの不正作成、レンタルの申込み。偽の画像、顔写真の差し替え、見比べるだけでは難しい
画像に写った氏名・住所・生年月日が、本人を装う材料になります。

本人確認書類の画像が外部に流出すると、券面に書かれた氏名・住所・生年月日・免許証番号・顔写真といった個人情報が第三者の手に渡ります。これらを組み合わせれば、オンラインの申込画面で「本人確認書類の画像を送るだけ」で成立する手続きに通してしまうリスクが生じます。

実際に懸念されているのは、金融機関の口座開設、クレジットカードの申込み、携帯電話や通信回線の契約、各種レンタル・会員サービスの申込みなどです。流出した免許証画像の不正利用は、被害者本人がしばらく気づけない点に悪質さがあります。本稿では偽造の作り方や画像の入手方法には触れません。防御側の視点だけに絞ります。

不正アクセスなどで流出した本人確認書類の画像は、ネット上で売買されているとも報じられています。画像に写った氏名・住所・生年月日を使えば、他人名義で銀行口座やローン、クレジットカードを申し込んだり、会員サービスのアカウントを不正に作成したりすることが考えられます。生成AIで顔写真を差し替えた偽の画像が使われるおそれも指摘されており、画像を見比べるだけで本物かどうかを判断するのは難しくなっています。

なぜ「画像の提出だけ」の確認では見抜きにくいのか

オンラインで完結する本人確認(eKYC)のうち、顧客に本人確認書類を撮影させ、その画像を送信してもらう方式は、長らく広く使われてきました。しかし2027年4月1日施行の犯罪収益移転防止法施行規則の改正では、本人確認書類の画像送信等による一部の確認方法が廃止され、ICチップ情報や電子証明書を用いた、より信頼性の高い本人確認方法へ移行する点が改正の柱とされています [GMOサイン]。画像送信型(ホ方式)をはじめとする非対面の主要方式と、対面の写真なし書類による方式が廃止されます [TRUSTDOCK](2026-10-09時点)。

このルールは金融機関などの特定事業者と、携帯電話不正利用防止法の適用を受ける携帯電話事業者が直接の対象です。レンタカーやカーシェア、自動車販売・整備といった一般の事業者に同じ義務が課されたわけではありません。ただし「画像送信型は信頼性が低い」という考え方は、業界を越えて広がっています。自社の受付が画像の受け取りと目視だけで完結しているなら、同じ弱点を抱えていると考えたほうが安全です。

対面受付でも油断できない理由

対面であっても、提示されたのが「本物のカード」ではなく「精巧に印刷された券面」である可能性はゼロではありません。目視では、券面の文字や顔写真の違いを見抜きにくい場合があります。画像を受け取って保管する仕組みは、セキュリティ上の弱点にもなります。受付のセキュリティを、画像の提出からICチップの読み取りへ移していく発想が重要です。

本人確認を外部に頼らず自社の窓口で行う企業にとっては、受付担当者の経験に依存しない手順を標準化することが課題になります。金融機関やクレジットカード会社など、オンラインで申込みを受ける企業でも、画像の提出だけで確認を終えず、ICチップの読み取りや公的個人認証を組み合わせる方向へ見直しが進んでいます。

マイナ免許証で何が変わるのか

道路交通法の一部改正を施行する政令が閣議決定され、運転免許証として利用できるようにする制度(いわゆる「マイナ免許証」)が2025年3月24日から運用されています [ITmedia]。保有形態は、マイナ免許証のみ、マイナ免許証と運転免許証の双方、従来の運転免許証のみの3通りです [police.pref.chiba.jp]。

重要なのは券面の見え方です。マイナ免許証では、免許情報がICチップに記録されることから、運転免許の有効期限や免許の種類等がマイナンバーカードの券面上で確認できません [police.pref.saitama.lg.jp]。マイナ免許証のICチップには、マイナ免許証の番号、免許の年月日とマイナ免許証の有効期間の末日、免許の種類、免許の条件に係る事項、顔写真などが記録されます [police.pref.chiba.jp]。言い換えると、来店者がマイナ免許証を見せてくれても、それだけでは何の免許をいつまで持っているのか判断できません。ICチップを読み取る前提の受付設計が必要になります。

マイナ免許証は、健康保険証利用を登録したマイナ保険証や、一般的なマイナンバーカード活用サービスとは別の制度です。マイナンバー12桁の数字そのものを使うわけではなく、カード本体に追加記録された免許情報を読み取る点が特徴です。

