レンタカー事業者が店舗の受付と事務でまず押さえる帳票は、貸渡簿と貸渡証の2つです。どちらも国土交通省の通達「貸渡人を自動車の使用者として行う自家用自動車の貸渡し(レンタカー)の取扱いについて」(自旅第138号、最終改正 令和4年5月31日)で記載事項が示されており、別記1が貸渡簿、別記2が貸渡証に対応します[国土交通省]。

実務上の悩みどころは、どの記載事項を記録するか、保存期間はどれだけか、電磁的方法で交付してよいか、そして2025年3月24日に始まったマイナ免許証を提示した運転者をどう記録するか、の4点です。通達と警察庁の一次情報を突き合わせ、店舗責任者・事務担当・業務システム担当が自社の受付手順と様式を見直す際の判断材料として整理します。

貸渡簿・貸渡証・貸渡実績報告書は役割が違う

3つの帳票の違い。貸渡簿、貸渡しごとの記録、終了日から2年間保存。貸渡証、借受人に交付・携行、電磁的方法でも可。貸渡実績報告書、年1回の集計報告、毎年5月31日まで
根拠は国交省の通達(自旅第138号、最終改正 令和4年5月31日)。レンタカー型カーシェアリングは貸渡証の交付が不要だが、貸渡簿は必要。

同じ「貸渡」の名が付く帳票でも、役割と提出先が異なります。貸渡簿は事業者が社内で備える記録、貸渡証は借受人に交付し運転者が携行する書面、貸渡実績報告書と事務所別車種別配置車両数一覧表は毎年運輸支局に提出する年次報告です。

通達は、別記1の事項を記載した貸渡簿を書面または電磁的記録により備えて貸渡しの状況を適確に記録し、貸渡しの終了日から2年間保存する義務を定めています。あわせて、レンタカー型カーシェアリングの場合を除き、借受人には別記2の事項を記載した貸渡証を交付し、貸渡自動車の運転者に携行するよう指示しなければならないとされています[国土交通省]。

年次の報告書は別物です。貸渡実績報告書と事務所別車種別配置車両数一覧表は、4月1日から3月31日までの実績と3月31日時点の配置車両数を、毎年5月31日までに主たる事務所を管轄する運輸支局長へ提出する義務があります[国土交通省]。

貸渡簿に書く9項目(別記1)

通達別記1は、貸渡簿(貸渡原票を綴ったものによって代えることができる)の記載事項を次のように定めています[国土交通省]。

記号記載事項
ア借受人の氏名又は名称及び住所
イ運転者の氏名、住所、運転免許の種類及び運転免許証の番号
ウ貸渡自動車の登録番号又は車両番号
エ貸渡日時及び時間
オ貸渡事務所、返還事務所
カ運行区間又は行先及び利用者人数並びに使用目的(自家用マイクロバスの貸渡しを行う場合に限る)
キ走行キロ数
ク貸渡料金
ケ事故に関する事項

カは自家用マイクロバスの貸渡しを行う場合に限って求められる項目で、運行区間や行先、利用者人数、使用目的を記録します。イは借受人と運転者が別人の場合も運転者について記録する項目で、運転免許の種類と番号はここに入ります。返還日時は独立した項目ではなく、エの「貸渡日時及び時間」で貸渡しの期間を記録します。

貸渡証に書く項目と4つの遵守事項(別記2)

貸渡証はア〜オまでは貸渡簿と同じで、走行キロ数・貸渡料金・事故に関する事項は書かず、代わりに貸渡人の情報と遵守事項を記載します[国土交通省]。

記号記載事項
ア借受人の氏名又は名称及び住所
イ運転者の氏名、住所、運転免許の種類及び運転免許証の番号
ウ貸渡自動車の登録番号又は車両番号
エ貸渡日時及び時間
オ貸渡事務所、返還事務所
カ貸渡人の氏名又は名称及び住所
キ次の遵守事項(下記(ア)〜(エ))

キの遵守事項は、(ア)運行中必ず携帯し、警察官又は地方運輸局若しくは運輸支局の職員の請求があったときは呈示する旨、(イ)自動車の借受けに付随して貸渡人から運転者の労務供給を受けることができない旨、(ウ)貸渡自動車に係る事故及び故障等が発生した場合の処置(処置方法、連絡先等)、(エ)貸渡期間が2日以上となる場合には日常点検を借受人が実施する旨、の4点です[国土交通省]。自社の貸渡証の様式を作成・改訂するときは、この4点が漏れていないかを確認します。

保存期間と電磁的方法による交付・携行

貸渡簿の保存期間は、通達上「貸渡しの終了日から2年間」です。運輸局の公示には「2年間以上」と書くものもあります。貸渡原票を綴ったもので貸渡簿に代えることが認められているため、紙の原票をファイリングして保管する運用でも、電磁的記録で備える運用でも差し支えありません[国土交通省]。

