山あいの工事現場の詰所、地下の機械室、鉄筋コンクリートの建物の奥にある倉庫。こうした場所で本人確認を開始しようとして、業務端末の電波表示が「圏外」になっていることに気づく場面は珍しくありません。目の前には運転免許証やマイナンバーカードを差し出したお客様がいて、担当者は「通信がなくてもICチップは読めるのか」「確認したことをどこに残すのか」をその場で判断しなければなりません。

情報システム担当やセキュリティ担当にとって、これは通信障害への備えというより業務設計の問題です。通信が途切れた瞬間に受付や受け渡しを止めるのか、端末の中で続けられる工程と通信が戻ってから片付ける工程を分けておくのか。ICチップを使った本人確認を通信なしでどこまで進められるかを工程ごとに切り分けておけば、現場の判断はぶれにくくなります。

結論:ICチップの読み取りと券面照合に通信は要らない

通信の要否で分ける3つの工程。端末内で完結、ICチップの読み取り、画面での券面・顔照合。後から送る、基幹システムへの連携、送信待ちと再送の管理。通信が前提、JPKIの有効性確認、OCSPはオフライン不可
警察庁Q&A No.41は、対面で読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はないとしている。JPKIのOCSPレスポンダ方式はオフラインでは有効性を確認できない(デジタル庁)。

ICチップの読み取りは、端末とカードの間の近距離無線の技術で行われ、インターネットや社内ネットワークへの接続を必要としません。読み取った内容を端末の画面に表示し、担当者が券面の記載や本人の顔と見比べるところまでは、端末とカードと担当者の目だけで完結します。警察庁が公表している犯罪収益移転防止法施行規則の改正に係るQ&Aでも、対面での本人確認時に読み取ったICチップ情報(氏名・住居・生年月日・写真)をホスト等へ送信する必要があるかという質問に対し、「読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はありません」と回答しています(No.41)(警察庁)。

通信が必要になるのは、主に二つの場面です。一つは確認結果を予約管理や顧客管理などの基幹システムへ連携するとき、もう一つは公的個人認証(JPKI)でマイナンバーカードの電子証明書の有効性を確かめる方式を使うときで、確認の方式によってはオフラインでは有効性を確認できないとされています(デジタル庁)。

したがって設計は、「端末内で完結する工程」「後から送る工程」「オンラインが前提の方式」の三つに分けて考えるのが出発点です。以下、工程ごとの通信の要否から順に解説します。

工程ごとの通信の要否:通信なしでできること・できないこと

本人確認を工程に分けると、通信が要るかどうかの境目は「データが端末の外へ出るかどうか」にあります。カードを読み、画面に出し、人が見比べて判断するまでは端末の中で終わり、結果をほかのシステムに渡す段階で初めて通信が必要になります。

工程通信補足
ICチップの読み取り不要本人がカードをかざし、暗証番号を入力する。処理は端末とカードの間で完結する
画面表示と券面・顔の照合不要担当者が画面の内容を、券面の記載と本人の顔に照らし合わせる
確認記録の作成不要(保存先による)確認した日時や本人特定事項など、従来どおりの記録事項を残す
基幹システムへの連携必要(後から送ることは可能)送れるまでの保持、送り直し、二重登録の防止が論点になる
JPKIによる電子証明書の確認方式によるOCSPレスポンダ方式はオフラインでは確認できない。CRL提供方式は失効情報の一覧を定期的に取得して照合する

確認記録について警察庁Q&Aは、ICチップ情報や読み取り時のログ、券面情報とICチップ情報が一致したことを記録する必要はなく、確認記録の作成方法や記録事項は今までと変わらないと整理しています。読み取り時のログを保存するなど証跡を残すことは、事業者の自主的な取組として可能とされています(No.39)(警察庁)。記録の作成に通信は要りませんが、端末で作った記録をいつ、どこへ移すかは別に決めておく必要があります。設計判断が大きく分かれるのは、基幹システムへの連携とJPKIの二つです。

ICチップ読み取りが端末とカードの間で完結する仕組み

警視庁は、ICカード免許証には表面に記載されている内容がICチップに記録され、その記録内容は読み取り装置に暗証番号を入力しないと見ることができないと案内しています。一見しただけでは判別できない精巧な偽変造免許証が銀行口座の開設や携帯電話の利用契約に使われ、振り込め詐欺等に不正に使用されている状況を背景に、ICカード免許証は偽変造免許証の作成が極めて困難になるとも説明しています(警視庁)。券面を目で見るだけでは偽造身分証によるなりすましの手法を見抜けないおそれがあり、ICチップの情報を活用する意味はここにあります。マイナンバーカードについてもデジタル庁は、ICチップから情報を無理に取り出そうとするとチップが壊れる仕組みを採用していると説明しています(デジタル庁)。