画像によるなりすましを止めるための受付設計

画像だけでは通らない受付。ICチップ、現物から情報を読む、画像からは読めない。暗証番号、本人が自分で入力、スタッフは聞き取らない。顔写真、端末の写真と来店者、申込み情報とも照合
券面だけを偽造したカードや漏れた画像は、ICチップの読み取りと暗証番号の照合を通りません。

流出した免許証画像でのなりすまし対策は、オンラインと対面の両方で考える必要があります。基本の方針は次の通りです。

  • 画像アップロードだけで本登録を完了させない。メールで本人確認書類の画像を送ってもらう運用も、受け取った画像を保存する分だけ情報漏洩のリスクが増えるため見直す。
  • 初回の来店時に、必ず現物のICチップで確認する。
  • ICチップに記録された顔写真を端末画面に表示し、来店者本人と見比べる。
  • 申込み情報(氏名・住所・生年月日)とICチップから取得した情報を照合する。
  • 本人による暗証番号(PIN)入力を必須とし、スタッフは聞き取らない・記録しない。

改正後は、本人確認書類の画像送信を受ける方法などが廃止され、ICチップ情報や電子証明書を用いる本人確認方法への移行が進みます。自社が特定事業者でなくても、「ICチップ読み取り+顔写真照合+PIN入力」という組み合わせは、画像・コピーだけでは通らない受付をつくる最短ルートです。

不審なサインを見逃さない運用ルール

手順書にしておく不審なサイン。本人の様子、暗証番号を知らない、顔写真と一致しない。申込み情報、同じ住所で複数、連絡が取れない。申込み後、住所や連絡先の変更、パスワードの再設定
疑いがあるときは取引や貸し出しを保留し、責任者に引き継ぎます。

ICチップ読み取りを導入しても、運用に穴があればなりすましは止められません。手順書に落とし込んでおきたい不審サインの例を挙げます。

  • 来店者が暗証番号を思い出せない、入力を極端にためらう。
  • ICチップに記録された顔写真と来店者が明らかに一致しない。
  • 同一住所・同一連絡先で、短期間に複数の申込みが入っている。
  • 氏名・生年月日の表記が、申込画面とカード情報で微妙にずれる。
  • 急ぎを強調して、確認作業を省かせようとする態度が見られる。
  • 申込みに使われたメールアドレスや電話番号で本人と連絡が取れない。
  • 申込みの直後に、住所や連絡先の変更、パスワードの再設定が続く。

疑いがある場合は取引や貸し出しを保留し、必ず責任者へ引き継ぐ運用を定めてください。被害が疑われるときは警察への相談も検討します。利用者からなりすまし被害を相談された場合の情報提供としては、ローンやクレジットカードの審査で参照される信用情報を扱う機関があります。信用情報機関であるJICCでは、運転免許証などの紛失や盗難にあった旨の情報を「本人申告コメント」として登録でき、第三者による悪用を未然に防止する効果が期待できる [JICC]と案内されています(2026-10-09時点)。信用情報機関は複数あり、それぞれ手続きが異なります。制度の詳細や効果は変わり得るため、各機関の公式サイトを案内するにとどめるのが安全です。

従来型の免許証原本をどう扱うか

従来の運転免許証にもICチップが搭載されており、暗証番号1を入力することで記載事項を読み取れます。[警察庁]マイナ免許証への切り替えは任意のため、当面は従来免許証原本を持ってくる来店者が多い店舗もあるはずです。受付の設計としては、どちらの免許証でもICチップを読み取る前提にそろえておくと、手順のばらつきを減らせます。

国際運転免許証などIC非対応の書類は、目視とカメラでの読み取りで扱うことになります。この場合は、画像を外部に送らずに端末上で文字情報だけを抽出する、スタッフが現物と照合するなど、取り扱いルールを別に定めておきます。

基幹システムとの連携で押さえるポイント

ICチップから取得した情報を予約・会員・契約の基幹システムへ連携する場合、API設計の基本を押さえておく必要があります。

  • 通信はHTTPS POSTで行い、通信路を暗号化する。
  • 認証はmTLS、OAuth2、HMAC署名などから自社ポリシーに合うものを選ぶ。
  • 同じ受付が重複送信された際の二重登録を防ぐ冪等性の設計を入れる。
  • 誰が・いつ・何を送信したかの監査ログを残す。
  • 送る項目は事前に合意した業務フィールドだけに絞る(データ最小化)。

ここで重要なのは「送らない項目」を明確にしておくことです。暗証番号(PIN)そのもの、14桁の補助入力値、APDUの生データ、未加工のカードバイナリ、標準運用での顔写真画像は、基幹システムへ送らない前提にしておくと、個人情報保護委員会への説明や、万一のインシデント時の影響範囲を小さくできます。

