深夜・早朝の受け渡しや駅前の小さな店舗など、人員を絞ったレンタカー運営を検討する事業者が増えています。ただし「無人レンタカーの本人確認」には、通常のレンタカー事業で無人の貸渡しが制度上どこまで認められるのか、そしてスタッフが最小限でも運転免許の確認と記録をどう成り立たせるのか、という二つの論点が重なっています。

本稿では、国土交通省の通達と警察庁の案内という一次資料を起点に、無人貸渡の制度上の位置づけ、どの受付方式でも外せない確認項目、方式別の設計、無人化で起きやすい例外対応までを、業務担当者が社内で方針を決めるのに必要な範囲で整理します。

結論:通常のレンタカーは「完全無人」ではなく「省人化」が現実解

先に結論を示します。通常のレンタカー事業では、スタッフのいない無人の貸渡拠点を配置事務所として設けることは認められていません。令和4年5月31日に国土交通省が公表した通達改正の意見募集結果には、「本改正は、レンタカー型カーシェアリング事業以外のレンタカー事業者について、無人の貸渡拠点(無人の道路外駐車場)を貸渡自動車の配置事務所として認めるものではありません」との回答が明記されています[e-Gov]。

完全に無人で貸し渡せる枠組みはレンタカー型カーシェアリングに限られます。通達上の定義は「会員制により特定の借受人に対して、自家用自動車を業として貸渡す」もので、実施する前に配置事務所の所在地を運輸支局長へ届け出る必要があります[国土交通省]。したがって通常のレンタカーで実務上採り得るのは、事前チェックインやセルフ受付機で手続きを減らし、免許の確認と引き渡しの最終判断には配置事務所のスタッフが関わる「省人化」です。

どの方式でも、貸渡簿に運転者の氏名・住所・運転免許の種類及び運転免許証の番号を記録する義務は残ります。2025年3月24日に運用が始まったマイナ免許証は券面に免許情報が記載されないため、ICチップの読み取りを受付の流れに組み込む設計が欠かせません。

「無人貸渡」と「省人化」は制度上まったく別物

「無人」と「省人化」の制度上の違い。通常のレンタカー、有人の営業所が前提、無人拠点は配置事務所外。カーシェアリング、会員制・事前に届出、ITで車両を把握。省人化、事前チェックイン・受付機、免許確認にスタッフ関与
国交省は令和4年の意見募集結果で、カーシェア以外の無人の貸渡拠点を配置事務所と認めないと回答。係員不在の時間帯の運用は事前に運輸支局へ確認。

無人化を検討するときに最初に整理すべきは、自社がレンタカー事業の枠内で動くのか、レンタカー型カーシェアリングの枠組みに踏み込むのかという区分です。どちらも道路運送法上の自家用自動車有償貸渡しの許可を前提にしますが、配置事務所の扱いが異なります。

国土交通省の資料は、配置事務所について「一般的なレンタカーの場合は有人の営業所」、「レンタカー型カーシェアリングの場合は無人の路外駐車場」と整理しています[国土交通省]。通達でも、貸渡自動車の状況は配置事務所の従業員等が把握するのが原則で、レンタカー型カーシェアリングに限り、IT等の活用で本社などが適確に把握できると認められる場合はこの限りでないとされています[国土交通省]。同じ意見募集結果では、カーシェア以外の事業者がITで車両の状況を把握すること自体は可能でも、「従来どおり配置事務所の従業員等により当該車両の状況を把握」する必要があると回答されています[e-Gov]。

乗り捨て(ワンウェイ)方式のレンタカー型カーシェアリングでは、事業者の従業員を配置していない道路外の駐車場も、IT等で車両の状況を的確に把握できると認められれば配置事務所にできる取り扱いが平成26年に整理されました[国土交通省]。また、カーシェアリングの実施を届け出るときは、保管場所の所在地・配置図、ITによる貸渡し状況・整備状況の把握方法、「車両、エンジンキー等の管理・貸し出し方法」、会員規約または契約書などを添付します[国土交通省]。

一方、有人の配置事務所を持つ通常レンタカーが、夜間や早朝の係員不在の時間帯にセルフ受付機やキーボックスで貸し渡せるかどうかについては、可否を明示した一次資料は見当たりません。方式を決める前に管轄の運輸支局へ照会するのが前提になります。