貸渡証は、通達上「書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)」で交付でき、運転者の携行も「電磁的記録による携行を含む」とされています[国土交通省]。この電子化は令和4年の通達改正で入ったもので、意見募集の結果では、e-文書法の対象に追加するのではなく通達改正で対応すると説明されています[e-Gov]。改正通達は令和4年6月1日以降に許可するものから適用とされ、それより前に許可を受けた事業者の扱いは運輸局の公示に読み替えの規定を置く例があるため、管轄の運輸支局の公示を確認するのが確実です。

年次の報告書との線引き

貸渡実績報告書と事務所別車種別配置車両数一覧表は、レンタカーの許可を受けた事業者が毎年提出する年1回の集計報告で、日々の貸渡しを記録する貸渡簿とは目的が異なります。

日々の貸渡簿を正確につけておけば、年度末の集計の元データとして使えます。報告書の様式と記入例は国土交通省のレンタカー事業のページに掲載されており[国土交通省]、提出方法は運輸局ごとに案内されているので、管轄の運輸局の案内に合わせて準備します。

マイナ免許証の運転者の免許情報をどう記録するか

貸渡簿の免許欄に記録すること。運転免許の種類、普通・準中型など、マイナ免許証はICで確認。運転免許証の番号、従来の免許証は券面、マイナ免許証は記録番号。運転者の氏名・住所、借受人と別人でも、運転者ごとに記録
免許情報記録番号は免許証番号と12桁目が異なる場合がある(警視庁)。番号欄の扱いを示した公式の指針は未確認のため、管轄の運輸支局に確認。

マイナ免許証は2025年3月24日に運用が始まりました。マイナ免許証では、免許の種類や有効期限、条件といった免許情報がマイナンバーカードの券面には記載されず、ICチップに記録されます[警察庁]。

警察庁の「マイナ免許証読み取りアプリ」では、ICチップから、マイナ免許証の番号、免許の年月日と有効期間の末日、免許の種類、免許の条件に係る事項、免許用顔写真(モノクロ)、色区分などを確認できます。警察庁のFAQは、本人による確認に加えて「レンタカー事業者等が顧客の免許情報を確認することができます」と案内しており、読み取りには一体化の際に本人が設定した4桁の暗証番号が必要です[警察庁]。

注意したいのは、貸渡簿・貸渡証に書く「運転免許証の番号」と、マイナ免許証に記録される「免許情報記録番号」が別の番号であることです。道路交通法は「免許証の番号」と「免許情報記録の番号」を別に定めており、警視庁は両者について「12桁のうち、11桁目までは同じですが、12桁目は異なる場合があります」と説明しています[警視庁]。

マイナ免許証のみを持つ運転者について、貸渡簿の「運転免許証の番号」欄に何を記録するかを示した国土交通省や全国レンタカー協会の指針は、2026年10月12日時点の公表資料では確認できません。実務上は、欄名を「運転免許証の番号(マイナ免許証の場合は免許情報記録番号)」とし、どちらの番号を記録したかが後から区別できるようにする方法が考えられます。2枚持ちの運転者が従来の免許証を提示した場合は、その免許証番号を記録します。最終的な扱いは管轄の運輸支局に確認してください。

スクリーンショットや保存した画像は、免許証の提示にはなりません[警察庁]。全国レンタカー協会も、その場で端末で免許証の内容を確認できない場合やスクリーンショットの提示では貸渡しを断る場合があると案内しています[全国レンタカー協会]。店頭では、その場でICチップを読み取ることを前提に手順を組み立てます。

免許証のコピーと貸渡簿の関係

現行の通達には、免許証のコピーを求める規定も禁止する規定もありません。コピーは通達上の記載事項ではないため、必要な項目を貸渡簿に記録すれば通達上の記載は満たせます。コピーや画像を保存する場合は、利用目的・保存期間・廃棄のルールを自社で定め、不要になった個人データは遅滞なく消去するよう努めることが個人情報保護法で求められています[e-Gov法令検索]。マイナンバーカードの裏面の個人番号はコピーも書き写しもしないよう徹底します[個人情報保護委員会]。

本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられていることもあり、コピーを紙やサーバーに溜め込む運用を見直し、必要な記載事項だけを貸渡簿に残す設計へ切り替える選択肢があります。

受付から保存までの手順の設計

受付から保存までの流れ。受付、ICチップで免許を読む、暗証番号は本人が入力。記録・交付、貸渡簿へ項目を記録、貸渡証を交付。保存、終了日から2年間、不要なコピーは消去
マイナンバーカードの裏面の個人番号はコピーも書き写しもしない(個人情報保護委員会)。