店頭でICチップ読み取りを始めるには

ここからは、店頭でICチップ読み取りを実装する具体的な選択肢の一つとして、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)上で動く業務アプリであるマイナドライブIDを紹介します。利用者のスマートフォンや操作に頼る運用は受付が滞りやすい、という課題への店舗側のアプローチです。

このアプリの基本的な流れはシンプルです。お客様がstera端末(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)のカードリーダーにカードを置き、カスタマーディスプレイのタッチパネルから自分で4桁の暗証番号を入力します。スタッフは暗証番号を聞き取ったり、代わりに入力したりしません。ICチップからは氏名、住所、生年月日、免許証番号、有効期限、免許の種類、免許の条件、免許情報記録番号、顔写真といった業務に必要な項目を取得します。マイナンバー12桁や本籍地は読み取りません。

顔写真は端末画面に表示され、スタッフが来店者本人と見比べる前提です。無人受付や時間外の無人対応に置き換わるものではなく、あくまで有人受付の確認作業を標準化するものと考えてください。従来のIC運転免許証も暗証番号1で記載事項を読み取れるため、マイナ免許証と従来免許証原本が混在する受付でも手順を一本化できます。国際運転免許証などIC非対応の書類は、端末上のカメラOCRで扱い、画像を外部へ送信しない設計です。

データ最小化の方針として、暗証番号の値、14桁の補助入力値、APDUの生データ、未加工のカードバイナリ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送りません。合意した業務項目だけを、HTTPS POSTで予約・基幹システムへ連携します。認証方式はmTLS、OAuth2、HMAC署名から選択できます。

一方で、できないことも明確にしておきます。貸渡の可否や契約締結の最終判断は、事業者の業務ルールに委ねられます。すべての受付例外を自動解決するものではなく、不審なサインが出たときは責任者判断に戻す運用設計が前提になります。「導入すれば法令対応が完了する」といった性質のものではありません。

導入相談までの手順は次の4ステップで進めると整理しやすくなります。

1

自社の本人確認業務を棚卸しし、現在の画像・コピーの保管状況と、どこで何を確認しているかを書き出す。

2

受付で読み取りたい項目と、基幹システムへ連携したい項目を決める。

3

stera端末(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)の設置環境、既存の予約・会員・契約システムの連携仕様を確認する。

4

マイナドライブIDのデモまたは連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。

関連する社内整備については、本人確認書類の漏洩の再発防止策、およびレンタカー受付で偽造免許証を見抜く手順もあわせて確認してください。

FAQ

よくある質問

Q. マイナ免許証の券面を見れば、免許の種類や有効期限はわかりますか。
わかりません。マイナ免許証では免許情報がICチップに記録され、免許の種類や有効期限はマイナンバーカードの券面では確認できません。ICチップを読み取る仕組みが必要です。
Q. 画像アップロードだけの本人確認は、今すぐやめなければいけませんか。
法令上の義務は業種によって異なります。2027年4月1日施行の犯罪収益移転防止法施行規則の改正で画像送信型の方式などが廃止されるのは、金融機関などの特定事業者のルールです(2026年10月9日時点)。一般の事業者に義務化されたわけではありませんが、流出した画像による不正利用を防ぐ観点では、ICチップの読み取りへの移行を検討する価値があります。
Q. 流出した画像をもとにした偽の免許証は、券面を見れば見抜けますか。
目視だけでは見抜きにくい場合があります。券面の確認に加えて、ICチップの読み取り、本人による暗証番号の入力、顔写真と来店者の照合を組み合わせると、画像やコピーだけでは確認を通らない受付にできます。
Q. 利用者から「免許証の画像が悪用されないか心配」と相談されたら、何を案内できますか。
信用情報機関には、運転免許証の紛失・盗難などを本人申告として登録できる仕組みがあります。登録の手続きや効果は各機関の公式サイトで確認するよう案内してください。
Q. 暗証番号をスタッフが代わりに入力してもよいですか。
本人による入力が原則です。スタッフが聞き取ったり代わりに入力したりすると、本人確認としての意味が薄れるうえ、暗証番号の漏えいリスクを事業者が抱えることになります。端末のタッチパネルで本人に入力してもらってください。
Q. ICチップを読み取れば、なりすましは完全に防げますか。
完全にゼロにはできません。ICチップの読み取り、顔写真の照合、本人による暗証番号の入力、申込み情報との照合を組み合わせ、不審なサインがあれば取引を保留して責任者に引き継ぐ運用まで決めておくことで、受付での検知力を高めます。