どの方式でも外せない確認と記録

どの方式でも外せない確認と記録。免許を読む、マイナ免許証はICチップで、券面に免許情報はない。本人と照らす、顔写真と来店者を照合、スクリーンショットは不可。記録する、貸渡簿に免許の種類と番号、終了日から2年間保存
道路交通法64条2項は無免許運転となるおそれがある者への自動車の提供を禁止。貸渡簿は書面でも電磁的記録でもよい。

無人化・省人化の方式を検討する前に、通達と道路交通法から導かれる確認と記録の最低ラインを押さえておきます。どの受付方式でも共通する軸です。

まず貸渡簿の義務です。通達は、別記1の事項を記載する貸渡簿を書面または電磁的記録により備え、貸渡しの終了日から2年間保存するよう定めています[国土交通省]。この義務はレンタカー型カーシェアリングでも除外されていないため、無人で貸し渡す場合も運転者の免許の種類と番号、貸渡料金や返却後の走行キロ数、事故に関する事項などを記録する必要があります。令和4年の改正では、貸渡証の交付と携行も電子メール等の電磁的方法で行えるようになりました[e-Gov]。

次に免許の確認です。通達は貸渡しのたびに免許証をどう確認するかまでは明文で定めていません。しかし貸渡簿には「運転者の氏名、住所、運転免許の種類及び運転免許証の番号」を記載する必要があり、道路交通法第64条第2項は無免許運転となるおそれがある者への自動車の提供を禁じています[e-Gov法令検索]。この二つから、免許の種類・番号・有効期限を事業者側で確かめる運用は事実上欠かせません。

そしてマイナ免許証への対応です。警察庁によると、マイナ免許証の保有者は2026年9月末時点で4,207,463人、そのうちマイナ免許証のみを持つ人が1,150,552人です[警察庁]。マイナ免許証は券面に免許の種類や有効期限が記載されず、ICチップに記録されるため、読み取りを前提にした受付動線が必要になります。

警察庁のFAQは、マイナ免許証読み取りアプリで「レンタカー事業者等が顧客の免許情報を確認することができます」とし、読み取りには免許保有者が設定した4桁の暗証番号が必要だと案内しています[警察庁]。アプリで保存した画像やスクリーンショットは免許証の携帯義務を果たしたことにはならず、その他の本人確認の場面で使えるかどうかは各事業者の判断とされています[警察庁]。

受付方式別:本人確認と免許確認の設計を比較する

ここでは、無人化・省人化の度合いごとに、本人確認と免許確認、貸渡簿への記録をどう組み立てるかを整理します。

方式配置事務所の位置づけ本人確認・免許確認の主な担い手貸渡簿への記録設計上の留意点
有人カウンターのみ有人の営業所店頭スタッフが対面で確認スタッフが入力または記入例外対応に強いが人員コストが高い
事前チェックイン+店頭確認有人の営業所事前は利用者のスマートフォン、最終確認は店頭スタッフ事前登録データを引き継ぎ、免許情報は店頭で確定予約段階で免許の種類と車種の整合を確かめておく
セルフ受付機+スタッフ確認有人の営業所(スタッフの関与が前提)利用者が受付機で操作し、スタッフが結果と顔写真を確認受付機から予約・基幹システムへ連携係員不在の時間帯の運用は運輸支局へ事前照会
レンタカー型カーシェアリング無人の路外駐車場(届出済み)会員登録時の確認と貸渡しごとの照合を事業者が設計書面または電磁的記録で備える会員規約と車両・キーの管理方法を届出に添付

事前チェックインを導入する場合、利用者が自宅や移動中にスマートフォンで予約者情報の登録や料金の支払いを済ませ、店頭では出発前に実物のマイナ免許証または従来の運転免許証の確認と最終判断だけを行う構成が現実的です。受付時間を縮めながら、免許の種類と予約車両の整合を店頭で確定できます。利用者側の持ち物や受付の流れはマイナ免許証はレンタカーで使える?で整理しているので、社内説明資料に添える際の参考にしてください。

事前登録で免許証の画像を集める運用には注意が必要です。本人確認書類の画像を含む個人情報の漏えいが相次いで報じられており、マイナ免許証はそもそも券面に免許情報が写りません。画像を保管する前提ではなく、店頭でICチップから必要な項目だけを取得する設計が検討対象になります。確認方式そのものの比較は店舗の本人確認方法を比較で詳しく扱っています。