通達の記載事項を踏まえ、1件の貸渡しを受け付けてから貸渡簿を保存するまでの流れは、次のように整理できます。

1

予約時に、借受人の氏名・名称・住所、運転者の情報、貸渡自動車の候補、貸渡日時、貸渡事務所・返還事務所を把握する。

2

店頭で運転免許証を提示してもらう。マイナ免許証の場合は、その場でICチップを読み取って免許の種類と番号、有効期間、条件を確認する。

3

貸渡簿に別記1の項目を記録し、貸渡証に別記2の7項目(遵守事項を含む)を記載して借受人に交付する。

4

返還時に走行キロ数、貸渡料金、事故に関する事項を貸渡簿に追記して1件を確定する。

5

貸渡しの終了日から2年間、貸渡簿または貸渡原票を保存する。年度末には貸渡実績報告書と事務所別車種別配置車両数一覧表の集計元として活用する。

この流れを決めておくと、マイナ免許証の利用者が増えても、記載事項の抜け漏れを防ぎやすくなります。

貸渡簿への記録をICチップ読み取りから始めるには

マイナ免許証に対応した店頭の受付を設計するうえで、既存の決済端末上で動く本人確認アプリを使う選択肢があります。株式会社amsが提供するマイナドライブIDは、三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)上で動く業務アプリで、お客様がカードを端末にかざし、カスタマーディスプレイのタッチパネルで4桁の暗証番号を自分で入力する流れで免許情報を読み取ります。マイナ免許証と従来のIC運転免許証から、氏名、住所、免許の種類、有効期限、条件、免許証番号または免許情報記録番号などを取得でき、カード種別と入力条件によって取得できる範囲が変わります。顔写真はスタッフが端末画面で本人と見比べる前提です。

このアプリは、合意した項目だけをHTTPS POSTで予約・基幹システムへ連携できるため、貸渡簿や貸渡証への手書き・手入力の転記を減らし、別記1・別記2の記載事項を同じ読み取り結果から埋めやすくなります(認証方式は個別協議)。マイナンバー、暗証番号、ICチップの生データ、標準運用での顔写真画像は基幹システムへ送らないデータ最小化の設計です。貸渡しの可否の判断や、番号欄の扱いを決めるのは事業者です。

導入検討の順序は次の4ステップで整理すると進めやすくなります。

1

現在の貸渡簿・貸渡証の様式と、免許証コピーの保管状況を棚卸しする。

2

貸渡簿や予約システムに記録したい免許情報の項目と、免許証番号欄・免許情報記録番号欄の扱いを決める。

3

stera端末の設置環境と既存の基幹システムの連携要件を確認する。

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む。

関連する運用の詳細は、マイナ免許証の免許情報記録番号とは?、レンタカーの免許証コピーはどう管理する?、免許証のコピー廃止とICチップ読み取りへの切り替え手順、stera terminalとマイナ免許証の基幹システム連携も参考にしてください。

貸渡簿と貸渡証はレンタカー許可を受けた事業者に課される基本の帳票です。記載事項・保存期間・交付方法を通達と運輸支局の公示に合わせて設計しておくことが、年次の実績報告や監査への備えにもつながります。

FAQ

よくある質問

Q. 貸渡簿には何を記載しますか。
国交省の通達(別記1)は、借受人の氏名又は名称及び住所、運転者の氏名・住所・運転免許の種類及び運転免許証の番号、登録番号又は車両番号、貸渡日時及び時間、貸渡事務所・返還事務所、マイクロバスの場合の運行区間等、走行キロ数、貸渡料金、事故に関する事項の9項目を定めています。
Q. 貸渡簿はいつまで保存しますか。
通達は、貸渡しの終了日から2年間の保存を求めています。書面でも電磁的記録でも備えられ、貸渡原票を綴ったもので貸渡簿に代えることもできます。
Q. 貸渡証は紙でなければいけませんか。
令和4年の通達改正で、貸渡証は電子メール等の電磁的方法でも交付でき、運転者の携行も電磁的記録によることが認められました。改正前に許可を受けた事業者の扱いは、管轄の運輸支局の公示で確認してください。
Q. マイナ免許証の運転者は、貸渡簿の免許証番号欄に何を書けばよいですか。
マイナ免許証に記録されるのは免許情報記録番号で、免許証番号とは別の番号です。この欄の扱いを示した国交省などの指針は確認できないため、どちらの番号かを区別して記録し、最終的な扱いは管轄の運輸支局に確認するのが安全です。
Q. 貸渡簿のために免許証のコピーを保存する必要がありますか。
現行の通達には免許証のコピーを求める規定も禁止する規定もなく、コピーは記載事項ではありません。保存する場合は利用目的・保存期間・廃棄のルールを決め、マイナンバーカードの裏面はコピーしないでください。