暗証番号の照合もカードの側で行われます。IC運転免許証の暗証番号は3回続けて間違えると読み取りができなくなり、解除は本人が免許証を持参して運転免許試験場や警察署などで申し出る必要があります(警視庁)。マイナンバーカードの券面事項入力補助用暗証番号は4桁の数字で、氏名・住所・生年月日・性別の4情報を読み取る際に必要になり、3回連続で間違えるとロックされます(マイナポータル)。再設定はお住まいの市区町村での手続きです(マイナンバーカード総合サイト)。ロックは通信の有無と関係なく起き、その場では解除できないため、後日の再訪や別の確認方法に切り替える手順を先に決めておくことが重要です。

現場で読み取りの成否を左右するのは、通信よりも物理的な条件です。デジタル庁は、スマートフォンでICチップを読み取る際に、機種によってかざす位置が異なること、読み取り完了までカードをピッタリ当て続けること、完了まで5秒以上かかる場合があること、金属の机の上では読み取れない場合があること、Androidの場合はNFC/おサイフケータイの機能をオンにすることなどを案内しています(デジタル庁)。屋外では、車のボンネットや金属製の作業台の上を避けるといった決まりを手順書に入れておくと安定します。

読み取りの対象として、警察庁Q&Aはマイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券等を例示しています(No.5)(警察庁)。2025年3月24日に全国で運用が始まったマイナ免許証では、マイナンバーカードに記録された免許情報を読み取って確認します(警察庁)。

通信が途切れる現場で、止めない工程と後回しにする工程

通信が不安定になりやすいのは、地下の駐車場や機械室、山間部の現場や配達先、鉄骨の多い建物の奥、移動中の車内など多くの場所に及び、店舗の窓口とは条件が大きく違います。机上で想定するより、業務端末を持って回り、どの拠点・どの訪問先・どの時間帯に通信が途切れたかの実績を集めるほうが、設計の前提として役に立ちます。

止めてはいけないのは、ICチップの読み取り、画面での券面と顔の照合、取引や受け渡しを実施してよいかの判断、そしてその確認日時の記録です。これらがサーバーとの通信を前提にしていると、圏外になった時点で現場は「確認せずに進める」か「業務を止める」かの二択に追い込まれます。前者は不正利用やなりすましの被害につながり、後者はお客様を待たせます。

反対に、基幹システムへの反映、拠点ごとの集計、帳票の作成は後回しにできます。ただし、確認結果をいつまでに基幹システムへ反映する必要があるかは業務ごとに決めておきます。次の工程が基幹システムの登録内容を見て動く業務では、反映の遅れがそのまま業務の遅れになるからです。

照合をどこで行うかも分かれ目です。警察庁Q&Aは、訪問先で書類の提示を受けた担当者と、送信されたICチップ情報を確認する本社の担当者が別人でもよく、合理的な期間内に確認すれば取引時確認を完了できるとしています(No.19)(警察庁)。ただしこの形では、本社へ送るまで顔写真を含むICチップ情報を端末に持ち続けることになります。通信が不安定な現場では、その場で照合を済ませ、送るのは確認の結果だけにするほうが、端末に残る情報を小さくできます。

公的個人認証(JPKI)を使う方式は通信環境が前提

公的個人認証サービス(JPKI)は、マイナンバーカードのICチップに搭載された署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書を使う仕組みです(デジタル庁)。デジタル庁は、オンラインで利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に行うサービスと説明しています(デジタル庁)。非対面のeKYCで使われる印象が強い方式ですが、警察庁Q&Aでは対面で用いることも可能とされています(No.26)(警察庁)。携帯電話不正利用防止法の施行規則でも、署名用電子証明書を使う方法が携帯電話契約の本人確認の方法として定められています(デジタル庁)。