レンタカー型カーシェアリングで無人貸渡を行う場合、会員登録時の本人確認、貸渡しごとの会員認証、免許の有効期限の定期確認といった仕組みは、通達では方法まで定められていません。事業者側の運用設計で品質を担保する領域になります。

マイナ免許証を受付動線に組み込むときの実務

全国レンタカー協会は、2025年2月の案内で、「その場で端末にて免許証内容確認ができない場合」や「事前保存した免許証内容確認画面のスクリーンショットのご提示」の場合は貸渡しを断る場合があると利用者に注意を促しています[全国レンタカー協会]。店頭で端末を使って読み取り、暗証番号を入力し、画面で内容を確認する、という流れが基本線です。

受付動線に組み込む際の判断点は、利用者のスマートフォンで読み取る方式と、事業者が専用の読み取り端末を用意する方式のどちらを主にするかです。利用者のスマートフォンに頼る方式は初期投資が小さい一方、暗証番号の入力ミスや読み取り失敗が起きたときの切り分けが難しくなります。店頭の読み取り端末を使う方式では、お客様自身が暗証番号を入力し、スタッフは画面に表示された免許情報と顔写真を確認する運用がリスク管理上望ましく、暗証番号をスタッフが聞き取ったり代わりに入力したりしない方針を社内規程に明記しておく価値があります。

マイナンバー(個人番号)は収集・保管せず、マイナンバーカードの裏面はコピー・撮影しないという線引きも明文化しておきます。番号法は、法律で定められた場合を除き他人の個人番号の収集・保管を禁じています[e-Gov法令検索]。読み取りアプリや読み取り端末で確認するのは免許情報であり、マイナンバーそのものではありません。

無人化で起きやすい例外とスタッフへの引き継ぎ

無人化で起きる例外とスタッフへの引き継ぎ。読み取れない、置き直し・別端末で再試行、だめなら有人窓口へ。暗証番号の誤り、10回続けて誤るとロック、店頭では解除できない。条件が合わない、期限切れ・免許の種類不足、車種変更か貸渡し中止
ロックの解除は住所地の運転免許センター等で行う。全国レンタカー協会は、端末で確認できない場合やスクリーンショットの提示では貸渡しを断る場合があると案内。

無人化・省人化で設計の良し悪しが分かれるのは、例外が起きたときの切り分けです。主なパターンを整理します。

一つめは、ICチップが読み取れないケースです。カードの傷、置き位置のずれ、端末側の通信エラーなど原因は複数あります。置き直しての再試行、別の読み取り端末への切り替え、有人窓口での確認、という順で切り分ける運用を決めておきます。

二つめは、暗証番号の入力ミスとロックです。マイナ免許証用の暗証番号は10回続けて誤るとロックされ、解除は住所地の運転免許センター等で行うと案内されています[マイナ免許証読み取りアプリ]。店頭でその場で解決できる問題ではないため、貸渡しを中断する選択肢を含めて、スタッフが判断できる基準を用意しておきます。

三つめは、有効期限切れや免許の種類が貸渡し車両に合わないケースです。マイナ免許証では券面に有効期限が出ないため、読み取り結果を画面で確認する工程を省けません。普通免許で中型以上の車両を予約していた、といった不整合も読み取り結果から判定します。

四つめは、スクリーンショットだけを提示されるケースです。前述のとおり、保存画像やスクリーンショットは免許証の携帯義務を満たさず、本人確認に使えるかは事業者の判断に委ねられています[警察庁]。貸渡し時には実物のマイナ免許証または従来の運転免許証を提示してもらう方針を社内で統一し、約款と店頭掲示に明記しておくのが安全です。偽造や改ざんの観点はレンタカー受付で偽造免許証を見抜く手順で整理しています。

いずれのパターンでも、「どこまでをセルフで処理し、どこからスタッフに切り替えるか」の境界を事前に文書化し、現場の誰が対応しても同じ判断を再現できる状態にしておくことが、無人化・省人化運用の実効性を左右します。受付時間そのものの短縮についてはレンタカーの受付時間を短縮するにはも参考になります。

導入前に運輸支局へ確認すべきこと

無人化・省人化の方式を固める前に、管轄の運輸支局へ照会しておくべき論点があります。少なくとも次の4点は確認対象になります。

  • 現在の配置事務所のスタッフ配置をどの時間帯まで薄くできるか、係員不在の時間帯にセルフ受付機を使う場合の可否
  • セルフ受付機や事前チェックインを使う場合に、貸渡簿の電磁的記録と貸渡証の電磁的交付をどの様式で運用するか
  • レンタカー型カーシェアリングとして届け出る場合の、会員規約・車両とキーの管理方法・ITによる車両状況把握の設計
  • 既存の許可内容からの変更手続きのタイミングと添付書類

通達は運用の細部まで定めていないため、同じ構成でも確認の観点が支局ごとに異なることがあります。社内だけで「これで問題ない」と判断するより、設計段階で一度相談しておく方が後戻りが少なくなります。

受付の省人化にICチップ読み取りを組み込むには

ここまでの要件を満たしながら受付を省人化する選択肢の一つとして、株式会社amsが提供する業務アプリ「マイナドライブID」があります。三井住友カードの決済端末stera(stera terminal standard・stera terminal unit・stera terminal mobile)上で動作し、お客様がカードをかざして4桁の暗証番号をカスタマーディスプレイのタッチパネルで自分で入力する流れで、マイナ免許証と従来のIC運転免許証の免許情報(免許の種類・有効期限・条件など)をICチップから読み取ります。スタッフは端末画面に表示された結果と顔写真を確認でき、カードの内容を手入力する工程を減らせます。

このアプリは、マイナンバー・暗証番号・ICチップの生データ・標準運用での顔写真画像を基幹システムへ送らないデータ最小化設計を採り、合意した項目だけをHTTPS POSTで予約・基幹システムへ連携できます(認証方式は個別協議)。貸渡しの可否を法的に判断するものではなく、すべての受付例外を自動で解決するものでもありません。そのうえで、貸渡簿への転記を減らしたい、無人店舗や自動精算機との組み合わせを検討したい、といった要件に応じて構成を個別に相談できます。

導入相談までの手順は次の4ステップが目安です。

1

現在の受付工程と、無人化・省人化したい工程を整理する

2

貸渡簿・予約システムに記録したい免許の項目を決める

3

stera端末の設置場所と既存システム、管轄の運輸支局への確認事項を整理する

4

マイナドライブIDのデモ・連携相談をこちらの申し込みフォームから申し込む

既存の基幹システムとの接続を先に検討したい場合は、stera terminalとマイナ免許証の基幹システム連携で設計上の論点を整理しているので、社内の情報システム担当との事前のすり合わせに活用してください。

FAQ

よくある質問

Q. 通常のレンタカーを完全に無人の店舗で貸し渡せますか。
国土交通省は令和4年の通達改正の意見募集結果で、レンタカー型カーシェアリング以外の事業者について、無人の貸渡拠点を配置事務所として認めるものではないと回答しています。完全に無人で貸し渡す枠組みは、会員制・事前の届出を前提とするレンタカー型カーシェアリングに限られます。
Q. セルフ受付機を使えば夜間に係員なしで貸し渡せますか。
有人の配置事務所を持つ通常のレンタカーが、係員不在の時間帯にセルフ受付機やキーボックスで貸し渡せるかを明示した一次資料は見当たりません。方式を決める前に管轄の運輸支局へ確認してください。
Q. 無人でも運転免許の確認は必要ですか。
貸渡簿には運転者の運転免許の種類と免許証の番号を記録する必要があり、道路交通法は無免許運転となるおそれがある者への自動車の提供を禁じています。カーシェアリングでも貸渡簿の義務は除外されていないため、免許の確認は事実上欠かせません。
Q. マイナ免許証の画面のスクリーンショットで受付できますか。
警察庁は、アプリで保存した画像やスクリーンショットは免許証の携帯義務を果たしたことにはならないとしています。全国レンタカー協会も、スクリーンショットの提示では貸渡しを断る場合があると案内しており、店頭でICチップを読み取る運用が基本です。
Q. 利用者が暗証番号を忘れたり誤ったりしたらどうなりますか。
マイナ免許証用の暗証番号は10回続けて誤るとロックされ、解除は住所地の運転免許センター等で行います。店頭では解除できないため、有人対応への切り替えや貸渡しの中断を含めた判断基準を事前に決めておきます。