JPKIでは、電子証明書が今も有効かを確かめる工程が加わります。電子証明書は有効期間の満了、住民票の基本4情報の変更、本人の死亡などで失効するため、事業者には有効性の確認が求められます。OCSPレスポンダ方式はリアルタイムに確認できる一方、オフラインでは有効性を確認できないとされています。CRL提供方式は、J-LISから提供され1日単位で更新される失効情報の一覧をダウンロードして照合するもので、照合はオフラインでもできるとされていますが、一覧を定期的に取得する通信は欠かせません。自ら有効性をJ-LISに確認するには主務大臣の認定を受けたプラットフォーム事業者になる必要があり、そうでない事業者は有効性確認を委託する形になります(デジタル庁)。

このため、通信が不安定な現場でJPKIを主な確認方法に据えるのは難しく、JPKIを使う手続きは通信を確保できる場所で行うか、通信が戻ってから完了させる流れにしておくのが現実的です。なお警察庁Q&Aでは、ICチップ付きの写真付き本人確認書類を使う確認方法(新規則第6条第1項第1号イ)について、署名用電子証明書の確認までは不要とされています(No.11)(警察庁)。

後から基幹システムへ送る設計:二重登録・送り直し・残さないデータ

後から送るときの3つの設計。二重登録の防止、確認ごとに一意のID、基幹側で重複を判定。送り直し、通信エラーは自動再送、拒否は人の確認へ。残さないデータ、暗証番号の値、ICの生データと顔画像
個人情報保護委員会のガイドラインは、高度な暗号化等の秘匿化がされている場合など、必要な措置が講じられている場合は漏えい等報告を要しないとしている。

通信が戻ってから確認結果を送る場合、設計のポイントは、二重登録の防止、送り直しの扱い、送れるまでに端末へ何を残さないかの三つです。基幹システム側の受け口の考え方や関連する各種の設計はstera terminalとマイナ免許証の基幹システム連携でも整理しています。

同じ確認を二重に登録しない(冪等性)

通信が不安定な環境では、「送ったが応答が返ってこない」状態がたびたび起き、端末は届いたかどうか分からないまま送り直すことになります。そこで、何度送っても結果が1件にまとまる性質(冪等性)を持たせます。確認が完了した時点で端末が確認ごとに一意のIDを発行し、送信のたびに同じIDを付けます。基幹システムはそのIDを一意のキーとして扱い、登録済みなら新しい行を作らずに受け付け済みと応答します。端末ID、担当者、端末側の確認日時もあわせて送り、基幹システム側で受信日時を別に記録しておくと、遅れて届いた記録を追えます。通信が長く途切れる端末では、時刻のずれも点検項目に入れておきます。

送り直しの扱い

通信エラーや応答のタイムアウトは間隔を空けて自動で再送し、入力値の不備などで基幹システムが受け付けを拒否した場合は、再送を止めて管理者の確認に回します。未送信の件数を画面で確認できるようにし、帰着時など「この時点までに送り切る」期限を決めて、過ぎたものを管理者に知らせると送り漏れに気づけます。端末側の記録は、受け付け済みの応答が返った時点で消す設計にします。

残さないデータを先に決める

端末へ残るデータは少ないほど守りやすくなります。暗証番号の値はお客様が自分で入力するもので、担当者が聞き取ったり書き留めたりせず、端末にも残しません。ICチップから読み出した生データや顔写真の画像も、照合のために画面へ表示すれば役目を終えるので、送信や保存の対象から外すのが基本です。送る項目は、基幹システムで実際に使う項目に絞ってあらかじめ合意しておきます。

端末を紛失したときの考え方

持ち運ぶ端末は、紛失や盗難が起こる前提で設計します。画面ロックと記録の暗号化、遠隔でのロックや消去、端末ごとの台帳管理に加え、紛失時点でどの確認が未送信だったかを把握できるようにしておくと、影響範囲を早く見積もれます。個人情報保護委員会のガイドラインは、本人の数が千人を超える漏えい等などを報告対象事態とする一方、高度な暗号化等の秘匿化がされている場合など、個人の権利利益を保護するために必要な措置が講じられている場合は報告を要しないとしています(個人情報保護委員会)。残すデータを減らし、残る分を暗号化しておくことは、事故のリスクと事故後の対応の負担の両方を小さくします。

「オフラインだから安全」ではない:端末・画面・記録の管理

オフラインでも残る3つのリスク。端末の管理、事業者が用意した端末、アプリと更新を統制。画面の覗き見、表示の向きと消去、私物での撮影を禁止。記録の持ち出し、持ち帰りのルール、帰着時に未送信を確認
警察庁Q&A No.15は読み取り装置を事業者が提供するものに限る取扱いを許容し、No.40はIC情報を表示した画面の印刷物等は本人確認書類の写しに当たらないとしている。

ネットワークにつながっていない時間が長いほど外部からの攻撃を受ける機会は減りますが、その分、端末そのもの、画面、記録の扱いにリスクが集まります。

端末は、事業者が用意し管理するものに限ることが出発点です。警察庁Q&Aは、読み取り装置を事業者が提供するものに限定し、お客様が用意した装置を認めない取扱いも許容されるとしており(No.15)、不正なソフトウェアを使ったなりすまし等を防ぐ観点から、事業者が準備したスマートフォンで読み取るなど適切な形で読み取りを行う必要があるとも回答しています(No.14)(警察庁)。安全性の高い業務専用の端末として、インストールできるアプリを制限し、通信が戻ったときにOSやアプリの更新を適用する運用を組みます。

画面には氏名や住所、顔写真が表示されます。後ろに並ぶ人や同行者から見えない向きで照合し、確認が終わったら表示を消す、私物のスマートフォンで画面を撮影しない、といった決まりを現場向けの手順に含めます。警察庁Q&Aでは、ICチップ情報を表示した画面を紙に印刷したもの等は本人確認書類の写しに当たらないとされており(No.40)(警察庁)、画面の撮影や印刷は記録の代わりにならず、漏えいの経路を増やすだけです。

記録の持ち出しも見落とせません。個人情報保護委員会のガイドラインは、従業者の監督が不十分な事例として、内部規程等に違反して個人データの入ったノート型パソコンや外部記録媒体が繰り返し持ち出されていたのを放置し、紛失して漏えいした場合を挙げています(個人情報保護委員会)。端末の持ち帰りの可否や、帰着時の返却と未送信分の確認を決めておくことが対策になります。本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられており、再発防止の考え方は本人確認書類の漏洩を防ぐ再発防止策で解説しています。

確認記録と法令上の位置づけ:特定事業者とそれ以外

金融機関などの犯罪収益移転防止法の特定事業者は、2027年4月1日に施行される予定の改正後の施行規則のもとで、ICチップ付きの写真付き本人確認書類を使って対面の取引時確認を行う場合、提示を受けるとともにICチップ情報を読み取り、券面と照合することになります。警察庁Q&Aでは、ICチップ情報と券面情報の照合を行う必要があること(No.12)、少なくとも氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取る必要があること(No.16)が示されています(警察庁)。

確認記録について、同じQ&AのNo.42は、営業担当者が社用スマートフォンに入れたデジタル庁の対面確認アプリで訪問先のマイナンバーカードを読み取る例に対し、提示を受けた時刻とICチップ情報を読み取った時刻は同一と考えられるため、その時刻を確認記録に記載すればよい一方、セキュリティコードの記録だけでは書類を特定するに足りず、書類の名称や記号番号なども記録する必要があると回答しています。読み取りには、民間企業が提供するツールやアプリも利用できるとされています(No.20)(警察庁)。こうした記録は端末でも紙でも作れるため、通信がない現場でも記録の作成は止まりません。

レンタカー、配送、一般の小売などは犯罪収益移転防止法の特定事業者ではないため、ICチップの読み取りが義務づけられたわけではなく、同じ手順を採り入れる場合は義務ではなく運用品質の選択として位置づけます。配達の分野では、日本郵便が2026年9月14日に、2027年4月1日から本人限定受取郵便の本人確認書類をICチップ付き・写真付きの4種類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書)に限ると公表しました。特定事項伝達型ではICチップに記録された情報が本人確認書類と一致することを確認した上で本人確認を行い、運転免許証のICチップを読み取る際は4桁の暗証番号2組の入力が必要になるとしています(日本郵便)。公表資料は確認に使う機器や手順までは示していません。店頭での基本的な流れは店頭でICチップを読み取る基本の手順で整理しています。

通信に頼らずICチップの照合を行うには

マイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)と、NFCに対応したAndroid端末(業務用のハンディ端末やスマートフォン)で動く本人確認の業務アプリです。お客様がカードをかざし、暗証番号はお客様自身が入力します(stera端末はお客様側の画面のタッチパネル、Android端末は端末画面のテンキーを使い、スタッフは暗証番号を聞かず、控えません)。読み取れるのは、マイナ免許証(4桁の暗証番号で免許情報と顔写真)、従来のIC運転免許証(暗証番号1で本籍を除く記載事項、暗証番号2も入力すると顔写真)、マイナンバーカード(4桁の暗証番号で氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号で顔写真も。個人番号は読み取りません)で、顔写真は端末画面に表示され、担当者が本人の顔と見比べられます。

このアプリは、暗証番号の値、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像を基幹システムへ送らず、合意した項目だけをHTTPS POSTで基幹システムへ連携できます(認証はmTLS・OAuth2・HMAC署名から選択。送信の重複を防ぐ設計は導入時に個別に協議します)。読み取ったICチップの情報を外部へ送信しなくても端末画面での照合で確認は完結でき、警察庁Q&A No.41の「読み取ったIC情報をいずれかへ送信する必要はない」という整理とも整合します。在留カード・特別永住者証明書は券面の12桁の番号を入力して読み取り、旅券には対応していません。マイナンバーカードは、4桁の暗証番号では氏名・住所・生年月日・性別の4情報、券面の14桁の番号を入力すると顔写真も読み取れます。犯罪収益移転防止法の取引時確認に使う場合、読み取る項目(氏名・住居・生年月日・写真)と券面との照合を自社の確認手順に組み込めるかは、法務担当・顧問弁護士に確認してください。導入相談までの手順は次のとおりです。

1

本人確認を行う場所ごとに通信の状況と、確認結果をいつまでに基幹システムへ反映する必要があるかを整理する。

2

読み取りたい項目と、確認記録や基幹システムへの反映方法を決める。

3

使う端末(stera端末、またはNFCに対応したAndroid端末)と既存システムの連携可否を確認する。

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。

まとめ:工程を分ければ、圏外でも本人確認は止まらない

ICチップの読み取りと画面での券面・顔の照合は端末とカードの間で完結し、通信を必要としません。通信が要るのは、確認結果を基幹システムへ送るときと、JPKIで電子証明書の有効性を確かめるときです。読み取り・照合・判断と確認日時の記録を止めない工程として端末内に置き、基幹システムへの反映は冪等性を持たせて後から送り、JPKIが必要な手続きは通信を確保できる場面に寄せる、という切り分けが基本になります。

そのうえで端末に残すデータを最小限にし、紛失・覗き見・持ち出しへの備えを手順に組み込めば、圏外の現場でも確認の品質を落とさずに業務を続けられます。本記事で整理した工程の切り分けを出発点に、今後、配達や訪問の場面でもICチップを使った本人確認が広がることを見据え、拠点ごとの通信の実績と確認結果の反映期限を整理するところから始めてみてください。

FAQ

よくある質問

Q. ICチップの読み取りによる本人確認は、通信なしのオフラインでもできますか。
ICチップの読み取りは端末とカードの間で行われ、画面での券面・顔の照合までは通信を必要としません。警察庁のQ&A(No.41)でも、対面で読み取ったICチップ情報をいずれかへ送信する必要はないとされています。通信が要るのは、確認結果を基幹システムへ送るときなどです。
Q. 公的個人認証(JPKI)による確認はオフラインでできますか。
JPKIでは電子証明書の有効性確認が必要で、OCSPレスポンダ方式はオフラインでは確認できないとされています。CRL提供方式は照合自体はオフラインでもできますが、1日単位で更新される失効情報の一覧を定期的に取得する通信が欠かせません。通信が不安定な現場では、JPKIを使う手続きを通信を確保できる場面に寄せるのが現実的です。
Q. 通信が戻ってから基幹システムへ送るとき、二重登録はどう防げばよいですか。
確認が完了した時点で確認ごとに一意のIDを発行し、送り直しのたびに同じIDを付けて送ります。基幹システムはそのIDを一意のキーとして扱い、登録済みなら新しい行を作らずに受け付け済みと応答します。こうした冪等性があれば、応答が返らず送り直した場合も記録は1件にまとまります。
Q. オフラインで本人確認するとき、端末に残さないほうがよい情報は何ですか。
暗証番号の値は端末に残さず、担当者も聞き取ったり書き留めたりしません。ICチップから読み出した生データや顔写真の画像も、画面での照合が済めば送信や保存の対象から外すのが基本です。送る項目は基幹システムで実際に使うものに絞って、あらかじめ合意しておきます。
Q. 確認記録にICチップの読み取りログを残す必要はありますか。
警察庁のQ&A(No.39)では、ICチップ情報や読み取り時のログ、券面情報との一致を確認したことを記録する必要はなく、確認記録の作成方法や記録事項は変わらないとされています。読み取り時のログを保存するなど証跡を残すことは、事業者の自主的な取組として可能です。